仕事の悩み

部下が適応障害になったら?上司の役割や接し方を詳しく紹介

現代の職場では、従業員のメンタルヘルスがますます注目されるようになっています。

適応障害をはじめとするメンタルヘルスの問題は、組織にとっても大きな課題であり、上司は部下に適切なサポートを提供することが求められます。

この記事では部下が適応障害の疑いがある場合を例に挙げ、上司が部下のメンタルヘルス不調に対処する際の役割と、具体的な対応方法について紹介していきます。

仕事の失敗、責任の発生にストレスを感じる割合

適応障害に関わらず、部下のメンタルヘルスサポートは上司にとっては大きな課題です。

厚生労働省が2022年にまとめた「仕事や職業生活に関する強いストレスの有無及び内容別労働者割合」の中から、20歳から49歳までの割合を見てみると、仕事の失敗、責任の発生等の割合が20~29歳は50.5%、30~39歳が42.6%、40歳~49歳では38.7%と、どの年齢層においても高い割合となっています。


厚生労働省 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 第13表を加工して作成

この調査により、部下が仕事に失敗したり、責任を問われることが発生した場合は、上司は特に部下のメンタルヘルスのサポートが必要なことがわかります。

では、上司が部下に配慮し、メンタルサポートを行っている中で適応障害の兆候や症状に気がついた場合には、上司はどのような役割を担い、行動していけばよいのでしょうか。

次の章で詳しく見ていきましょう。

適応障害の部下に対する上司の役割とは

1. 役割を明確にする

上司の役割を明確にすることは、部下のメンタルヘルス不調に対処する上で非常に重要であるといえます。

部下が適応障害となった原因が「仕事」である場合では、上司は大きな役割を担っていきます。

職務規定やガイドラインに沿った対応をしていく

部下の状況に応じて、適応障害の原因が業務や職場の人間関係などの「仕事」に係るストレスである場合、職務規定やガイドラインに沿いながらも、柔軟な対応が求められます。上司は部下の状況を把握し、適切な措置を講じる必要があります。

適応障害の部下が休職を視野に入れているケースでは、休職の有無を確認する場を設けていきましょう。また、対面で直接ヒアリングが可能かどうかにも配慮していきます。

  • いつごろから不調が続いているか
  • いままででストレスを感じるような出来事はあったか
  • 仕事以外で何か変化が起こったか

上記を部下が話してくれる状況であれば、できる範囲でヒアリングを行っていきます。

適応障害の症状がある部下の体調面によっては、メールや書面などでのやりとりが必要な場合もありますので、人事などと連携して進めていきましょう。

2.ハラスメント行為の有無を確認する

適応障害の背景にハラスメント行為がある可能性も考慮し、確認することが重要です。

2020年に厚生労働省がまとめた「職場のハラスメントに関する実態調査」の中の、「予防・解決のための取組を進める上での課題」をみてみると、取組を進める上での課題としては、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」が65.5%と最も高い割合になっています。次いで「発生状況を把握することが困難」が31.8%でもあることから、なかなか企業内での取組が進まないという現状がみえてきます。

厚生労働省 2020年 職場のハラスメントに関する実態調査 図表9を加工して作成

このような背景からも、適応障害の原因がハラスメントであると特定することは容易ではありませんが、上司がしっかりと部下からヒアリングをしていくことが必要不可欠であるといえるでしょう。

ハラスメントポリシーの周知

上司は組織のハラスメントポリシーを周知し、部下がハラスメント行為に遭遇した場合に適切な対応が行われるようにする必要があります。これにはハラスメント行為の定義や報告手順なども含まれます。

また、適応障害の症状が出ている部下がハラスメント行為によってストレスを感じている場合、上司は部下との個別面談を行い、具体的な状況や問題を把握することが重要です。

3.サポートとケアを行っていく

適応障害の症状がある部下に対して、業務や配置転換、勤務時間の調整を行うことは、部下の健康とパフォーマンスの両方をサポートするために重要です。

部下本人からの希望がある場合は、部下の希望を尊重し、可能な限り考慮することが望ましいでしょう。

業務の見直し

部下の能力や興味に応じて、業務内容を再構築することで、ストレスの原因となる業務を軽減します。部下が得意とする分野や興味を持っている仕事にフォーカスすることで、モチベーションや仕事を進めるエネルギーを維持しやすくなります。

