心と体の健康の悩み

アダルトチルドレン(AC)とは?特徴とタイプ、カウンセリングで得られる効果を徹底解説

現代社会において、多くの社会人が漠然とした生きづらさを感じています。

その中には、自分が「アダルトチルドレン(Adult Children, AC)」であるかもしれないと感じている方もいるかもしれません。

そこで今回の記事では、アダルトチルドレンの特徴と、アダルトチルドレンが感じやすい生きづらさを軽減することが期待できる、カウンセリングの効果について詳しく解説します。

アダルトチルドレンとは

アダルトチルドレンとは、当初はアルコール依存症の親のもとで育ち、大人になった人を指す言葉でした。

しかし、その意味合いは次第に広がりをみせ、幼少期に家庭内の問題や、親のアルコール依存症、虐待、無関心などを経験し、その影響が成人後も続く人たちをアダルトチルドレンと呼ぶようになりました。

また、アダルトチルドレンは診断名ではなく、心理的な影響や行動パターンを説明するために使われる用語であることにも留意する必要があります。

アダルトチルドレンの原因

アダルトチルドレンが抱える問題の背景には、幼少期の家庭環境や親子関係が深く関わっています。

この章では、アダルトチルドレンの原因として広く認識されている、4つの要因について詳しく解説します。

  1. アルコール依存症の親
  2. 過剰な期待とコントロール
  3. 家庭内での役割の逆転
  4. 家族間でのコミュニケーションの欠如

1つずつ順番にみていきましょう。

1.アルコール依存症の親

アダルトチルドレンという言葉は、もともとアルコール依存症の親のもとで育った子どもたちを指して使われていました。

アルコール依存症の親は家庭内での役割を果たすことが困難であり、子どもたちは不安定な環境で育ちます。このような家庭で育つと、子どもたちは親の行動や言動に適応しようとするあまり、自分の感情や欲求を抑え込むことが多くなります。

結果として、成人後もこの影響が続き、アダルトチルドレンとしての特徴を形成する要因となると考えられています。

2.過剰な期待とコントロール

親から過剰な期待や厳しいコントロールを受けた子どもは、アダルトチルドレンになるリスクがあります。

「過干渉」によって、自分のやりたいことができず、自己価値感が損なわれるストレスを抱えることが多くなります。こうした子どもは、親の期待に応えようとするあまり、自分の本当の感情や欲求を抑え込み、他者の期待に応えることが習慣化します。

このような環境で育つと、成人後も自分の意志や欲求を優先できず、「過剰な責任感」や「自己否定」が現れることが多いと考えられています。

3. 家庭内での役割の逆転

家庭内での役割が逆転し、子どもが親や兄弟姉妹の面倒を見なければならない状況も、アダルトチルドレンの要因の一つです。

例えば、親が精神的に不安定であったり、慢性疾患を抱えている場合などは、子どもが自然と家族を支える役割を担うことがあります。

子どもは自分の感情や欲求を後回しにし、家族の面倒を優先することになります。このような状況を長期間経験することで自己犠牲的な行動が習慣化し、成人後も自己の感情や欲求を抑える傾向が続くとされています。

4.家族間でのコミュニケーションの欠如

家庭内でのコミュニケーションが不十分であったり、親が感情表現を避けたりする環境も、アダルトチルドレンの要因のひとつとして考えることができます。

親が自分の感情を表現しない場合、子どもも同様に感情を抑え込むようになり、自分の気持ちを他者に伝えることに困難さを感じるでしょう。

この結果、成長しても他者との関係において感情を表現することが難しくなり、アダルトチルドレンとしての特徴が現れると考えられています。

アダルトチルドレンを自覚することは難しい

メンタルヘルスに関する問題全般に共通する傾向ですが、アダルトチルドレンを自覚することは難しいとされています。

中には、アダルトチルドレンという概念に偶然出会い、自身の特徴が該当していることに気づくこともあります。しかし、自身がアダルトチルドレンであると認めることへの恐れや不安が、認識を妨げるケースもあります。

それでは、アダルトチルドレンの特徴とはどのようなものでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

アダルトチルドレンの心理的な特徴

成人後のアダルトチルドレンの心理的な13の特徴についてみていきましょう。

1 何が正常かを推測する(「これでいい」との確信が持てない)
2 物事を最初から最後までやり遂げることが困難である
3 本当のことを言った方が楽な時でも嘘をつく
4 情け容赦なく自分に批判を下す
5 楽しむことがなかなかできない
6 まじめすぎる
7 親密な関係を持つことが大変難しい
8 自分にコントロールできないと思われる変化に過剰に反応する
9 他人からの肯定や受け入れを常に求める
10 他品は自分と違うといつも考えている
11 常に責任をとりすぎるか,責任をとらなすぎるかである
12 過剰に忠実である。無価値なものと分かっていてもこだわり続ける
13 衝動的である。他の行動が可能であると考えずに一つのことに自らを閉じ込める

《参考》
(アダルト・チルドレンと家族: 心のなかの子どもを癒す. 斎藤 学, 学陽書房, 1996, 95p.)

