未来を見据えた職場づくりへ。「ストレスチェック」義務化で企業と従業員を守る
近年、従業員のメンタルヘルス対策は、企業にとって重要な課題となっています。厚生労働省は、心の健康問題による休職者や離職者を減らし、誰もが安心して働き続けられる社会を目指して、さまざまな取り組みを推進しており、その中核となる制度の一つが「「ストレスチェック」制度」です。
「ストレスチェック」制度は2015年12月から、従業員50人以上の事業所を対象に義務化されていましたが、2025年度中を目途に、従業員数に関わらずすべての事業所に義務化される方針が示されました。
この変更により、これまで以上に多くの企業が「ストレスチェック」制度と向き合うことになります。
本記事では、「「ストレスチェック」制度」の概要、義務化の背景、そして企業が取り組むべきポイントについて詳しく解説します。
「ストレスチェック」とは
「ストレスチェック」とは、従業員がストレスに関する質問票に回答し、その結果を集計・分析することで、職場におけるストレスの状態を把握するための検査です。企業はこの結果を元に、従業員のメンタルヘルス対策や職場環境の改善につなげることができます。
「ストレスチェック」制度
「「ストレスチェック」制度」とは、労働安全衛生法に基づき、企業が従業員に対し「ストレスチェック」を行う制度です。
企業は、従来の「ストレスチェック」を行うことで、従業員が自身のストレス状態に気づく機会を提供するとともに、企業が職場環境におけるストレス要因を把握し、改善につなげることを目的としています。
「ストレスチェック」制度拡大の背景
厚生労働省がまとめた、労働安全調査では、「強いストレスを感じている」と答えた労働者の割合は、仕事の量(39.4%)、仕事の質(27.3%)、対人関係(29.6%)、役割や地位の変化(15.8%)となっています。
参考:厚生労働省「2024年 労働安全衛生調査」第17表
仕事や職業生活におけるストレスの増加が社会的な問題となっていることが、「ストレスチェック」が義務化された背景にあるといえます。
「ストレスチェック」の対象者
厚生労働は、「ストレスチェック」の対象者を以下のように定めています。
事業者が「ストレスチェック」を行うべき「常時使用する労働者」とは、次
の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労
働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上で
ある者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている
者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事
する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
引用:厚生労働省「「ストレスチェック」実施義務対象」48P
- 期間の定めのない労働契約(正社員など)を締結している者
- 1年以上の雇用が見込まれる有期契約労働者(契約社員・パート・アルバイトなど)
- 1週間の労働時間が通常の労働者の4分の3以上である者
このように、「ストレスチェック」対象者は、契約社員やパート・アルバイトであっても、1年以上の雇用見込みがあり、労働時間が一定基準を満たしていれば対象者に該当します。
また以下のような場合は、「ストレスチェック」の対象外となることがあります。
- 期間の定めのある契約で、雇用期間が1年未満の労働者
- 1週間の労働時間が通常の労働者の4分の3未満のパート・アルバイト
ただし、企業が自主的に対象範囲を広げることは可能であり、上記に該当しない労働者にも「ストレスチェック」を実施することは可能です。
「ストレスチェック」でわかること
「ストレスチェック」の質問票を通して従業員のストレス状態や職場環境の問題点を可視化し、職場環境改善に役立てることができます。
従業員一人ひとりの心の状態を丁寧に見ていくだけでなく、組織全体の傾向や課題を明らかにすることができます。具体的には、下記のような情報を得ることが期待できます。
個人のストレスレベル
従業員一人ひとりが、現在の仕事や職場環境において、どの程度のストレスを感じているかを把握できます。
例えば、仕事量、人間関係、職場の環境など、様々な要因によって変化する可能性があります。「ストレスチェック」を通して、従業員自身が自覚していない潜在的なストレス要因に気づくことができる点も重要です。
組織全体のストレス傾向
組織全体、あるいは特定の部署や職種において、どのようなストレス要因が共通して存在しているのかを分析することができます。
例えば、特定の部署で長時間労働が常態化している、あるいは、職務内容と求められる責任のバランスが取れていないなどの問題点が明らかになることがあります。
高ストレス者の早期発見
「ストレスチェック」は、高ストレスを抱えている方を早期に発見し、重症化する前に適切なサポートに繋げるための有効な手段となります。
個別に結果を通知することで、自身では気づきにくいストレス状態に気づくきっかけになるだけでなく、医師による面接指導を受けることで、より専門的なアドバイスやケアを受けることが可能になります。

