年勤め上げた会社を定年退職し、第二の人生を歩み始める60代。セカンドライフに期待を膨らませる一方で、「この先どのように過ごしていけばいいのか」「体力的に働き続けられるだろうか」「社会との繋がりがなくなってしまうのではないか」といった不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
再就職を果たすことで、もう一度社会とのつながりを取り戻し、充実した生活を送るための新たなスタート地点としての可能性が広がります。
60代は、これまでの経験やスキルを活かしながら、自分のペースで、より自由に、そして充実した日々を送るための新たなスタート地点と言えるでしょう。
本記事では、60代からの再就職を含め、人生をより豊かにするための「働き方」について考えていきます。再雇用という選択肢はもちろん、転職や副業、フリーランスといった新しい働き方、そして、自分に合った再就職の可能性を見つけるための方法を具体的に解説していきます。
60代の再就職の現状と課題
2019年に厚生労働省が発表した「高齢者の雇用に関する調査結果」によると、60~64歳の高齢者が65歳以降も働く予定について、「ぜひ働きたい」及び「すでに働くことが決まっている」と答えた方が6割と、多くの方が、長年培ってきたスキルや経験を活かして社会貢献をしたいと考えています。
参照:厚生労働省「高齢者の雇用に関する調査結果」
人生100年時代と言われる現代において、60代はまだまだ現役世代であり、企業にとっても、豊富な経験と知識を持つシニア世代は貴重な人材です。
この章では、60代の再就職の現状や抱えている課題を6つの側面から見ていきます。
1.高齢者雇用の拡大
日本では「高年齢者雇用安定法」により、従業員の希望に応じて65歳までの雇用確保が企業に義務付けられています。
多くの企業が継続雇用制度を導入しており、60歳定年後も働き続ける環境が整備されつつあります。
定年後も再就職などで働きたいと希望する60代は増えており、特にフルタイムよりも短時間労働や柔軟な働き方を希望する傾向があります。
2.多様な再就職先
自営業やフリーランス、パートタイムなど、60代が選択できる再就職先はますます多様化しています。リモートワークや副業に挑戦する人も増えています。
一方で、企業側も、専門知識や経験を活かせるシニア層向けの職種や役割を増やし始めています。
3.所得の変化
定年前後で収入が減ってしまうことは、多くの60代にとって不安材料の一つです。定年退職によって収入が減少し、生活設計に不安を抱える人が多くいます。
再雇用やパートタイム勤務では、現役時代と比べて収入が大きく減ってしまうケースも少なくありません。
雇用延長によって安定した収入を得られるケースもありますが、年金受給開始時期との兼ね合いもあり、収入と働き方のバランスをどのように取るかが課題となっています。
4.健康維持と職場環境
60代の働き手にとって、健康は最優先事項です。加齢に伴い、体力や健康面で不安を抱える人も少なくありません。
長時間労働や肉体的に負荷の高い仕事が難しくなるケースもあり、健康を維持しながら働き続けることが課題となります。
5.学び直し(リスキリング)の意欲
IT化が急速に進む現代において、ITスキルや新しい技術への対応力が求められる場面が増えています。しかし、60代の中には、これらのスキル習得に不安を感じる人も少なくありません。
急速に変化する社会に適応し、セカンドキャリアで活躍するために、新たな知識やスキルを身につけることに意欲的な人が増えています。
特に、ITスキルやデジタルツールの活用は、業種を問わず求められる能力となっており、積極的に学び続ける姿勢が重要視されています。
6.キャリアの方向性の迷い
長年培ってきた経験やスキルを活かしたいという思いはあるものの、具体的にどのような仕事を選べば良いのか迷ってしまう人もいます。
また、年齢を重ねることで職場での役割や責任が変化することに戸惑いを感じたり、新しい就職先でこれまでの経験やスキルを活かせる場が少ないと感じたりする人もいます。
変化の速い現代社会において、自身のキャリアプランをどのように描いていくかが課題となります。

経済的な不安を軽減するためのポイント
公的年金の受給開始年齢との兼ね合いや、老後資金の準備状況によっては、経済的な不安を感じる方もいるかもしれません。再雇用や再就職、副業などを通して、収入を確保することも検討材料の一つとなります。
長年勤務していた会社に残る場合の選択肢
定年退職後も、これまでと同じ会社で働き続けたいと考える方もいるでしょう。多くの企業では、シニア世代の雇用維持に取り組んでいます。
また、希望者全員を対象に65歳以降も雇用を継続する「再雇用制度」を導入している企業も増えています。