アダルトチルドレン6つのタイプ

アダルトチルドレンは、その特徴からいくつかのタイプに分類されることがあります。ここでは、代表的な6つのタイプについて詳しく解説します。

1. 英雄:ヒーロー(Hero)

  • 家族の期待に応えようとし、自分に高い責任を課す
  • 失敗を避け、常に最高の結果を求める完璧主義の傾向がある
  • 自分の感情や欲望を抑えてでも、他者を優先する
  • 周囲に強さを見せる反面、孤独やプレッシャーを感じやすい

ヒーロータイプは家庭内で優等生として振る舞い、親や家族の期待に応えようと努力する傾向があります。このタイプは、家庭の問題を隠すために自分が成功することや、優れた成績を収めることに執着します。

また、親や周囲の人々に認められることで、自分の存在価値を確認しようとしますが、その裏には常に失敗を恐れる心理が存在しています。

2.いけにえ:スケープゴート(Scapegoat)

  • 親や周囲に対して反抗することで、自分の存在を主張する
  • 問題を引き起こすことで、家族内の緊張を緩和する役割を担う
  • 常に自分が悪いと感じ、自己否定的な思考が強い
  • 学校や職場など、社会的な場面での適応が難しい場合がある

スケープゴートタイプは、家庭内で問題児として扱われることが一般的に多く、ヒーロータイプとは対極にあるといえます。スケープゴートタイプのアダルトチルドレンは、家族のストレスや不満のはけ口として、しばしば非難や攻撃を一手に引き受ける役割を担います。

反抗的な態度や行動をとることで、家庭内の緊張を和らげる役割を果たしますが、その反面、自己価値感が低くなり、自己破壊的な行動に陥ることもあります。

3.いない子:ロストワン(Lost One)

  • 家族や周囲から孤立し、独りでいることを好む
  • 自己を表現することが苦手で、内向的な性格が多い
  • 他者と深い関係を築くことを避ける
  • 自分の意見や感情を伝えることが難しい

ロストワンタイプのアダルトチルドレンは、家庭内の問題から逃れるために自己防衛として、できるだけ目立たないようにする傾向があります。

目立たない存在になることで孤立する場面が多くなり、家族の中でも一人でいる場面が多いとされています。

4.世話役:ケアテイカー(Care taker)

  • 自分よりも他者の世話を優先する
  • 自分を犠牲にしてでも、家族のニーズに応える
  • 他者からの依存を受け入れることで、自己価値を感じる
  • 自分自身の感情や健康を疎かにすることが多い

ケアテイカータイプは、家族の世話をする役割を担い、親や兄弟姉妹の世話をすることで、自分の価値を見出す傾向があります。

常に他者を優先し、自分の欲求や感情を後回しにするため、結果として自己犠牲的な行動をとる場面が多いとされています。

5.道化師:ピエロ(Clown)

  • 家族の緊張を和らげるために、冗談やユーモアを活用する
  • 自分の本当の感情を隠し、他者を楽しませることに専念する
  • 内心では不安や孤独を感じているが、それを他者に見せない
  • 他者を笑わせることで自己価値を感じるが、内面には不安定さを抱えている

ピエロタイプは、家庭内のムードメーカーとして振る舞い、笑いやユーモアで家族の緊張を和らげようとします。

自分の感情を隠し常に明るく振舞い、他者を楽しませることに専念しますが、その裏には深い孤独感や不安が隠されています。

6.世話焼き人:イネイブラー(Enabler)

  • 家族の問題を解決しようと積極的に関わる
  • 他者の問題行動を許容し、結果的に助長することがある
  • 自分自身と他者の境界線が曖昧で、過度に他者から依存されることがある
  • 自分の生活や感情を犠牲にしてでも、他者を支援しようとする

イネイブラータイプは、世話役と訳されるケアテイカーと同じように、献身的に尽くす傾向がありますが、家族が抱える問題を助長するような支援を行う場合があるという点が異なります。

問題を抱える家族を助けようと懸命に行った支援などが、さらに問題を深刻にする傾向があります。

あくまでも上記で紹介した6つのタイプは代表的な例であり、すべてのアダルトチルドレンが必ずしもこれらのタイプに当てはまるわけではなく、複数のタイプの特徴を併せ持つこともあります。

アダルトチルドレンとして自覚することが難しい場合や、どのタイプに当てはまるか分からない場合は、専門のカウンセリングや支援を受けることが一つの選択肢となるでしょう。

カウンセリングを通じて、自分自身を深く理解し、適切なサポートを受けることで、より健康的な生活を築くことが可能です。

カウンセリングの重要性と効果

アダルトチルドレンとしての特徴を持つ人々が直面する心理的な問題は、日常生活において大きな負担となり得ます。

自己批判や過剰な責任感、密接な関係を築くことの困難さなど、これらの問題は個々の行動や思考パターンに深く影響を及ぼします。これらの問題を解決するためには、自分一人の努力だけでは限界があることが多いでしょう。

