仕事の悩み

【医師監修】適応障害(適応反応症)による休職期間の過ごし方と復職に向けてのポイント

仕事のストレスによって適応障害の症状が出た場合は、しっかりと休息を取ることが重要です。

中には仕事を休む期間をどのように過ごせばよいのかを、不安に感じているビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。

今回の記事では、適応障害で休職した際の過ごし方や、復職に向けてのポイントを紹介します。

監修医師


宮田 俊男 (Toshio MIYATA)

医師、博士(医学)、産業医
大阪大学医学部医学科卒業
早稲田大学理工学術院先端生命医科学センター(TWIns)教授
医療法人社団DEN みいクリニック代々木、みいクリニックみのお理事長

厚生労働省参与として国に助言するとともに、地域医療を推進するため、医療法人を経営し、企業の健康経営や多くの社員、役員のカウンセリング、社員の生活習慣病の重症化予防、病児保育、オンライン診療、医療DXにも取り組んでいる。出演番組の実績も多数。

仕事のストレスによる適応障害

適応障害とは特定のストレスが原因となり、こころと身体に様々な症状が現れる状態を指します。

ビジネスパーソンは日々ストレスに晒されていますが、その中でも適応障害は特定の原因によって症状が現れることから、休職を検討するケースが一般的に多いとされています。

産業別に見る休職者の割合

2022年に厚生労働省がまとめた「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合及び労働者割合」の中から、産業別に該当する労働者がいた割合を見ていきましょう。情報通信業が32.0%、電気・ガス・熱供給・水道業が25.0%、そして金融業、保険業が19.9%と続いています。


厚生労働省 2022年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 第1表を加工して作成

上記は適応障害だけではなく、適応障害をはじめとするメンタルヘルス不調全体による休職者の割合ですが、産業によっても割合に違いが出ていることが分かります。

休職期間の目安は1か月から3か月

適応障害の休職期間は個人の状況や症状の程度によって異なりますが、一般的に休職は1か月から3か月が望ましいとされています。

症状や状態に応じて、1か月の休職期間を経ても自宅療養を要すると判断された場合は、主治医から再度診断書が発行され、休職期間が延長されます。

適応障害はストレスから距離を置くことで症状が改善されるとされていますが、ただ特定のストレスとなる原因から離れるだけでは、休養としては不十分であるとされています。

また、回復期間には個人差がありますので「しっかりと休む」ということが重要であるといえるでしょう。

休職をするまでの流れ

この章では、仕事のストレスのよる適応障害で休職をする際の流れを確認していきましょう。

  1. 医療機関を受診する
  2. 会社に伝える
  3. 休職に伴う手続きを行う

順番にみていきます。

1.医療機関を受診する

適応障害による休職の際には、手続きの一環として診断書が必要になります。自身でこころや身体の変化を感じたら、早めに医療機関を受診し、専門の医師から適応障害の診断書を発行してもらいましょう。

「まだ大丈夫」と思ううちに受診する

精神科や心療内科は予約が混み合っている傾向があるため、受診可能な日時が数週間から数カ月後になることが予想されます。

「まだ大丈夫、病院に行くほどではない」という状態でも、受診の手続きは早急に進めることがポイントとなります。

2.会社に伝える

診断書が手元に届いたら、次は会社に適応障害である旨を伝え、休職の相談をしていきます。しかし、どのように上司に伝えればよいかという点は、最も悩んでしまうポイントかもしれません。

まず、診断書を提出する際に、「このような症状が続いたため医療機関を受診したところ、適応障害と診断された」ということを伝えることが重要です。

上司に理解してもらうことがポイント

休職をする上で、どのような治療を行っていくか、休職期間はどの程度を予定しているかなども相談し、休職後に復職をしたいという希望があれば併せて伝えておくとよいでしょう。

また、休職をしたい旨を上司に直接伝えづらい場合は、人事を交えて三者面談を設定してもらう、メールなどを利用するなどの方法もあります。

最大のポイントとしては、適応障害の症状が出ているため休職をすることを、上司にしっかりと理解してもらうことです。

3.休職に伴う手続きを行う

診断書と休職届などを提出し、必要な手続きを行っていきますが、休職期間中の賃金の支払いは会社によって異なります。

休職中の賃金支払いは発生しない会社が一般的であるため、傷病手当などの申請などを行うことが多いでしょう。

傷病手当は、適応障害での休職期間が給与の支払いの対象となっていない期間に支給される手当であり、1日あたり標準報酬日額の3分の2が支給されます。

1日当たりの金額:【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
(支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のことです。)
(※)支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 標準報酬月額の平均額