配置転換

部下が特定の環境やチーム構成に適応しにくい場合は、他の部署やプロジェクトへの配置転換を検討します。新しい環境でのスタートは、部下に新たな刺激を与え、ストレスの軽減につながることがあります。

勤務時間の調整

部下の体調や生活リズムに合わせて、勤務時間の柔軟な調整を行います。

例えば、出勤時間の調整や、一時的な休暇などの措置が考えられます。また、在宅勤務の導入や柔軟な勤務スケジュールの提供も、ストレス軽減に効果的な場合があります。

以上のような対応を通じて部下の適応障害の症状を改善し、健康で生産的な職場環境で働けるようにサポートしていくことが、上司の役割であるといえるでしょう。

適応障害の兆候がある部下への接し方

部下の適応障害の兆候や症状を見逃さず、状況を把握することが上司の立場では大きなポイントとなります。この章では、具体的な接し方を紹介していきます。

  1. 部下の状況を把握する
  2. 部下の変化に気づく
  3. 部下と他者との比較をしない

順番にみていきましょう

1.部下の状況を把握する

部下が置かれている状況や心理的な変化を把握するためには、定期的な1on1などを取り入れていきましょう。

部下が安心してメンタルヘルスの問題を話せる環境を整えることが、上司としての大きな役割のひとつであるといえます。

適度な距離を保ちつつも、部下の状況をできる限り把握しておくことで、以前との違いや、以降に現れる変化などに対処しやすくなるでしょう。

また、部下が仕事に対する不安や心配を相談してきた場合は、部下の気持ちを受け止めてる事が大事ですが、あらかじめコミュニケーションを取って状況を把握していれば、よい信頼関係が生じているため、対応がスムースに進むことが期待できます。

2.部下の変化に気づく

適応障害を含むメンタルヘルス不調において、急激に症状が現れることは少なく、部下本人も最初はストレスに対処や適応ができていても、徐々にこころの不調や体調不良に繋がっていくケースが一般的です。

  • なんとか仕事を終えて帰宅すると、涙が止まらない
  • 翌日また仕事をしなくてはと思うとなかなか眠れない
  • 寝不足のまま出勤しようとすると、頭痛や腹痛、吐き気がする
  • なんとか家を出て通勤電車に乗ると、動悸や息切れがする
  • 会社までたどり着けず、一度電車を降りて駅のホームで座り込んでしまう

部下にヒアリングを行った際に上記のような症状の報告があれば、ストレスが限界であるというサインかもしれません。

また、適応障害の症状が出ている部下に対しては、その苦境や困難を真摯に受け止め、支える姿勢を示すことが必要です。部下が自信を持ち、前向きな気持ちで取り組むことができるように、上司のサポートが求められます。

3.部下と他者との比較をしない

部下を励ますつもりで「自分が若い時はこうだった」「今とは時代が違うけれど我慢も必要だった」などのように、自分基準で会話を続けることは、円滑なコミュニケーションにはつながりにくいと考えてよいでしょう。

特に、適応障害などのメンタルヘルス不調に陥っている部下には、強めの言葉に聞こえてしまう可能性もあります。

自分の辛い気持ちや症状が上司には伝わらないと感じると、部下が心を閉ざしてしまうことも考えられますので、上司自身の経験値や他者との比較は持ち出さず、適応障害の兆候や症状がある部下を中心として考えていきましょう。

部下のメンタルヘルス不調に責任を感じるケース

適応障害の兆候や症状がある部下のサポートをしていく上では、上司自身のメンタルヘルスにも注意を払う必要があります。

定期的なストレス管理やリフレッシュのための時間を確保し、バランスの取れたライフスタイルを維持することが重要です。

悪い情報や言葉の方が記憶に残りやすい

人は、悪い情報や言葉のほうが記憶に残りやすいといわれており、適応障害の兆候や症状がある部下をサポートし、ヒアリングなどを行っているうちに、上司自身がストレスによってメンタルヘルス不調に陥ることは少なくありません。

