【介護職のメンタルヘルス】一人で抱え込まないために知っておきたいこと

「人の役に立ちたい」
「利用者さんの笑顔が何よりも嬉しい」
そんな純粋な思いで介護の仕事に就いたのに、最近なぜか心がすり減っていくような感覚がすると悩んでいませんか。
忙しい業務に追われ、自分の心の声を聞く余裕がないまま、誰にも言えない孤独や、理解されない悩みを一人で抱え込んでしまう。
- 重い責任と向き合うプレッシャー
- 同僚に弱音を吐けない孤独感
- 「こんな自分は、介護職失格だ」という自己嫌悪
介護の現場には介護職特有のストレスがあります。
この記事では、実際に多くの介護職が直面している「心の不調」を3つの事例でご紹介します。そして、心の不調に陥った時の具体的な解決策を提案します。
介護現場で起こりうるメンタル不調事例
日々の介護業務の中で蓄積される心身の疲労やプレッシャーは、時として想像以上に大きな負担になることがあります。
忙しい現場では、自分の変化に気づくのが遅れてしまったり、「利用者さんに迷惑をかけられない」と、心の不調のサインを見過ごしてしまうケースも少なくありません。
事例1:訪問介護職員Aさんの「一人で抱える判断のプレッシャーと孤独」
Aさんは50代、女性。訪問介護職員として8年間勤務しています。入職当初は利用者さんと一対一でじっくりと向き合える、訪問看護の仕事に大きなやりがいを感じていました。「Aさんが来てくれるなら安心する」と言われることが何よりの励みで、利用者さんの生活の質を向上させることに情熱を注いでいました。
8年間経験を積んだAさんは、事業所内でもベテランとして頼りにされる存在になりました。そのため、新人職員では対応が難しい重度の要介護者や、医療的なケアが必要な利用者さんを任されることが多くなりました。
「今日はいつもより元気がないけど、このまま様子を見ていて大丈夫だろうか」など、一人では判断しきれない場面が増え、常に「もし判断を間違えたら」という不安が頭から離れません。
Aさんに現れた変化
ここ数カ月、訪問先に向かう車の中で「緊急事態が起きたらどうしよう」という不安で胸がドキドキすることが増えました。以前は利用者さんとの会話を楽しんでいたのに、今では「何か見落としてないか」と観察することに集中しすぎて、自然な会話ができなくなってしまいました。
また、訪問介護の現場では同僚と話す機会も限られ、不安を誰にも相談できないまま、次の訪問先に向かうことが続いています。休憩時間も車の中で過ごすことが多く、孤独感が強くなってきました。
Aさんの心境
「同僚と顔を合わせる機会が少なくて、自分の介護が正しいのか分からない。一人で抱え込んでしまっている気がする。」
Aさんの症状について
Aさんの症状は、責任やプレッシャーに対する心理的・身体的な反応として現れています。特に、不安を感じやすい状態や、動悸などの身体的な症状を伴うため、不安症(不安障害)との関連が考えられます。
事例2:デイサービス職員Bさんの「共感疲労による感情のマヒ」
Bさんは30代男性。デイサービスで介護職員として働いています。利用者さんの楽しそうな笑顔や、レクリエーション活動での生き生きとした表情を見ることが何よりの喜びでした。
デイサービスでは、認知症の症状により不安や混乱を訴える利用者さんも多く、Bさんは常に利用者さんの気持ちに寄り添い、安心してもらえるよう努めてきました。しかし、毎日のように「家に帰りたい」「家族はどこにいるの」と涙を流される利用者さんや、「なぜここにいるのか分からない」と不安を訴える方の気持ちを受け止め続けることで、次第に心が疲れてきてしまいました。
また、休憩時間もほとんど取れない日も多く、そのような中で、利用者さんの体調悪化や入院、時には訃報を聞くことも増え「大切な方を失った」悲しみを消化する時間的・精神的余裕もなくなっていきました。
Bさんに現れた変化
ここ半年ほど、利用者さんが悲しそうな表情を見せても、以前のように「大丈夫ですよ、一緒にいますから」と自然に声をかけることができなくなりました。頭では「寄り添わなければ」と分かっているのに、心が反応しなくなってしまった感じがしています。