引用 全国健康保険協会 協会けんぽ 傷病手当金について

休職理由によっては労災が認定される

また、休職の理由がハラスメントや過重労働による適応障害の場合には、労災認定がおりるケースもありますので、休職前の手続きを行う際に不明な点があれば、必ず人事や労務に確認を取りましょう。

休職期間の過ごし方

仕事のストレスによる適応障害での休職期間は、どのようなことがポイントとなってくるのでしょうか。

  1. 「休養期」
  2. 「回復期」
  3. 「調整期」

上記の3ステップを順番にみていきましょう。

1.「休養期」まずはしっかりとこころと身体を休める

休職期間に入っても、すぐには気持ちを切り替えることが難しく、仕事のことや周囲の事を考えてしまうこともあるでしょう。

「休む」ことに慣れていこう

休職期間に突入したばかりの時期は不安や葛藤があると思います。

また、休む事に罪悪感を抱いたり、時間を有効活用しようと資格勉強などを始めるケースもありますが、適応障害の症状を改善するプロセスにおいて「休む」ことが最も重要ですので、自分ファーストで生活をしていきましょう。

「休養期」は「休む」ことに専念する期間

何もしていない日が続くと、世界から切り離された気分になり、不安になることもあると思いますが、休職期間中は「何もしない」ということに慣れる期間でもあるということです。

休職期間中は、できる範囲で外部からの情報を入れずに生活することがポイントになってきます。

例えば、何気なくつけたテレビで悲しいニュースを目にしたり、SNSでショッキングな動画を見てしまったことによって、体調不良になる可能性があります。

適応障害で休職した場合は、自身の状態を適切に把握し、焦らずゆっくりと回復に専念することが重要ですので、この時期は仕事関連のメールなどは見ずに過ごすことが効果的です。

また、復職をする予定で休職をした場合でも、休職期間の初期段階では復職については考えず、復職する時期になったら考えようという気持ちで、とにかく休みましょう。

2.「回復期」リハビリ期間

「休養期」でしっかりと休んだら、休職期間の中期である「回復期」に入っていきます。

「回復期」では、生活リズムやサイクルなどを徐々に整えていきましょう。おおよその起床時間と就寝時間を決め、一日の中でのリズムを掴んでいきます。

外出が可能であれば短時間の散歩や、軽い運動をしてみるのも効果的です。

しかし、適応障害の症状が出る前と同じ行動をするだけでも、予想以上に疲れる場合もありますので、無理なスケジュールでの行動はできるだけ避けるというのがポイントです。

また、人は楽しいイベントでもストレスを感じることがあると言われているため、休職期間中の長距離の移動を伴う旅行はできる限り避けましょう。これは、リスク管理の一環でもあります。

いきなり今まで通りの過ごし方に戻すのではなく、「休養期」でしっかりと休んだことを踏まえて、「回復期」ではリハビリを行っていきます。

「回復期」にはカウンセリングを受けるのも有効

「回復期」は自分と向き合う時間を設け、再発防止に向けて対処法などを考えていく時期でもありますので、メンタルヘルスプロであるカウンセラーによるカウンセリングを取り入れるのも大変効果的です。

復職に向けたプロセスは個々の状況によって異なるため、リハビリ期間とも呼べる「回復期」の過ごし方は、主治医やカウンセラーからのサポートを受け入れながら進めていくとよいでしょう。

特にカウンセリングでは、「回復期」に自分自身と向き合った際の気持ちなどをカウンセラーと共有することで、心強いサポートが期待できます。

3.「調整期」復職に向けての準備

「休養期」、「回復期」を経て、3ステップの最後は「調整期」に入っていきます。この時の最も重要なポイントとしては自分自身が「働きたい」と思っているかどうかです。

例えば、休職期間を1か月に設定したから、はやく戻らないといけない、これ以上休んでは申し訳ないなどの気持ちから復職の準備をしているようであれば、主治医やカウンセラーとしっかりと状況を踏まえて話をしていきましょう。

主治医から復職に向けての準備段階の許可がでたら、就業時間を軸とした生活リズムを意識したサイクルに戻していきます。休職期間中の生活リズムからゆるやかに戻していくことがポイントです。

休職期間後期は、週5日の同じサイクルで生活ができるかを準備していく期間でもあります。

会社や仕事の事を考えても休職前の症状が出ないかどうかなどを自分自身で確認で確認していきましょう。不調が出ないようであれば、通勤の訓練などを想定した段階に進んでいきます。