再雇用制度を利用する場合、雇用形態や労働時間、賃金などが変更になるケースもあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
再雇用制度
2025年4月以降、企業は高齢者雇用安定法の改正に伴い、従業員の希望に応じて65歳までの雇用を確保する取り組みが求められるようになります。
具体的には、「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」といった選択肢の中から、自社に最適な制度を導入する必要があります。
ただし、65歳までの定年延長自体が法律で義務付けられたわけではありませんが、65歳までの雇用確保は企業に努力義務として求められています。企業はそれぞれの状況に合わせて、柔軟に対応していくことが求められます。
再雇用のメリットと注意点
再雇用制度のメリットは、これまでと同様の職場環境で働き続けられる点にあります。長年培ってきた人間関係や仕事内容を活かせるため、安心して働くことができるでしょう。
また、再雇用後の給与は減額されるケースが多いものの、年金との調整が考慮される場合もあります。
一方で、役職定年や担当業務の変更など、働き方に変化が生じる場合もある点には留意が必要です。
職場での役割を再定義する
再雇用後は、これまでとは異なる立場で仕事に取り組むことになります。管理職から専門職へ移行したり、若手社員の育成や指導に力を入れたりするなど、自身の経験やスキルを活かせる新たな役割を見つけていくことが大切です。
セカンドキャリアという選択肢
セカンドキャリアとは、定年退職後や子育てが一段落した後など、人生の転換期に新たにスタートするキャリアのことを指します。
60代から始まるセカンドキャリアは、これまでの経験やスキルを活かして社会貢献を続けながら、経済的な安定と自己実現の両立を目指す貴重な機会となります。
セカンドキャリアの選択肢は多岐にわたり、自身の興味や関心、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。
これまでのキャリアを活かす
長年培ってきた専門知識やスキルは、セカンドキャリアにおいても大きな強みとなります。
例えば、これまで営業職として活躍していた方は、その経験を活かして企業のコンサルタントやアドバイザーとして活躍したり、人事部で培った経験を活かして人材育成の講師やキャリアコンサルタントとして活動したりすることができます。
また、長年勤めた会社で培った専門知識を活かして、後進育成や技術指導などを行うことも可能です。
新たな分野に挑戦する
セカンドキャリアは、これまで興味のあった分野に挑戦する絶好の機会です。
例えば、長年趣味で楽しんでいた写真や音楽、美術などを活かして、写真家や音楽教室の講師、アート作家として活動を始めたり、旅行好きであれば、旅行会社でツアーガイドとして働くこともできます。
さらに、ITスキルを身につけて、Webデザイナーやプログラマーといった、需要の高い職種に挑戦する道も開かれています。
これまでにない新しいスキルの習得が求められることもありますが、そこには新たな成長の機会が広がっています。
社会貢献に力を注ぐ
長年培ってきた経験やスキルを活かして、社会貢献活動に積極的に携わることも、やりがいの大きいセカンドキャリアの選択肢です。
例えば、NPOやボランティア団体に所属して、地域貢献活動や国際協力活動に参加したり、福祉施設や教育機関でボランティアとして活躍したりすることができます。
また、社会貢献活動を通じて得た新たなネットワークや経験が、新たな機会の発見につながることも期待できます。
セカンドキャリアを成功させるためのポイント
自分の棚卸しと目標設定
まずは、これまでのキャリアを振り返り、自分にはどのようなスキルや知識が蓄積されているかを洗い出す「キャリアの棚卸し」をしていきましょう。
キャリアの棚卸しを通して、自分の強みや得意なこと、興味のある分野を明確にすることができます。
その上で、これからの人生における職業的な目標を設定します。目標が明確になれば、セカンドキャリアの方向性が見えてきます。
市場のニーズを把握する
次に、自分が興味を持っている職種や得意分野が、現在どのような市場のニーズと一致しているかを調べます。
例えば、ITやデジタルスキルが必要とされる仕事、シニア層の知識を活かせるコンサルティング業務、教育や指導職など、様々な可能性があります。
市場動向を把握した上で、自らがトライしてみたい分野や貢献できる場所を探してみましょう。
スキルアップの取り組み
新しい分野で活躍するためには、その分野に必要なスキルや知識を補うことが重要になってきます。
