日常的に行う行動のひとつに「買い物」があります。
生活する上で欠かせない食料品や日用品の他に、自分が欲しいと思う物や、他者に向けたプレゼントを購入することもあるでしょう。しかし、よほどの場合を除き、生活に大きな影響を与えるほどに買い過ぎることは少ないといえます。
本記事では、「買い物」をすることがやめたくてもやめられない「買い物依存」の要因やきっかけ、そして買い物依存のサインを紹介します。
もしかしたら買い物依存かもと不安な方や、家族が買い物依存かもと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
「買い物依存」とは
「買い物依存」は医学的な病名ではありませんが、買い物をしたいという欲求が自身ではコントロールできず、「やめたいのにやめられない」という状態の事を指します。
また、買い物依存は、「物」ではなく「物を買う」というプロセスに依存します。浪費するのは、本人の意思が弱いからではないかと思われるかもしれませんが、買い物依存は環境やきっかけによって誰もがなり得るともいえるのです。
「買い物依存」になる要因
「買い物依存」になる要因はいくつか考えられますが、ストレスが大きく関係しているといわれています。
買い物をすることで、ストレスや不安が一時的に和らぐため、同じようなこころの状態になると買い物を繰り返す傾向があります。
ストレスを忘れるために買い物をすると、快楽をもたらす脳内物質が放出され、リラックス感や幸福感を得ることができるため、やめたくてもやめられないという状態に陥るのです。
「欲しい」と思わせるメディアの影響も
広告やメディアの影響により、欲望を刺激する商品が常に目に触れ、私たちは自己価値を商品の購入によって判断する傾向があります。
多くの人が手に入れたいと思っている物を誰よりも所有している、期間限定商品を手に入れるという優越感も、買い物依存の要因として考えられています。
「買い物依存」の問題が生じる背景とは
実際のお金を手元に持たずに支払いができるキャッシュレス決済では、購買意欲の促進がされます。
「欲しいものがすぐ手に入る」という仕組みが身近になったことは、消費行動に大きな影響を与えていると考えられ、一度情報を登録してしまえば、簡単な決済で商品を購入することができます。
また、現在では複数枚のカードを持つことが一般的となったため、限度額に達しても違うカードを使用するという悪循環に陥るケースもあります。
インターネットの普及も大きく影響している
インターネットの普及によって、オンラインショッピングが24時間いつでも可能となったことは、買い物の利便性を飛躍的に向上させました。この利便性により、多くの人々がオンラインでの買い物を選択するようになったと考えられます。
また、インターネットを利用したオンラインショッピングでは、クリックするだけで簡単に商品を手に入れることができます。特にタイムセールや限定価格のような特別なイベントが行われると、「今しか買えない」「お得だから」という感覚により、衝動買いをしてしまうことがあります。
ソーシャルメディアが刺激する「買い物欲」
SNSや広告などによる消費刺激も、要因のひとつと考えることができます。
毎月の美容代、ネイル代、洋服代、交際費などを掲載しているメディアの影響で、かわいさを維持するには、毎月あれだけの費用がかかると影響されることもあるでしょう。
いいねがたくさん欲しい、人気のあの子のようになりたいという欲求によって、完璧になるまで買い物を続けてしまうケースもあります。
「買い物依存」になるきっかけとは
「買い物依存」は特別な人がなるのではなく、ほんの些細なきっかけで誰もがなり得ます。
この章では、一般的なきっかけを2つの例を元に紹介します。
- 特別感が味わえる
- 趣味がエスカレート
1つずつ見ていきましょう。
1.特別感が味わえる
インターネットショッピングとは異なる魅力が味わえるのが、店舗に出向いて買い物をする理由という場合もあるでしょう。
さらに、いやなことがあった日や、仕事がうまくいかなかった日などの帰りに、ストレス発散に買い物をすると、一時的にストレスが解消されスッキリします。
自分の状態がどうであれ、買い物をすれば特別感が味わえるというのも、買い物依存のきっかけとして挙げられる要素です。
日常生活では味わえない特別感
ブランドごとに異なるコンセプトやデザインを実際に見ることは、直接出向くことの大きな理由であり、そこでの経験は特別なものとして記憶されます。
また、丁寧で心温まる、きめ細かい接客を受けると、嫌なことを一瞬でも忘れることができるでしょう。
単なる商品の販売だけでなく、顧客に心地よい体験を提供し、特別な時間を演出することは、店舗ならではの価値ともいえます。
買っても買っても終わりがない
コスメやアパレル、最近では食品メーカーなどでも、限定品や様々なジャンルとのコラボを続々と発表しています。
期間限定や、一定金額以上を購入すればノベルティが付くなどの、さらなる特別感によって次から次へ買い物をしてしまうケースがあり、新作が発売されると買わずにはいられないという状態になります。
2.趣味がエスカレート
特定の個人やキャラクターを自分のお気に入りとして、人におすすめしたいほど応援しているという意味合いで使用されることが多い言葉に、「推し」があります。その中でも「推し活」とは、推しを応援する活動を指します。
「推し」の存在は毎日に潤いを与え、こころの支えになることもあります。ここでは、趣味としての「推し活」が買い物依存になった例を紹介します。
推し活の経済効果は6000億円以上
日本における「推し活」の経済効果は6000億円以上といわれています。
「推し活」にはイベントのチケット代やグッズ代、交通費や宿泊費などの諸経費、そして推し関連の商品やサービスへの消費が含まれ、展開が増えれば増えるほど出費もかさんでいきます。
また、中には動画配信サイトで、推しに少しでも気づいてほしい、コメントをもらえたら嬉しいという気持ちから、いわゆる「投げ銭」といわれる課金を繰り返してしまうケースもあります。
趣味と依存の境界線は?