不安や不調があれば報告をする

どのような状況でも、なにかのきっかけでストレスの原因を思い出すことはありますので、焦らず回復していくことが重要であるといえます。

「会社の建物を見たら動悸が止まらなくなった」
「不安が大きくなり、はやく帰りたいと感じた」

など、どこかで不調や不安を感じたら、まずは一度考える時間を作ってみましょう。そして主治医やカウンセラー、会社の人事などに相談し、対処していくことが大切です。

復職しても再休職になるケース

休職後に急いで復職をし、再度適応障害の症状が出たことにより二度目の休職になるというケースは少なくありません。

適応障害は主に特定の過度なストレスや圧力によって引き起こされ、その原因が解消されない限り、再び問題が生じやすいという特徴を持っています。

まず、復職後に再発が生じる主な要因として、適応障害の根本的な原因が解決されないままであることが挙げられます。

ストレスや圧力が依然として職場に存在する、または継続している場合には、再びその影響を受けやすくなります。

復職後に「適応障害」を再発しないために

適応障害の再発を避けるためには原因から距離を置くことが重要ですので、復職をしても症状が続く場合には、必要に応じた対応を取っていく必要があります。

復職後にフルタイムで働くことが辛いと感じたら、時短勤務などを併用しながらゆっくりと復職をしていくことが望ましいでしょう。

職場の人間関係は良好か

職場環境と人間関係も大きな影響を与えます。復職後に変化が見られないか、あるいは悪化するような場合、適応が難しくなります。

また、十分なサポートが得られないまま再び業務に従事することは、問題の再発を招く可能性があります。復職後も適切なサポート体制が整っていることが重要です。

所属部署や業務は適正か

さらに、仕事への適性や適職の問題も考慮すべき要因です。

休職前の職務が個人の能力や適性に合わなかった場合、同じ仕事に戻ることが再び問題を引き起こす可能性がありますので、必要に応じて業務の変更や異動の相談をしてみましょう。

総じて、個々の状況に合わせた綿密なケアプランが必要です。心理的な治療やカウンセリング、職場での調整など、複合的なアプローチが求められます。

休職中にカウンセリングを利用してみよう

休職をすることで、適応障害の原因となっていたストレスから距離を置くことができますが、働いていない自分に対してや、復職できるかなどについて不安を抱えることがあるかもしれません。

自分の気持ちを整理したいと思った時は、カウンセリングを受けることが有益です。メンタルヘルスのプロであるカウンセラーから心理的なサポートを得ることで、症状の理解や適切な対処法を見つける手助けとなります。

安心感にもつながる

適応障害で休職をしている期間には、家族や友人に気持ちを話したくても、なかなか思うように言葉にできない場合もありますが、カウンセリングを受けることで、安心感や理解を得ながら、自分の感情を整理することができます。

オンラインカウンセリングは予約も簡単

オンラインカウンセリングはスマホから簡単に予約をすることができます。

また、オンラインカウンセリングは早朝から遅い時間まで、比較的柔軟な対応をしていることが多いので、休職期間中の自宅からでも状況でも利用しやすいのが、オンラインカウンセリングの強みであるといえます。

仕事の関する悩みを話せるカウンセラーを探すこともできますので、休職期間中はオンラインカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。

まとめ

今回の記事では、仕事のストレスによって適応障害になり、休職期間をどのように過ごせばよいのかと不安に感じているビジネスパーソンに向けて、過ごし方や復職にむけてのポイントを紹介しました。

仕事をしていても辛く、休職をしても不安を抱えているという場合は、復職後も継続して行うことが可能なカウンセリングを受けてみましょう。

オンラインカウンセリングなら外出ができない状態でも、お手持ちのスマートフォンで不安な気持ちをカウンセラーに聴いてもらうことができるので、適応障害による休職期間中にうまく活用してみましょう。

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メザニン登録カウンセラー
平井 綾乃 Ayano HIRAI
臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント

うつ病や適応障害による休職・復職支援、EAPと連携した高ストレス該当者のフォローアップなどの経験が豊富です。

【メッセージ】
いまのあなたにとっての「無理しないでね」を一緒に考えます。
悩み事が出口の見えないトンネルとするならば、そのトンネルの出口までの道標としてお役に立ちたいと思っています。

普段は心療内科クリニックやスクールでカウンセリング業務を行っています。