近年、メンタルヘルスへの関心が高まっており、特にビジネスシーンでは従業員のメンタルヘルス対策への取り組みが重要視されています。
しかし、メンタル不調の従業員に対して十分な対策ができていない、何から手を着ければよいか分からないという人事担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、従業員が内部のストレスチェックやカウンセリングを受けることへの不安から、不調を隠す傾向があることについてや、外部カウンセリングサービス導入のメリットについて解説します。
従業員のメンタル不調の割合
厚生労働省がまとめた労働安全衛生調査(実態調査)から、「メンタルヘルス不調により休業または退職した労働者がいる事業所の割合」をみていきましょう。
2023年は「いずれかに該当する労働者がいた」は13.5%、「退職した労働者がいた」は6.4%と、過去4年間と比較する増加傾向にあり、「連続1か月以上休業した労働者がいた」も10.4%と、2022年に続いて10%台と高い割合となっています。
厚生労働省 労働安全衛生調査(実態調査)のデータを元にグラフを作成
従業員が社内カウンセリングを受けたがらない理由
メンタル不調を抱えながらも、従業員が社内のストレスチェックやカウンセリングを受けたがらないケースも少なくありません。この章では、一般的に多い理由をいくつか紹介します。
1.個人情報の保護に対する不安
社内でメンタルヘルス支援を受ける際、特に個人情報の保護に対する不安は、従業員がカウンセリングを避ける大きな要因となっています。
社内でメンタル不調に係る情報を知るのはどの組織の誰なのか、そしてどのように個人情報が保護されるのかが明確でない場合は、さらに従業員の不安を大きくさせます。
たとえば「他の部署の人に偶然見られてしまったらどうしよう」「誰かがカウンセリングルームにいると噂するかもしれない」という不安が、社内カウンセリングを積極的に受けにくくしているという背景もあります。
2.評価やキャリアへの影響
多くの従業員が「メンタル不調を抱えていると人事評価に響くのではないか」「メンタルヘルスを理由に休職や異動を勧められるのではないか」という不安を抱えています。
従業員からすれば、カウンセリングを受けること自体が「評価に影響する」と認識しているケースが多いという背景があります。
評価や昇進の際に、メンタル面での問題がないほうが有利だと感じている従業員が少なくないのは、組織内での評価やキャリア上のリスクを避けるためともいえます。
3.信頼性の欠如
社内にメンタルヘルス支援窓口がある場合でも、従業員は「本当にここで話しても大丈夫なのか」と不安を感じることがあります。社内カウンセラーが組織の一部である場合、無意識に上司や人事に情報が伝わるのではないかという不安を抱くケースもあるでしょう。
また、「社内だから本音で話せない」「カウンセリング内容が評価資料に活用されるのでは?」と不安を感じる従業員も少なくありません。
このように、社内カウンセリングに対する信頼が低ければ、従業員が心を開いて相談することが難しくなり、結果として社内カウンセリングを受けたがらないケースにつながると考えられます。
4.効果に関する疑問や社内制度への不信感
従業員が社内のメンタルヘルスケア制度を利用しても、形式的なチェックのみで終了してしまい、根本的な問題が解決されず不信感が強まることがあります。一度だけ面談して、特に深い話もせずに終わってしまったというような経験は、結局は心のケアにはならなかったという印象を残し、今後も利用しない選択につながりやすいとされています。
中には上司が社内のメンタルヘルスケアの利用を推奨しないケースや、支援制度はあるが利用している人はほとんどいないと感じたとき、利用すると特別視されるのではないかと感じてしまい、従業員がためらう傾向もみられます。
従業員がカウンセリングを受けやすい環境を作るには
メンタルヘルスケアにおいて、外部の職場カウンセリングサービスを導入することは非常に効果的な手段の一つです。この章では、外部カウンセリングサービス導入のメリットについて詳しく解説します。
外部EAPサービスの検討
従業員支援プログラム(EAP: Employee Assistance Program)は、メンタルヘルスケアにおける包括的なサポートを提供する外部のサービスです。EAPサービス提供会社は従業員のメンタルヘルスに関する豊富な専門知識と実績を持ち、各企業のニーズに合わせたプランを提案します。
EAPは包括的なサポートが期待できる
外部EAPはメンタルヘルスに限らず、さまざまな問題に対応する包括的な支援を提供します。従業員が直面する多様な問題に対し、トータルでサポートできる点が特徴です。
専門家による安心のサポート
