仕事の悩み

「仕事が続かない」アスペルガー症候群の特性を理解して自分に向いている仕事を見つける

誰しも、得意不得意や特有の性格があるように、アスペルガー症候群(ASD)を持つ方にも特性があります。特に職場ではその特性が原因で「仕事が続かない」ことも少なくありません。しかし、自分の特性を理解し適切な環境で働くことで、仕事を続けやすくなるでしょう。

今回の記事では、アスペルガー症候群(ASD)の特性と職場での工夫や、向いている仕事を紹介します。

誰しもが持っている特性の濃淡

「障害」という言葉を聞くと少し驚くかもしれませんが、「障害」とは、物事の妨げになるものや、その原因を意味する言葉です。

たとえばこだわりの強さ、感覚過敏、コミュニケーションにおける困難さなどは、「障害」と捉えるよりも「特性」と表現することで理解しやすくなるかもしれません。

また、近年までは自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群のように、特性の違いによって診断名が異なることがありましたが、現在では「連続体」や「範囲」を意味するスペクトラムという用語が用いられ、「自閉症スペクトラム(ASD)」という表現が広がっています。

アスペルガー症候群の「特性」を活かすヒント

アスペルガー症候群の特性を持つ方にとって、特性を理解し、その特性に適した仕事を見つけることが「仕事が続かない」という問題の解消に役立ちます。

この章では、特性を活かすためのヒントをみていきます。

まずは自己理解から

まず、自分の特性がどういうものかを理解することが、働きやすさを得る第一歩になります。

自分の強みと弱みを知る

特に「この作業は得意」「この環境が苦手」など、具体的な状況を振り返り、何が快適で、どこでストレスを感じやすいかを整理してみましょう。

同じような作業でも、複数のルーティンが異なることで苦手だと感じる、もしくは作業環境によって左右されるなどをチェックしてみましょう。

フィードバックを取り入れる

周囲からのフィードバックは、自分を客観的に見る助けになります。自分が得意な仕事や、より適応しやすい環境が見つかるヒントになります。

職場でのコミュニケーションを工夫する

アスペルガーの方が「仕事が続かない」理由のひとつとして、曖昧な指示や非言語的なやり取りに起因するストレスが挙げられます。コミュニケーションのポイントを工夫することで、より働きやすくなり、仕事を続ける意欲にもつながるでしょう。

具体的な指示を求める

上司やチームから、明確で具体的な指示を出してもらうようにしましょう。もし不安があれば、「視覚的な指示」や「リスト」など、自分にとって分かりやすい形での情報共有をリクエストすると効果的です。

タスクリストで進捗確認

作業を「見える化」するタスクリストは、自分の進捗を管理する助けになります。完了したタスクにチェックを入れていくことで達成感も得られ、混乱を防ぎやすくなります。

職場環境の調整

職場で無理なく働くためには、環境面の調整が重要です。「仕事が続かない」と感じる要因には、職場環境が合わないことも多いため、アスペルガー症候群の特性に合わせた環境づくりが重要です。

リラックスできる空間の確保

アスペルガー症候群の特性のひとつである感覚過敏がある場合は、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンを使って、音の刺激をコントロールできる環境を整えましょう。オフィスが騒がしい場合、少し離れた静かな場所で作業できるか相談するのもおすすめです。

ルーティンの確立

自分にとって規則的なルーティンが落ち着く特性があれば、そのルーティンを大切にしましょう。毎日の作業時間や休憩のタイミングを安定させることで、予測可能な流れができ、安心感が得られます。

アスペルガーに向いている職種7選

アスペルガーの特性に合った仕事を見つけることで、得意な分野で力を発揮しやすくなります。次のような特徴がある職場や職種を検討してみてください。

1.プログラマー

プログラマーの仕事は、論理的思考と集中力が求められ、コードの正確な書き方やエラーを見つける力が重要です。アスペルガーの特性を持つ方の中には、問題解決に没頭できる方が多く、コードのミスを探すといった作業にも適性があるケースが多いでしょう。

また、多くのプログラミング関連の職場では、個人作業が主であり、集中を妨げる会話が少なく、リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方も広がっているため、自分のペースを大事にしやすいのも利点です。

特定のプログラミング言語に深く精通して専門性を高めれば、長期的に需要があるスキルを手に入れることも可能です。

2.Webデザイナー

アスペルガーの特性を持つ方の中には、視覚的に独自の感性や創造力を発揮する方も多いため、独自の視点や創造性が求められるWebデザイナーの仕事は向いているといえます。

さらに、デザインを作成する際は多くの場面で個人作業が中心となり、他人とのコミュニケーションが必要な場面も少なめです。

クライアントや上司と明確に方針を確認し、後は自分のペースで作業ができる職場であれば、創造的な部分を伸ばしつつ、安心して働くことができるでしょう。

3.事務職

事務職と一括りにいっても作業範囲は広く、組織によって行う業務もさまざまですが、決められたルーティン作業が主である事務職は、アスペルガー症候群に向いているといえます。

たとえばデータ入力や資料作成、書類整理といった業務は、日々決まった作業を淡々と行うことが求められます。

また、細かいミスを防ぐための注意力や正確性も求められることが多く、アスペルガーの特性を持つ方が強みとして持つことの多い、集中力や細部に対する意識が作業で発揮できるでしょう。