Bさんの心境
「長時間勤務の疲れと、毎日利用者さんの不安や悲しみを受け止めているうちに、自分の感情がマヒしてしまった気がする。でも、人手不足だから休むわけにもいかないし、感情を切り離すなんて、介護職としてどうなんだろう…」
Bさんの症状について
Bさんのように、毎日たくさんの感情を受け止め続けていると、「自分の気持ちを話す」場所がないため、無意識に心にフタをするケースが多くなります。心にフタし続けた結果、共感疲労や燃え尽き症候群という形で心身に現れることがあります。

事例3:介護職員Cさんの「イライラしてしまう自分への自己嫌悪」
特別養護老人ホームで働く40代の介護職員Cさん。「入居者の役に立ちたい」という純粋な動機で入職し、利用者の方々の笑顔や「ありがとう」の言葉の大きさにやりがいを感じていました。
Cさんが働く施設では、ここ数年で職員の退職が相次ぎました。新しい職員の採用も思うように進まず、以前は余裕を持って行えていた食事介助や入浴介助も、時間に追われながら行うことが日常になりました。
また、全介助が必要な方や医療的ケアを要する入所者が増えてきたことで、入浴介助や移乗介助など、身体への負担が大きい業務も増えてきました。
Cさんに現れた変化
人手不足により業務が立て込む中で、利用者さんから何度も同じことを聞かれたり、介助を拒否されたりした時に、心の中で「なんで分かってくれないの」という思いが湧くようになりました。そんな自分の気持ちに気づくたびに、罪悪感と自己嫌悪に陥っています。
また、40代に入り体力的な衰えも実感するようになりました。重い利用者の移乗介助で腰を痛めることが増え、「この先、体力が持つだろうか」という不安が頭をよぎることも多くなっています。
Cさんの心境
「利用者の方にイライラしてしまう自分が嫌でたまりません。こんな気持ちで介護をしていて良いのでしょうか。」「身体も思うように動かなくなってきて、若い職員に迷惑をかけているのではないかと心配です。でも、まだまだ働かなければならないし、この先不安です。」
Cさんの症状について
Cさんの症状は、職場環境の変化や身体的負担といった特定のストレス要因に対する心理的な反応といえます。ストレスから離れると症状が軽快するような場合は、適応障害との関連性も考えられます。
代表的なメンタル不調の症状
介護の現場では、利用者さんの安全や健康を最優先に考えるあまり、自分自身の心身の変化を「まだ大丈夫」「利用者さんのためなら」と見過ごしてしまうことも少なくありません。しかし、心と身体は密接につながっており、精神的な負担が身体の症状として現れることもケースもあります。
ここでは介護職の方に現れやすい症状を身体面と心理面に分けて紹介します。
身体に現れる症状
- 夜勤明けでなくても眠れない、熟睡できない
- 朝起きても疲れが全く取れていない
- 腰痛や肩こりが慢性化し、休んでも改善しない
- 利用者さんの介助中に動悸や息切れを感じる
- 原因不明の頭痛や胃の不快感
- 慢性的な疲労感で身体が重く感じる
- 風邪をひきやすくなるなど、抵抗力が下がる
心や行動に表れる症状
- 利用者さんの同じ質問や介助拒否でイライラしやすくなる
- 以前は感じていた介護のやりがいを感じなくなる
- 理由もなく急に涙が出ることがある
- 以前はスムーズにできていた作業に時間がかかるようになる
- 何をするにも億劫になり、外出や趣味への関心がなくなる
- 休日でも仕事のことが心配で不安になる
- 感情の起伏がなくなり、利用者さんの困りごとに何も感じなくなる
- ミスが増える
これらの症状にいくつか当てはまり、それが2週間以上続いているようであれば、専門家への相談を検討する時期かもしれません。

メンタル不調になる前に知ってほしいこと
事例からもわかるように、介護現場には利用者さんの命や尊厳にかかわる特有のプレッシャーが存在します。しかし、なぜ多くの介護職の方がその負担を一人で背負いこんでしまうのでしょうか。
