「メンタルヘルス不調」という言葉をよく耳にするようになった現代。中でもうつに悩む方は増加傾向にあります。
うつは発症するメカニズムが解明されておらず、遺伝的要因や脳の化学物質の不均衡、ストレスなどの複合的な要因で発症するといわれています。
今回の記事では、うつの初期症状や、心理的サポートが期待できるカウンセリングについて紹介していきます。
うつは誰もがかかる可能性がある疾患
うつは特別な疾患ではなく、誰もがかかる可能性があるということを認識することは、理解を深める上で重要であるといえます。
厚生労働省が2020年にまとめた「患者調査の概況」の中から、躁うつを含む気分障がいの外来推計患者数をみてみると、 1996年の38,000人と比較すると、2020年には91,400人と2.4倍になっています。
厚生労働省 2020年患者調査の概況 統計表2を参考に作成
「まだ大丈夫」を続けるリスク
私たちが生きる「ストレス社会」と呼ばれる現代では、誰しもが気分の浮き沈みを少なからず経験しながら生活をしています。
「なんとかなる」、「まだ大丈夫」と自分を奮い立たせていても、こころと身体に不調が表れるようになり、うつを発症するケースも少なくありません。
また、メンタルや体調不良のまま生活を続けていくことは、大きなリスクになり得ると考えられています。
うつの初期症状とは
なんだか体調が良くない日が続くなど、いくつかの自覚症状があっても、「一度立ち止まったら仕事を続けていけなくなる」という気持ちから、うつと診断されることに対して不安を抱くこともあります。
うつの発症には様々な要因があり、複合的であるとされていますが、たとえば仕事に関するストレスが大きな要素になり得る可能性もあります。
特に、現代のビジネスパーソンが1日のうちで仕事に費やす時間は長く、心身ともに影響を受けやすい環境であるという背景もありますので、最近不調が続いていると感じている場合は、「うつ」のセルフチェックを行ってみましょう。
「うつ」のセルフチェック
項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
日々の暮らしに満足感がない | ||
常に疲れを感じている | ||
以前楽しんでいたことが、今は楽しめない | ||
いままで簡単にできていたことが、今は面倒くさいと感じる | ||
自分は価値のない人間だと感じる |
2つ以上該当し、かつ2週間以上症状が続いている場合は、うつである可能性も考えられます。
では、上記の症状も踏まえた、うつの初期症状を次の章で詳しくみていきましょう。
こころに起こる「うつの初期症状」
まずは、こころに起こるうつの症状をみていきましょう。
1.憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい
憂うつな気分や沈んだ気分、悲しみが常につきまとい、日常生活に影響を与えます。
このような感情の変化は、楽しいことや興味を持っていたことにも関わらず、喜びや満足感を感じにくくなることを含みます。
2.不安が続く、イライラする
常に不安やイライラが付きまとう状態になり、リラックスをすることが難しくなります。
小さなことでも心を乱されることがあり、不安とイライラでこころが落ち着かないと感じるでしょう。
3.集中力が持続しない
元気がなくなり、活動への意欲や集中力が低下します。日常のタスクに取り組むことが困難になり、作業が遅れることがあります。
また、過度の疲労感や倦怠感が生じ、身体的なエネルギーが低下するため、日常生活の活動量が減少する傾向があります。
4.好きなこともやりたくない、細かいことが気になる
以前は楽しんでいたことや、熱中していたことにも興味を持てなくなる傾向が強まります。
同時に、今までは気にならなかった小さなことに対して、過度に気を取られるようになります。特に、他者の言動や物事を考える際に、否定的な視点や不安を感じやすくなります。
5.ネガティブ思考になる
自己否定や罪悪感が強まり、過度に自分を責めたり、物事をネガティブな視点で見る傾向があります。過去の行動や選択について後悔することが増え、将来に対する希望や楽観性が低下します。
また、絶望感や無力感が強まり、消えてなくなりたい、ここからいなくなってしまいたいと感じるようになります。
身体に起こる「うつの初期症状」
次に、身体に起こるうつの初期症状をみていきます。
1.食欲がない、身体がだるい、疲れやすい
食欲不振や身体のだるさ、持続的な疲労感が現れます。これらの身体的な症状は、うつの影響で身体的な活動やエネルギーが低下した結果であると考えられています。
食事を摂ることが負担に感じられたり、食欲が減退することがあります。また、日中に耐え難い疲労を感じる場合もあります。
2.頭痛、肩こり、動悸
頭痛、肩こり、動悸が見られることがあります。これらの身体的な不快感は、うつの症状の一部として現れることがあります。
ストレスや不安が増大し、筋肉の緊張や血圧の変動が生じることで、頭痛や肩こり、動悸や息切れを感じることがあります。
3.胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く
胃腸の不調や便秘、めまい、口の渇きなどの身体的な不快感が現れることがあります。これらの症状は、身体的なストレスや不安の結果として現れることがあります。
消化器系のトラブルや自律神経の乱れが原因で、胃の不快感や便秘が生じることがあります。また、めまいや口の渇きは、神経系の不調や水分摂取量の減少によって引き起こされることがあります。
4.風邪を引きやすい
うつの影響で免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなることがあります。ストレスや不安が免疫系の機能を低下させ、病原体への抵抗力が弱まることで、風邪や他の感染症に罹患しやすくなると考えられています。
また、免疫系の活性化に必要なエネルギーや栄養素が不足することも、感染症にかかりやすくなる要因となります。
5.身体的な不調の増加