メンタルヘルスの専門家が対応するため、信頼性が高く、従業員も安心して利用できます。外部EAP企業はプライバシーの保護も徹底されており、社内で相談内容が漏れる心配がありません。
職場全体への効果
EAPの導入は従業員の不安を軽減し、組織として健康的な職場環境づくりを促進するため、長期的に高い効果が期待できます。ストレスチェックや個別カウンセリングなど、複数のサポートメニューを揃えているため、企業全体のニーズに応じた柔軟な対応が可能です。
外部カウンセリングサービスの利用
外部カウンセリングサービスは、従業員のメンタルヘルスに特化したサポートを提供する点が特徴です。
EAPが従業員の多様な問題に包括的に対応するサービスであるのに対し、外部カウンセリングサービスは、主に従業員にメンタルヘルスにフォーカスし、専門的なサポートを行います。ここでは特に利用しやすい、外部のオンラインカウンセリングサービスについて解説します。
メンタル不調の予防にも効果的
外部のオンラインカウンセリングサービスでは、早期のストレスケアや不安の軽減を目的とし、従業員のメンタル不調が深刻化する前に予防的なケアを受けられます。
たとえば、ストレスチェックなどに関わらず、メンタル不調の兆候が見られる従業員がカウンセリングを受けることができるため、効果や改善が期待できます。
従業員の休職や退職率の低下にもつながる
従業員がメンタル不調を抱えた場合、休職や退職となるケースがあるため、手続きには人事担当者や管理職にも大きな負担が生じます。
外部カウンセリングサービスを利用することで、従業員が自分のメンタルヘルスの管理ができるため、結果として企業はより安定した人材を保持できるようになります。
日常のストレス管理がしやすくなる
特に外部のオンラインカウンセリングサービスは、場所や時間を選ばずにアクセスできるため、従業員が無理なくケアを継続できる仕組みが整っています。従業員のスケジュールに併せてカウンセリングを受けられるためメンタルケアが習慣化され、日常のストレス管理がしやすくなります。
他の従業員にカウンセリング聞かれる心配がない
外部カウンセリングサービスでは、従業員がプライバシーを気にせず利用できる環境が整っており、社内で相談内容が漏れる心配が少ないのが特徴です。プライバシーを重視する従業員にとって、より安心して利用できる環境です。
外部サービス導入の最大のメリット「プライバシーの重視」
外部カウンセリングサービスやEAPの導入は、従業員が気軽にメンタルヘルスサポートを受けられる環境を整え、職場全体として従業員の心の健康を支える体制を強化します。プライバシーが守られ、社内評価や人間関係を気にせずに利用できるため、メンタルヘルスケアを促進する大きなメリットがあります。
外部のカウンセリングサービスの費用について
外部EAPサービス
外部EAPサービスの費用は幅広く、取り扱うサービス内容によっても料金が異なります。所属する事業所の規模や、制度の土台づくりとして導入したいサービスの検討後、見積もりを出す流れが一般的です。
外部のオンラインカウンセリングサービス
外部のオンラインカウンセリングサービスは、従業員個人の利用であれば簡単に導入することが可能です。
たとえば、オンラインカウンセリングサービスのメザニンでは、 1回50分のカウンセリングを6,000P(5,999円)で受けることができるなど、料金が明確であるケースが多いでしょう。
従業員個人のメンタル不調をサポートしたい場合は、まずは外部オンラインカウンセリングサービスを検討してみましょう。
まとめ
従業員のメンタルヘルスは、企業にとって非常に重要な課題です。人事担当者は従業員が社内カウンセリングを受け入れられない理由を理解することで、メンタルヘルスケアの土台づくりができるでしょう。
メンタル不調を抱える従業員に対して、適切な支援を提供することは、職場の生産性を高め、従業員の定着率向上にも寄与します。外部カウンセリングサービスやEAPを検討し、職場全体のメンタルヘルスを向上させる取り組みを進めていきましょう。
従業員が健康でいられる環境を整えることが、企業の持続的な成長につながります。
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企業内カウンセリングをオンラインで実現
ストレスやメンタル不調を抱える従業員のメンタルヘルスケアにも活用できるのが、オンラインカウンセリングサービス「mezzanine(メザニン)」です。
臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士、EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)などの専門資格をもつカウンセラーから「オンライン」でカウンセリングを受けられます。