【運送業のストレス】「イライラ・孤独・板挟み」事例からメンタル不調のサインを知る

運送業界は、生活を支える重要なインフラとして24時間365日稼働し続けています。
厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」の中の「トラック運転者の労働環境」では、トラック運転者の労働時間は、大型トラック運転者は2,544時間、中小型トラックは2,508時間となっており、全産業平均の2,136時間を大きく上回っています。

厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」トラック運転者の平均年齢を参考に作成
この数字は運送業で働く人々が、ほかの業界と比べて長時間の労働に従事している現状を示しています。
またワンオペでの作業や、配送センターや倉庫の24時間稼働に対応するための深夜・早朝勤務、不規則なシフト体制など、運送業ならではの労働環境により、時間に追われる中で自分の体調変化に気づきにくく、心身の限界まで働き続けてしまうケースも少なくありません。
この記事では、運送業で働く人々が直面しやすいストレス要因を事例で解説し、心の健康を保つための効果的なヒントも合わせてご紹介します。
運送業で起こりうるメンタル不調事例
運送業では「一人での作業」「時間との勝負」「24時間体制」といった環境が、知らず知らずのうちに心身への負担を蓄積させていくことがあります。ここでは、実際の現場で起こりうるメンタル不調のサインを事例で紹介します。
事例1:長距離トラック運転手Aさんの「孤独感」と「事故への不安」
40代男性のAさんは、長距離トラックの運転手として15年間勤務しています。前職では複雑な人間関係を経験しているため、トラック運転手は「一人で黙々と運転できる仕事で気が楽だ」と感じていました。しかし年月が経つにつれて、長距離運転特有の孤独感と責任の重さに悩まされるようになりました。
長時間の孤独な運転と事故のプレッシャー
Aさんの担当する長距離ルートは、基本的に一人での作業となります。休憩時間もサービスエリアで一人で食事を取ることが多く、一日中誰とも会話しない日も珍しくありません。
また、大型トラックでの運転は常に事故のリスクと隣り合わせで、「もし事故を起こしたら」「歩行者やほかの車を巻き込んでしまったら」という不安が運転中に頭をよぎることが増え、以前よりも神経を使うようになりました。
Aさんに現れた変化
ここ1年ほどで、運転中に「このまま一人でいるのかな」という漠然とした不安を感じることが増えました。以前は「気楽で良い」と思っていた一人の時間が、今では重荷に感じられるようになってきました。
また、交通事故のニュースを見るたびに「明日は我が身かもしれない」という恐怖感が強くなり、運転中も「事故を起こしてしまうのではないか」という不安で集中力が続かないことがあります。長時間の運転で疲れが溜まってくると、この不安は余計に大きくなります。
Aさんの心境
「一人の時間が長すぎて、考えすぎてしまう。前は人間関係が面倒だと思っていたのに、今は誰かと話したいと思ってしまう」「大型トラックの運転は責任が重い。もし事故を起こしたら取り返しがつかない。でも、この不安を誰に話せばいいのか分からない」
Aさんの症状
Aさんの状態は孤独感という感情的なストレッサーと、事故への不安という恐怖と不安の感情が複合的に絡み合っています。自分自身で感情のコントロールが難しい状態が続く場合は、全般性不安障害であるケースも考えられます。
事例2:地域配送トラック運転手Bさんの「慢性的な疲労感」と「イライラ感」
40代男性のBさんは地域配送の運転手として10年間勤務しています。以前は決まったルートを回る配送業務で、お客様との顔なじみの関係を築くことにやりがいを感じていました。配送先では「いつもありがとう」と声をかけてもらえることが多く、仕事への充実感もありました。
配送件数の増加と時間短縮の要求