「ストレスチェック」の結果の活用
「ストレスチェック」の情報を活用することで、企業は以下のような職場環境の改善や従業員へのサポート体制を構築することが可能となります。
業務負担の軽減
ストレスの原因となっている業務内容を把握し、業務分担の見直しや業務効率化など、従業員の負担軽減に繋がる対策を検討できます。
コミュニケーションの円滑化
職場内の人間関係やコミュニケーション状況を把握することで、チームビルディングやコミュニケーション研修などを実施し、風通しの良い職場づくりを進めることができます。
メンタルヘルスに関する理解を深める
ストレスへの対処法やメンタルヘルスに関する知識を深める研修などを実施することで、従業員一人ひとりが自身の心の健康と向き合い、セルフケアのスキルを高めることができるようサポートできます。
中小企業における「ストレスチェック」制度導入のポイント
従業員50人未満の中小企業では、産業医を選任していないケースも多いですが、「ストレスチェック」の実施には医師の協力が不可欠です。そのため、「ストレスチェック」制度の導入は負担が大きいと感じるかもしれません。
しかし、外部機関のサポートなどを活用することで、スムーズに導入を進めることができます。外部機関を選ぶ際には、費用やサービス内容、実績などを比較検討することが大切です。
厚生労働省版「「ストレスチェック」実施プログラム」
厚生労働省は、「ストレスチェック」制度が事業者にて円滑に導入できるよう、「ストレスチェック」の受検、「ストレスチェック」の結果出力、集団分析等が出来る「厚生労働省版「ストレスチェック」実施プログラム」を無料で配布しています。
詳しくは⇒厚生労働省版「「ストレスチェック」実施プログラム」ダウンロードサイト
「ストレスチェック」の実施手順
「ストレスチェック」の実施手順は、以下の通りです。
1.実施時期の決定
実施時期は、年度初めや定期昇給の時期などが一般的ですが、企業の状況に合わせて柔軟に設定できます。
2.実施方法の決定
質問項目は、厚生労働省が定めた基準に基づいて作成されます。質問票を配布して回収する方法や、オンラインで回答する方法などがあります。
従業員は、職場における人間関係や仕事内容、職場の環境などに関する質問に回答します。
3.従業員への周知・説明
「ストレスチェック」の目的や内容、個人情報の保護について、事前に十分に説明を行い、従業員の理解と協力を得ることが重要です。
4.質問票の配布・回収
回答結果は、個別に従業員へ通知されます。ストレス状態やその程度などが記載されており、プライバシーに配慮し、個人が特定できないように回答者名ではなく、IDなどを記入する形式が一般的です。
5.結果の集計・分析
「ストレスチェック」は、個人の結果を見るだけでなく、組織全体の傾向を分析することで、より効果的な職場環境改善に繋げることができます。
集団分析では、部署や職種、年齢層など、様々な切り口で「ストレスチェック」の結果を分析することで、特定の部署に高ストレス者が多かったり、特定の年齢層で、共通のストレス要因が見られるなど、組織全体の課題や傾向を把握することができます。集計・分析は、外部機関に委託するのが一般的です。
6.結果に基づいた対応
集団分析結果に基づき、ストレス要因として多く挙げられた項目について、具体的な改善策を検討します。
例えば、長時間労働が問題となっている場合は、業務の効率化や休暇取得の推奨などに取り組みます。
7.医師による面接指導
「ストレスチェック」の結果、高ストレス者として医師の面接指導が必要と判断された従業員は、医師による面接指導を受けることができます。
面接指導では、ストレスの原因や状況に応じたアドバイスや、必要があれば医療機関の紹介などが行われます。
「ストレスチェック」制度導入における注意点
「ストレスチェック」の結果が、人事評価や不利益な扱いなどに利用されるのではないかという不安を抱く従業員もいるかもしれません。
企業は、「ストレスチェック」の目的や内容、個人情報の保護について、事前に丁寧に説明し、従業員が安心して受検できる環境づくりに努める必要があります。
また、「ストレスチェック」の結果は、個人情報であり、適切に管理することが求められます。企業は、結果の保管方法やアクセス制限などを明確化し、漏洩や不正アクセスの防止など、セキュリティ対策を徹底する必要があります。
そして、「ストレスチェック」を実施するだけでは、従業員のメンタルヘルス対策として十分とは言えません。
企業は、結果に基づいて、職場環境の改善や従業員へのサポートなどの具体的な対応策を講じることが重要です。
メンタルヘルス対策に有効な取り組み
「ストレスチェック」の実施をきっかけに、従業員のメンタルヘルス不調の兆候を早期に発見するだけでなく、従業員のメンタルヘルス不調を予防するため、企業は積極的にメンタルヘルス対策に取り組む必要があります。
相談しやすい環境づくり
従業員が安心して悩みや不安を相談できるよう、社内に相談窓口を設置したり、外部の相談窓口を導入したりすることが大切です。
相談窓口は、プライバシーに配慮した環境で相談できる体制を整え、面談だけでなく、電話やメールなど、従業員が相談しやすい方法を選択できるようにすると良いでしょう。
外部相談窓口の活用
社内に相談窓口を設置することが難しい場合、外部の相談窓口と契約することで、より専門的なアドバイスやカウンセリングを受けることができる体制を整えることができます。
外部相談窓口では、メンタルヘルスの専門家である精神科医や臨床心理士などに相談できるだけでなく、法的トラブルやハラスメント問題など、社内では相談しにくい内容についても相談することができます。
オンラインカウンセリングの活用
近年、企業が福利厚生として導入するケースが増えているオンラインカウンセリングは、従業員が場所や時間に縛られずに、専門のカウンセラーに相談できるため、対面でのカウンセリングに比べて利用しやすいという利点があります。
特に、プライバシーを重視する従業員にとって、オンラインでの相談は心理的なハードルを下げる効果もあります。
従業員のメンタルヘルスを支援するための新たな手段として、オンラインカウンセリングを積極的に取り入れていく企業は今後も増えていくとみられます。

まとめ
「ストレスチェック」の義務化は従業員のメンタルヘルスを守り、生産性の高い、働きがいのある職場環境を実現するために重要な取り組みです。
従業員を守ることは、企業のパフォーマンス向上にもつながりますので、しっかりと準備をして、前向きに取り組んでいきましょう。
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宮園 さとみ Satomi MIYAZONO
公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント
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佐藤 汐 Shiori SATO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
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現在も子育て支援を行っており、主に未就学児の養育者の方々の相談を受けております。また企業で休職者の相談に乗った経験もありますので、幅広い対応が可能です。心揺らぐことなどがありましたらお話を聞かせてください。

芹野 まり Mari SERINO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
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