身体の各部位での痛みや不快感が増加することがあります。例えば、なんとなく熱っぽくて腰が痛い、腕が痛い、もしくは身体全体が痛いと感じることがありますが、うつの影響による身体の痛みは、医療機関を受診しても病名が付かないケースが少なくありません。
これらの身体的な不調は、身体と心の関連性が示唆されるうつの症状の一部として考えられます。
行動に起こる「うつの初期症状」
この章では、うつの初期症状である、代表的な5つの行動の変化についてみていきましょう。
1.涙もろい、落ち着きがない
感情の制御が難しくなり、涙もろくなります。また、感情の波が激しくなり、怒りや悲しみが突然湧き上がることがあります。
不安や不安定な状態が続くため、日常生活において精神的な安定が欠如し、ストレス管理が困難になることがあります。
2.飲酒量が増える
アルコールの摂取によって、うつの初期症状による不安やストレスを和らげようとする傾向があります。
また、不安やストレスを一時的に和らげるため、日常的の飲酒をするようになると飲酒量が増えていきます。
しかし、アルコールは脳の神経伝達物質に影響を与え、長期的にはうつの症状を悪化させることがあると考えられています。
3.社交的な活動の減少
うつの初期段階では、人との交流や外出を負担に感じ、社交的な活動への興味や参加が減少する傾向があります。
また、友人や家族との関係が希薄化し、孤独感や孤立感が増大することがあります。そのため、社会的な支援や助言を求めることが困難になることから、うつの症状が悪化する可能性があります。
4.会話や自分自身の行動に違和感がある
うつの初期段階では、会話や自分自身の行動に違和感を覚えることがあります。自分の言動や考え方が以前と異なるように感じ、自己評価が低下することもあるでしょう。
また、他者とのコミュニケーションがうまくいかないと感じる場面が増えることで、自己否定や自己嫌悪が強まり、うつの症状が悪化する場合もあります。
5.朝起きられない
うつの初期症状の一つに、朝起きられないという睡眠障害が挙げられます。朝の起床が困難であり、夜間に良い睡眠を取ることが難しくなる場合があります。
日中の活動や仕事に支障をきたし、うつの症状が悪化する可能性があります。
周囲が見てわかる「うつの初期症状」
最後は、周囲が見てわかるうつの初期症状を紹介します。
1.表情が暗く笑顔がない
表情が陰気で、笑顔が少なくなることがあります。常に憂うつな表情をしている場合があります。また、作り笑いや無理をして笑っているなども見られるケースがあります。
このような表情の変化は、心の内面の苦しみや悲しみを反映しています。
2.反応が遅い
うつの初期症状として、会話や指示に対する返答が遅れる場合があるため、第三者が変化に気づくケースがあります。
また、反応が遅いだけではなく、会話の意図を把握できないケースもあるため、相手の発言を何回か声に出して繰り返す傾向があります。
3.遅刻や急な欠勤の増加
うつの初期症状の一つとして、仕事や学校への遅刻や急な欠勤が増加することがあります。特に休日明けや午前中に体調不良で遅刻をするケースが多くなることがあります。
4.会話やタスクに抜けがある
うつの初期症状として、会話やタスクに抜けがあることがあります。会話や作業中に抜けや忘れが生じることがあり、集中力を保つことが難しくなります。
また、言葉の選び方や話の流れに乱れが生じることもあるため、周囲が変化に気づく場合もあります。
5.気分にムラがある
うつの初期症状として、気分にムラがあることが挙げられます。また、物事に一喜一憂しやすく、一時的に元気そうに見えても次の瞬間には沈んでしまうことがあります。
うつの初期症状の自覚があったら?
自分の状態の変化に迅速に気づくことは難しく、いつもと何かが違うと感じていても、そのままいつもの生活を続けてしまうことも少なくありません。
また、嬉しい出来事であってもストレスとなり得るため、人生においての大きなイベントや変化がきっかけでうつを発症するケースも考えられます。
うつは「気分障害」に分類され、ひとことで説明するのは大変難しい疾患ですが、脳のエネルギーが不足している状態であると考えられています。
うつの初期症状を自覚した場合は医療機関を受診し、うつの治療をすることと平行して、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーからのサポートを受けることも有用であるとされています。
メンタルヘルスの専門家のサポート受ける
カウンセリングでは、メンタルヘルスの専門家であるカウンセラーが、じっくりと話を聴き、うつで悩む感情や思いを理解することで、共感と専門知識を持ってサポートをしてい
きます。
スマホから利用できるオンラインカウンセリング
現在では、インターネット接続があれば全国どこからでも利用することができる、オンラインカウンセリングサービスも充実しています。
予約からカウンセリングまで、毎日使用しているスマートフォンから簡単に利用することができるので、話したいと思った時にカウンセリングを受けてみるのもよいでしょう。
まとめ
今回の記事では、うつの初期症状をこころと身体、行動の3つの分類と、第三者が気づける症状別に紹介しました。
うつが重症化しないためにも、初期症状が表れたら医療機関を受診し、平行してメンタルヘルスのプロであるカウンセラーとのカウンセリングも取り入れていくとよいでしょう。
mezzanineのカウンセラー
メザニンコラムを発信している「mezzanine」では、オンラインカウンセリングを提供しています。
ご自宅から、専門性の高いカウンセラーからのカウンセリングを受けられます。
メザニン登録カウンセラー
冬木 更紗 Sarasa FUYUKI
臨床心理士、公認心理師
心理学学位および臨床心理学専攻修士取得。臨床心理士および公認心理師取得後、精神科・心療内科にてカウンセリングを行なっています。また、心理検査の実施経験が豊富です。
【メッセージ】
精神科・心療内科でうつ病、適応障害、パニック障害、発達障害など様々な診断を受けた方々とのカウンセリングを行ってきました。
これまでに得た専門知識を活かしながら、あなたの悩みについて考えるお手伝いをさせていただけると幸いです。