さらに、職場によっては一人で黙々と作業を進められる環境も多く、コミュニケーションが少なめの事務職であれば、落ち着いて仕事に取り組める可能性が高まります。

4.CADなどの機械設計

CADなどの機械設計の仕事には、高い注意力と論理的な思考が求められます。設計図を作成する際には細かい部分に目を配りながら進める必要があり、特にミスを防ぐための精密さが必要です。

この分野は計画的に作業を進めることが重視され、アスペルガーの特性を持つ方が多く持っているとされる、きっちりとした順序立てや分析力が役立つ場面が多く存在します。

一般的にCADなどの機械設計は静かな環境で集中できるため、自己管理しやすく、着実に成し遂げることで達成感も得られやすいでしょう。

5.データアナリスト

データアナリストは、膨大なデータの中から法則やトレンドを見つけ出す仕事で、細かい分析や高い集中力が求められます。アスペルガーの特性を持つ方には、データを根気強く分析し、論理的な結論を導き出す力が得意な方もいるため、向いているといえます。

さらに、個人作業が多く、リモートワークが進んでいる業界でもあるため、比較的ストレスが少ない環境で働けるでしょう。

6.ライター・リサーチャー

ライティングやリサーチ業務は、調べた情報をまとめる作業で正確性や注意力が重要になります。アスペルガーの特性を持つ方には、事実を掘り下げて徹底的に調べるのが得意な方も多く、データを収集し、正確に文章化することに適性があるでしょう。

また、ライティングやリサーチは一人で取り組む時間が多いため、より集中できる環境としても安定しています。

7.校正者

校正者の仕事は、文章の誤字脱字、事実関係の確認など、非常に細かい部分に気を配る能力が必要です。アスペルガーの特性を持つ方の中には、些細なミスにも気づきやすい方が多く、文章の校正や誤りを見つける作業に強みを発揮できる場合があります。

また、一人で集中して作業が進められる環境であり、必要なコミュニケーションも少ないため、自分のペースで進めやすく、安心して続けられる業種のひとつであるといえます。

事前に確認しておきたい3つのこと

特性に合った仕事を見つけるためには、就職前のリサーチはとても大切です。ここでは、職場選びの際に確認すると良い3つのポイントを詳しく解説します。

1.ジョブローテーションの有無

職場によっては、定期的に部署を異動する「ジョブローテーション」が行われる場合がありますが、アスペルガーの特性を持つ方にとって、頻繁な部署変更は不安材料になることがあります。

なぜ異動頻度を確認したほうが良いのか?

異動が頻繁に行われると、新しい同僚や業務内容に適応する負担がかかり、ストレスが増える場合があります。安定して同じ業務に集中できる職場は、慣れた環境でスムーズに仕事が進められ、安心感を得やすくなります。

2.職場環境と作業場所の柔軟性

アスペルガーの特性を持つ方にとって、騒がしい環境や過度な刺激がストレスになることがあります。自分に合った作業場所や職場の柔軟性も、快適に働ける重要な要素です。

なぜ柔軟性が重要なのか

音や光に敏感な場合、騒音の少ないスペースや、仕事に集中しやすい静かな場所が確保されているかどうかで、業務の効率だけでなく、メンタル面でも違いが出るケースがあります。

また、在宅勤務やリモートワークの選択肢があると、自分のペースで働ける可能性が増え、職場でのストレスも減少しますが、業務に関しての相談などを即座に行いたい場合は、出社とリモートを必要に応じて切り替え可能かどうかも確認しておくとよいでしょう。

3.メンタルサポート体制

職場に相談できる窓口や、従業員のメンタルヘルスを支援するカウンセリング制度が整っていると、働きやすさが大きく向上します。

なぜメンタルサポートが重要なのか

アスペルガーの特性を持つ方は、対人関係や業務でのストレスが原因で不安を感じやすいことがあります。定期的な相談窓口があると、悩みを早期に解消でき、安心して業務に取り組みやすくなります。

また、働く組織でのメンタルヘルスサポートを併用して、個人でカウンセリングなどを利用していくことも効果的です。

個人でのカウンセリング利用の効果

近年、日本でも多くの人にとって利用しやすい選択肢となっているカウンセリングですが、直接足を運ぶことが難しい方にとっては、オンラインでのカウンセリングが大きな助けとなっています。

また、定期的なカウンセリングは、自分のメンタルヘルスを維持するために非常に重要であり、問題解決のためのツールとして機能します。

オンラインカウンセリングは、自宅などの自分がリラックスできる環境で受けることができますので、アスペルガー症候群の特性を持つ方と相性がいいサービスであるといえるでしょう。

まとめ

アスペルガー症候群(ASD)の特性を理解し、自分に向いている仕事を見つけることで、「仕事が続かない」という問題を軽減し、職場での安定と成長を実感することが可能です。

自己理解を深め、職場でのコミュニケーションや環境調整を工夫することで、より快適に働くことが可能になります。また、アスペルガー症候群(ASD)の特性を活かせる職種を考えることで、自分の強みを最大限に発揮できる場を見つけられるでしょう。

自分の特性を理解し、適切な環境で働くことで、職業的な安定と充実感を得られる可能性が広がります。

仕事をしていく上での悩みや不安がある場合は、個人でカウンセリングを利用してみましょう。週に一度、継続して続けることが効果的です。

information

オンラインカウンセリング mezzanine(メザニン)のご紹介

メザニンコラムを発信しているオンラインカウンセリングサービス「mezzanine(メザニン)」。臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士、EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)などの専門資格をもつカウンセラーから「オンライン」でカウンセリングを受けられます。

mezzanineのサイトへ