オンラインショッピングの利用増加に加え、2024年4月から労働時間が短縮されたことで、1日の配送件数と時間当たりの業務密度が増加しました。さらに「当日配送」「時間指定配送」の需要が高まったことで、以前より配送時間がタイトになってしまいました。
そのため、今は荷物を届けるだけで精一杯で、お客様との会話もほとんどできなくなり、「早く次へ行かなければ」という焦りを常に感じながら働くようになりました。また、運行管理が厳格になり、荷待ち時間も休憩として記録されることに「実質は働いているのに…」と納得がいかず、ストレスを感じています。再配達の件数も増え、夜遅くまで配送業務が続くことも日常的になってきました。
Bさんに現れた変化
ここ数か月、どれだけ睡眠をとっても疲れが抜けず、常に身体が重い感覚に悩まされています。また、時間に追われる日々が続く中で、些細なことでイライラすることが増えました。道路の渋滞や信号待ち、お客様不在による再配達など、以前は「仕方ない」と受け流せていたことが、今では強いストレスに感じられ、家に帰ってからも、家族の何気ない言葉に過敏に反応してしまうことが増えました。
Bさんの心境
「配送が間に合わなかったらお客様に迷惑をかけてしまう。でも、身体がついていかない」「昔はお客様との会話が楽しみだったのに、今は時間に追われて余裕がない。なんでこんなにイライラしてしまうんだろう」
Bさんの症状
Bさんに現れている、些細なことでのイライラや焦りの持続、そして家族への過敏な反応といった感情的、行動的な症状は、適応障害の診断基準によく見られる特徴と強く結びついています
事例3:運行管理Cさんの「2024年問題」と「板挟みのストレス」
40代男性のCさんは、運行管理として配車担当業務に5年間従事しています。これまでドライバーの労働時間や休憩の確保に配慮しながらも、顧客の厳しい納期要求に応えるため、日々発生するイレギュラーな事態に対応してきました。
しかし、働き方改革関連法によりトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に規制される「2024年問題」が始まって以来、Cさんは常に極度のストレス状態で働いています。安全と法令順守、そして納期達成という相反する要求に挟まれ、そのプレッシャーは増す一方です。
法令順守と効率の矛盾 プレッシャーの増大
Cさんの最も大きなプレッシャーは、時間外労働の上限規制への対応です。法令を順守するため、以前のような配車は組めなくなりました。しかし、人手不足と顧客からの厳しい納期要求は変わらないため、安全と効率という相反する要求の板挟みになっています。
運行管理の責任者として、ドライバーの休憩時間を確保するための運行計画を作成しますが、現場で渋滞や荷待ちが発生し、計画通りに進まないと、その都度、無理のないルート変更や人員調整に追われます。無理な配車を組むたびにドライバーの健康と法令違反のリスクに直面し、強い罪悪感を感じています。
Cさんに現れた変化
無理な配車を組むことによる強い罪悪感がストレスとなり、以前は好きだった趣味にも手がつかず、「誰も自分の苦労を理解してくれない」という孤独を強く感じるようになりました。
Cさんの心境
「ドライバーの安全と法令順守、そして顧客の納期、その板挟みで常に神経をすり減らしている。労働時間短縮は良いことのはずなのに、自分の業務は逆に難しくなった。配車が崩れたときの責任はすべて自分にある。このプレッシャーからいつ解放されるんだろう」
Cさんの症状
Cさんの「安全と法令順守」と「納期達成」という板挟みの構造はロール・コンフリクト(役割葛藤)に該当します。ロール・コンフリクトは、メンタル不調の重要なリスク要因として知られています。

代表的なメンタル不調の症状
メンタル不調の症状は、日常の業務の中で徐々に「いつもと違う」「なんだかおかしいな」という小さな変化として現われ始めます。この章では、身体面と心理面の症状別に紹介します。
身体に現れる症状
- 夜勤明けでなくても眠れない、熟睡できない
- 運転中や作業中に強い眠気に襲われる
- 朝起きても疲れが全く取れていない
- 長時間の運転による肩こりや腰痛が悪化し、休んでも改善しない