必要であれば、オンラインコースやセミナーに参加し、最新の情報や技術を身につけると良いでしょう。
60代の再就職先を選ぶ際のポイント
1.経済的安定と自由な時間のバランス
セカンドライフを充実させるためには、経済的な安定と自由な時間のバランスが重要です。生活に必要な収入を確保できる再就職先を選びつつ、趣味や旅行、家族との時間など、自分の時間も大切にできるワークライフバランスを実現しましょう。
収入面では、生活費や老後資金などを考慮し、必要な収入を明確にしておく必要があります。また、自由な時間と収入のバランスをどのように取るかは、人それぞれです。自身の価値観やライフスタイルに合った再就職先を見つけることが大切です。
2.やりがいを感じられる仕事を選ぶ
「どのような仕事にやりがいを感じるのか」「どのような働き方をしたいのか」を明確にすることが、充実したセカンドライフを送るための鍵となります。
これまでの経験やスキルを活かせる仕事はもちろん、新たな分野に挑戦したり、社会貢献できる仕事に就いたりすることで、生きがいや充実感を得られるでしょう。
自身の価値観やライフプランに合った仕事を選ぶことで、モチベーション高く働き続けることができます。
3.身体と心の健康を第一に考える
60代になると、体力や健康面に不安を感じることもあるでしょう。無理なく働き続けられるよう、健康を最優先に考えた働き方を選ぶことが重要です。
通勤時間や労働時間、仕事内容などを比較検討し、体力的な負担が少なく、自身のペースで働ける環境を選びましょう。
オフィスワークだけでなく、立ち仕事や屋外での作業など、仕事内容によって体力的な負荷は大きく異なります。事前にしっかりと確認し、無理のない範囲で働ける仕事を選びましょう。
また、新しい環境への適応や人間関係のストレスなど、セカンドキャリアには身体の健康維持と同時に、メンタルヘルスへの配慮も大切になってきます。予期せぬ変化に対応するために心のケアも忘れずに行いましょう。
カウンセリングサービスを活用する
再就職先に関する悩みや生活の不安は、一人で抱え込まずに、専門家に相談してみることも有効です。
60代でのセカンドキャリアを考える際、多くの方が「どのような働き方が自分に合っているのか」「今後のキャリアをどう築けばよいのか」と悩みを抱えています。
特に、再雇用、転職、副業、フリーランスといった新しい働き方に挑戦する際には、心の整理や適性の確認が必要になることもあります。
こうした課題に対しては、キャリアカウンセリングを活用することで、自分の適性を客観的に分析し、最適な選択肢を見つける手助けとなります。
また、再雇用や転職に際しての心理的な不安を解消し、前向きに新たな道を歩むための支援も受けられます。
オンラインカウンセリングのメリット
オンラインカウンセリングは、スマートフォンがあれば手軽に利用することができるため、時間などを気にする必要がありません。
オンラインカウンセリングの大きなメリットは、場所を選ばず利用できることです。リラックスできる自宅からアクセスできるため、ストレスを感じにくい環境で相談することができます。また、比較的予約が取りやすく忙しいビジネスパーソンでも、気軽に相談しやすいというメリットがあります。
経験豊富なカウンセラーに話を聞いてもらうことで、気持ちが整理され、前向きな気持ちを取り戻せるかもしれません。

まとめ
60代の再就職は、第二の人生を歩み始めるための新たなスタート地点です。再雇用、転職、、フリーランスなど、様々な再就職先があります。
大切なことは、自分の価値観やライフプランに合ったセカンドキャリアを選択することです。本記事で紹介した内容を参考に、自分らしい働き方を見つけて、充実したセカンドライフを送りましょう。
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宮園 さとみ Satomi MIYAZONO
公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント
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佐藤 汐 Shiori SATO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
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芹野 まり Mari SERINO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
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