上司自身のメンタルヘルスにも気を配る

上司が自分自身のメンタルヘルスを大切にすることは、仕事の成果を上げるだけでなく、健康で充実した人生を送るためにも必要不可欠です。

上司として部下のメンタルヘルスに気を配ることは大切ですが、同時に自身のメンタルヘルスの変化も見過ごせません。

メンタルヘルス対策の一環として

仕事におけるストレスは誰にでもありますが、目標の達成や部下のマネジメントは、大きな責任とプレッシャーを伴うことがあります。

また、そのような状況下では、自分自身の感情や心の健康を無視してしまいがちですが、それが長期的な問題を引き起こす可能性もあります。

メンタルヘルスのプロに相談してみる

プロのカウンセラーによるカウンセリングを通じて、自分自身の感情やストレスに向き合い、健康的な方法でそれらを管理するサポートを受けることは、大きな助けとなるでしょう。

カウンセリングを受けることで、自己理解を深め、より建設的な方法でストレスに対処するスキルを身につけることができます。

自分自身のメンタルヘルスをケアすることは、リーダーシップの質を向上させるだけでなく、個人としてもより充実した生活を送るための重要な一歩です。

自身のストレス管理に「カウンセリング」のメリット

カウンセリングは、マネジメントやリーダーシップにとって非常に有益なツールとなり得ます。

その理由をいくつかみていきましょう。

ストレス管理

マネジメントやリーダーシップのポジションにある従業員は、常に高いプレッシャーや責任を背負っています。

上司自身がカウンセリングを受けることで、ストレスや不安といった感情を適切に管理し、健康的な状態を保つことが期待できます。

また、パフォーマンスや意思決定にストレスが与える影響を、最小限に抑えることが可能となります。

コミュニケーションスキルの向上

マネジメントやリーダーシップにおいては、優れたコミュニケーションスキルは欠かすことができません。

カウンセリングを通じて、自分自身の感情や考えを明確に伝える方法を学ぶことができます。また、他者の感情や視点を理解し、適切に対応するスキルも向上させることができます。

チームの効果的なリーダーシップ

チームを率いる上で、リーダーはメンバーの個々のニーズや適性を理解し、それに応じたサポートを提供する必要があります。

適応障害の兆候や症状がある部下をはじめ、マネジメントを行う立場の上司がカウンセリングを受けることにより、チームのパフォーマンス向上が期待できます。

問題解決能力の向上

マネジメントやリーダーシップの役割は、さまざまな問題や困難に対処することを含みます。カウンセリングを受けることで、自分自身やチームの問題を客観的に分析し、効果的な解決策を見つけるためのスキルを磨くことができます。

これらの要因からもわかるように、カウンセリングは自分自身のストレス管理だけではなく、マネジメントやリーダーシップにとっても非常に有益なツールであり、上司という立場での成長や組織の成功につながることが期待できます。

忙しいビジネスパーソンこそ利用したい「オンラインカウンセリング」

日々忙しいビジネスパーソンにとっては、ストレスがあってもなかなか相談をする時間を作れないのが現状ですが、オンラインカウンセリングは場所や時間を選ばず利用できることがメリットとして挙げられます。

オンラインカウンセリングのメリット

オンラインカウンセリングはスマートフォンがあれば予約も簡単にでき、カウンセリングも自宅などから自分のペースで受けることが可能です。

また、オンラインカウンセリングには交通や移動のストレスがないため、カウンセリング自体が非常に受けやすいサービスであるといえるでしょう。

まとめ

この記事では、現代の職場におけるメンタルヘルスの重要性に焦点を当て、部下が適応障害になった場合、上司が果たすべき役割と具体的な対応方法について紹介しました。

適応障害が仕事のストレスに関連している場合、上司は部下の状況を把握し、職務規定やガイドラインに沿った柔軟な対応をしていくことが重要です。

また、上司自身も部下のメンタルヘルスの問題に責任を感じるケースがあります。その際には、自己のメンタルヘルスを管理し、オンラインカウンセリングなどの手段を活用してストレスに対処していくとよいでしょう。

 

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