推し活自体は生活に潤いを与える場合がありますが、常識の範囲を超えて推し活にお金を使い過ぎているようであれば注意が必要です。
出費により金銭面での負担が大きくなってしまう場合は、日常生活や健康面への影響が懸念されます。
「買い物依存」3つのサイン
買い物依存が疑われる場合、いくつかのサインがあります。買い物依存を疑われる一般的なサインから、3つを紹介します。
- 欲しいものではなく、羨ましがられる物を買う
- 未開封品が家にあふれている
- 無計画な買い物
順番に見ていきます。
1.欲しいものではなく、羨ましがられる物を買う
自分の欲求に基づいて買い物をするのではなく、他者に羨ましいと思わせるための商品を購入することが増えているようであれば、買い物依存のサインかもしれません。
他者から自分自身が認められるために、物を買って自己肯定感を高めようしたり、 周囲やメディアからの影響により、羨ましがられるような商品を「購入しなければ」と思うことが増えきます。
また、他の問題やストレスから逃れるために、一時的に物を買って心の空虚感を埋めようとする場合もあります。
2.未開封品が家にあふれている
購入した商品を実際に使用せずに未開封のまま置きっぱなしにすることで、自宅に物が増えていき未開封の商品が家に溢れる状況は、買い物依存の特徴的な行動のひとつに挙げられます。
未開封のまま保管される商品は、本来の目的である使用や消費よりも、所有していること自体が満足感をもたらすと考えられており、「物」がそこのあることで心理的な安心感を得ようとする場合があります。
また、未開封品のままの購入品が増える場合は、誰かに見せたいという欲求は少なく、時には買い物をしている最中でも何を購入したのか覚えていないというケースも多くみられます。
3.無計画な買い物
買い物依存の場合、無計画で衝動的に商品を購入する傾向があります。
予算や必要性を考えずに買い物をしてしまうことで、生活に影響が出てもやめることができません。たとえば、いま手元にあるお金で光熱費を支払わなけらばならないと分かっていても、そのお金で買い物を続けてしまいます。
また、衝動的に買い物をしてしまうこともあるため、気づけば買い物を繰り返し、何を買ったのかを覚えていないという状況に陥るケースもあります。
これらのサインが複数当てはまる場合、買い物依存の可能性が高いと考えられます。
もし自分や身近な人がこれらの症状を抱えていると感じる場合は、カウンセリングやサポートグループなどが有効なアプローチとなります。
辛いと思ったらオンラインカウンセリング
買い物依存は、日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。外出すると買い物の誘惑が多いと感じているようであれば、自宅からでも相談できる、オンラインカウンセリングを視野に入れてみるのもよいでしょう。
カウンセラーと話していくことで、自己理解を深めることが期待でき、過去の相談内容を振り返ることで、依存症に対してどう向き合っていくのかを考える機会を得ることができます。
自分ではコントロールできない、やめたいのにやめることができないと悩んでいるならば、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーに相談してみましょう。
まとめ
この記事では買い物依存について解説してきました。
もしかしたら買い物依存かもと不安な方、家族が買い物依存かもと悩んでいる方、そしてこのままでは買い物依存になりそうだと悩んでいる方は、時間や場所を気にせず利用できる、オンラインカンセリングでカウンセラーに悩みを相談してみましょう。
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