また、生きづらさの原因が自分でもわからないという状況が、さらに不安を引き起こすこともあるかもしれません。

心理的な問題に対しては、カウンセリングが重要な役割を果たします。カウンセリングを通じて、アダルトチルドレンとしての問題に取り組むことは、自分の行動パターンや思考の根本にある原因を理解し、自己改善を目指すための有効な手段となります。

1.自己理解の促進

カウンセリングを受けることで、自己理解が深まります。カウンセラーとの対話を通じて、子どものころの経験が、現在の自分にどのように影響しているのかを掘り下げることができます。

また、自分自身の強みや弱み、価値観を再認識し、より適切な対処法や解決策を見つける助けになります。カウンセリングは、自分の内面を見つめ直し、自己成長を促す貴重な機会となるでしょう。

2. 効果的な対処法を探る

アダルトチルドレンの多くは、無意識のうちに効果が期待できない対処手段を選んでしまう傾向があります。

例えば、ストレスや不安に対処するためにアルコールや過剰な仕事に依存することがあるかもしれません。しかし、これらの方法は一時的な解決策に過ぎず、長期的には問題を根本的に解決するものではありません。

カウンセリングでは、こうした効果が期待できない対処法を見直し、より健康的で実効性のある対処法をカウンセラーと探ることができます。

3. 自己肯定感の向上

アダルトチルドレンは子どものころの家庭環境や経験から、自己肯定感が低い傾向があります。

自己肯定感の低さは、自己批判的な思考や他者からの評価に依存しがちな行動パターンを引き起こし、人生の様々な場面で困難を感じる原因となります。

カウンセリングでは、カウンセラーがアダルトチルドレンの相談者と共に、過去の経験や感情を丁寧に探り、その根本的な原因に向き合っていきます。

4.健全な人間関係の構築

アダルトチルドレンは、他者との密接な関係を築くことが困難である場合が多く、子どものころの経験が、他者への信頼感や愛着形成に影響を与えていることが原因の一つであると考えられています。

カウンセリングを通じて、自分が望む人間関係を明確にすることで、他者とのコミュニケーションが円滑になることが期待できます。

カウンセリングはハードルが高いと感じているあなたへ

カウンセリングは、アダルトチルドレンがより良い人生を歩むための有力なサポートとなります。

カウンセリングに対して「ハードルが高い」と感じることがあるかもしれません。しかし実際には、カウンセリングは誰でも始めることができ、気軽に受けることができます。

オンラインカウンセリングなら予約も簡単

もし自分がアダルトチルドレンかもしれないと感じている場合は、まずはカウンセリングを受けることを検討してみるのもよいでしょう。

特に、オンラインカウンセリングは、忙しい日常の中でも予約が簡単で、移動の手間を省くことができるため、多忙な方でも気軽に始めやすいのでおすすめです。

オンラインカウンセリングは、自宅からリラックスしてカウンセリングを受けられるので、初めての方でも安心してはじめることができるでしょう。

継続的なカウンセリングが有用

カウンセリングは決して一朝一夕に効果が現れるものではありませんが、継続的に取り組むことで効果を得ることができます。

例えば、週に一度のペースで継続的にカウンセリングを受けることで、次第に自己理解が深まり、過去の経験や感情を整理する時間を持つことができるでしょう。

また、継続的なカウンセリングは、感情の変化や悩みの進行状況を追跡し、必要に応じてアプローチを調整することができるため、より適切な対策が可能です。

長期的な視点で取り組むカウンセリング

カウンセリングの効果は、短期間での成果を期待するのではなく、長期的な視点で取り組むことでより実感できるものです。

継続的にカウンセリングを受けることで、心の奥深くにある問題に対処し、着実に改善への道を歩むことができます。

自分自身のペースで、無理なく続けていくことが、より良い結果を生む鍵となるでしょう。

まとめ

アダルトチルドレンとしての悩みや問題に対処するためには、まず自分自身を理解し、適切なサポートを受けることが重要です。

カウンセリングは、その一歩を踏み出すための大きな助けとなります。自己理解を深め、健全な対処方法を学び、より良い人間関係を築くために、カウンセリングを積極的に利用してみてください。

カウンセリングを通じて、自分にとっての幸福や満足を見つける手助けをしてもらうことで、アダルトチルドレンとしての悩みや困難を乗り越え、より豊かな人生を築くことができるようになります。

過去の経験はあなたの一部かもしれません。しかし、それがあなたのすべてではありません。焦らず、少しずつ自分のペースで進んでいくことが大切です。

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メザニン登録カウンセラー
佐々木 隆嘉 Takayoshi SASAKI
臨床心理士、公認心理師

会計事務所での勤務など、様々な社会人経験を経たのち大学院に入学。修了後、医療・教育領域をメインに業務にあたっています。

【メッセージ】
話をしても何も解決しないかもしれない、話すこと自体がつらい、カウンセラーと合わないかもしれないなど、不安に感じることもあるかもしれませんが、一歩踏み出してご相談いただければと思っています。

あまり堅苦しくならず、ただ愚痴を話してまったりする時間にしていただいても大丈夫です。