- 配送時間に追われる際の動悸や息切れ
- 原因不明の頭痛や出勤前の胃痛など
心や行動に現れる症状
- 交通渋滞や再配達などでイライラしやすくなる
- 以前は「お疲れさま」と言われて嬉しかったのに、何も感じなくなる
- 「事故を起こすのではないか」という不安や焦りが強くなる
- 運転中や一人の時間に、急に涙が出ることがある
- 荷物の積み忘れなどのミスが増える
- 以前はスムーズにできていた作業に時間がかかるようになる
- 何をするにも億劫になり、外出や趣味への関心がなくなる
- 休日でも仕事のことが心配で不安になる
長時間の運転や体力を使う作業が日常的な運送業では、こういった変化を「疲れているだけ」と見過ごしてしまうことも少なくありません。上記の症状が2週間以上続くようであれば、医療機関への受診や、専門家への相談を検討する時期かもしれません。
つらいときこそ専門家に相談を
長時間の運転や不規則なシフト、体力的な負担が続く運送業では、「もう少しがんばれば大丈夫」と自分に言い聞かせながら働き続けてしまうことも少なくありません。また、一人での作業が多く、仕事の成果を正しく評価してもらえているのか不安になることもあります。
不安や悩みに対して、どんなにセルフケアを心がけても、一人では乗り越えられないつらさを感じてしまう時があるかもしれません。
そんな時は、決して一人で抱え込まずに、メンタルヘルスの専門家であるカウンセラーに相談してみることをおすすめします。
カウンセリングの有効性
運送業特有の孤独感や責任の重さ、不規則な生活による心身の疲労など、同じ業界で働いていない家族や友人には理解しにくい悩みであっても、専門家だからこその視点で話を聞くことができます。
また、運転中に感じる不安や、配送時間に追われるプレッシャー、夜勤による生活リズムの乱れなど、具体的な状況を冷静に分析し、問題解決に向けた具体的なアプローチを一緒に考えてくれます。
手軽に利用できるオンラインカウンセリング
「話を聞いてもらいたいけど、不規則なシフトで時間が合わない」「長距離運転で遠方にいることが多い」と感じる人には、自宅や休憩スペース、車内など、どこからでも気軽に専門家に相談することができる「オンラインカウンセリング」がオススメです。
PCやスマートフォンを通じて、対面と変わらない質の高いカウンセリングを受けることができます。移動時間や場所の制約がないため、忙しい毎日を送る運送業の方々にとって、心理的なハードルが低く、よりスムーズに専門家のサポートにアクセスできるのが魅力です。
オンラインカウンセリング利用者の声
無理を重ねるうちに、朝起き上がれないほど疲れていました。体力的な面と経済的な事情も含めて、オンラインで相談できたのが本当に良かった。
この先、体がもつのか、会社がどうなるのかという漠然とした将来の不安が募っていました。職場では言えない本音を、オンラインの場で吐き出せました。自分のキャリアや、この業界で働き続けるための目標を一緒に整理してもらえたことで迷いが晴れ、目の前の業務に集中できるようになりました。
カウンセラーから、『ミスは環境や仕組みにも原因があると』『あなたはよくやっている』と認めてもらえたことで、以前より安心してハンドルを握れています。
まとめ
この記事では、運送業で働く人々が直面しやすいストレス要因を事例とともに挙げ、心の健康を保つための効果的なヒントを解説してきました。
運送業は、私たちの生活を支える重要な役割を担っている一方で、長時間労働や一人での作業、不規則なシフトなど、心身への負担が大きい環境でもあります。そうした中で、自分の体調や心の変化に気づかないまま、限界まで走り続けてしまうことがあります。
どうしてもつらいときには、一人で抱え込まず、カウンセラーに相談することも検討してみてください。オンラインカウンセリングなら、忙しいスケジュールの中でも、あなたのペースで心のケアを始めることができます。
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