「弱音を吐きにくい」介護現場の現実
介護の仕事は「人を支える仕事」という性質上、「自分がしっかりしなければ」という責任感が強く働き、心身の不調を感じても「これくらいで弱音を吐くなんて」と自分を責めてしまうことが少なくありません。
さらに、訪問介護のように一人で業務を行うことが多い職種では、同僚と悩みを共有する機会も限られ、孤独感を抱えたまま問題が深刻化してしまうケースも珍しくありません。
「感情労働」への理解不足
介護職は、利用者さんの不安や悲しみに寄り添い、常に笑顔で接することが求められる「感情労働」の代表的な職業の一つです。感情労働による疲労は目に見えないため、「精神的にきつい」と感じていても、「それも仕事のうち」と見過ごしてしまうことがあります。
また、「利用者さんにイライラしてしまう自分が情けない」「感情がマヒしてしまった」といった介護職特有の悩みに対して、相談できる環境が整っていない現場も多いのが現状です。
利用者さん思いの人ほど「利用者さんのために」と限界まで自分を追い込んでしまうことがあります。そんな時こそ、メンタルヘルスの専門家に相談することを検討してみてください。
あなたの不安を話せる心の専門家
介護現場特有の責任感や使命感、感情労働による疲労、一人での判断への不安など、カウンセラーはメンタルヘルスの専門家だからこその視点でじっくりと耳を傾けます。
カウンセリングがあなたの「頑張りすぎ」に気づくきっかけになる
「大丈夫」だと思っていた自分に、実は心のケアが必要だったと気づくことは、単に問題を解決するだけでなく、これからの人生で「どうすれば自分らしく、健康に働き続けられるか」を知るための、貴重な一歩になります。
手軽に利用できるオンラインカウンセリング
「相談したいけれど夜勤や不規則なシフトで時間が合わない」「訪問先が遠方で、カウンセリングルームに通うのが難しい」という場合は、自宅や休憩スペースなど、どこからでも気軽に専門家に相談することができる「オンラインカウンセリング」がおすすめです。
移動時間や場所の制約がないため、忙しい毎日を送る介護職の方々にとって、よりスムーズに専門家のサポートにアクセスすることができるのが魅力です。
オンラインカウンセリング利用者の声
夜勤専門勤務のため昼夜逆転の生活になり、日中の眠気やだるさが抜けませんでした。誰にも相談できず、一人で部屋に閉じこもりがちでしたが、オンラインで気軽に話せるのが本当に助かりました。自分の生活リズムを見直すきっかけになり、身体が少しずつ楽になったのを感じています。。
勤務年数が長くなるにつれ周囲から頼られる立場になり、プライドもあって誰にも弱音を吐けませんでした。特に、若い職員への指導方法で悩んでいましたが、カウンセラーの客観的なアドバイスで凝り固まっていた考え方がほぐれていきました。仕事への自信が戻ってきているのを実感しています
スタッフの離職が続いて、どうすればいいか分からず精神的に追い詰められていました。自分がしっかりしくてはと必死でしたが、カウンセリングで話すうちに、私の気持ちも大切にしていいんだと気づかせてもらいました。今では、自分の心に余裕ができたことで、スタッフの話にも落ち着いて耳を傾けられるようになり、チームの雰囲気も改善しつつあります。
まとめ
介護の仕事は、利用者さんの生活と尊厳を支える重要な役割を担っている一方で、感情労働による疲労や一人で判断することのプレッシャー、身体的な負担など、心身への影響が多い環境でもあります。
質の高い介護を提供し続けるためには、まず自分自身の心と身体を大切にすることが何よりも重要です。
「もう頑張れない…」と感じた時は、一人で抱え込まず、メンタルヘルスの専門家に相談することも大切な選択肢の一つです。あなたが健康で笑顔でいることが、利用者さんにとっても何よりの安心につながります。自分を大切にしながら、介護の仕事を続けていきましょう。
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