心と体の健康の悩み

コミュニケーション障害の特徴や原因、治療法について解説

コミュニケーション障害とは、話すことや聞くことがうまくできないために、他人との意思疎通が難しくなる状態のことです。この障害には、いろいろな種類や症状があります。この記事では、コミュニケーション障害の特徴や治療法、自分でできる対処法についてわかりやすくご紹介します。

コミュニケーション障害とは

コミュニケーション障害(現在の診断名では「社会的コミュニケーション症」)というのは、言葉やジェスチャーを使って他人とスムーズにやり取りするのが難しい状態のことです。

たとえば、話している途中で何を言いたかったのか忘れてしまったり、相手の言っていることがうまく理解できなかったりすることがあります。この障害は、子どもの頃から持っている場合もあれば、大人になってから気づくこともあります。

「コミュ障」はコミュニケーション障害ではない

最近よく耳にする「コミュ障」とは、コミュニケーションが苦手な人を揶揄するために使われるネットスラング(俗語)で、初対面の人と話すのが緊張してうまく話せなかったり、雑談が苦手で会話が続かない人のことを「コミュ障」と呼びます。

自分自身を謙遜して使う場合もあれば、他人を軽く揶揄するために使われることもありますが、コミュ障は性格や性質を表す言葉で、医学的な症状のあるコミュニケーション障害とは異なります。

コミュニケーション障害の症状

コミュニケーション障害の症状は人によってさまざまですが、言葉が詰まったり、話している途中で何を言いたかったのか忘れてしまったりすると言った「話すことが難しくなる症状」や相手の話をうまく理解できなかったり、聞き漏らしたりする「聞くことが難しい症状」があります。

他には、身振りや表情、目線などの相手の非言語的なサインを読み取るのが苦手だったり、ユーモアや喩え話が理解しにくかったり、挨拶の仕方や会話のタイミングをつかむのが難しいなどと言った症状もあります。次の章では、その種類や特徴を細かく紹介します。

コミュニケーション障害の種類と特徴

コミュニケーション障害にはいくつかの種類があります。それぞれの症状や特徴について見ていきましょう。

1. 言語障害 / 言語症

言語障害は、言葉を使って話すことや理解すること、または字を書くことに困難が生じる状態です。具体的には、以下のような特徴があります。

◆語彙が限られている:使える言葉の数が少なく、表現が単調になることがあります。
◆文法の誤りが多い:主語と述語が上手く使えないなど、正しい文法で話すことが難しいことがあります。
◆会話の流れがつかめない:話の内容が飛び飛びになったり、話の途中で何を言いたかったのか忘れてしまうことがあります。

2. 吃音(きつおん)

吃音は「児童期発音流暢症」とも呼ばれ、子供のころに発症することが多いですが、大人になっても症状が続く場合があります。主に、言葉がつかえるような状態で、スムーズに話すことが難しいです。吃音には以下のような特徴があります。

◆言葉が詰まる:言葉をスムーズに発することができず、言葉が不自然に途切れたり、最初の言葉が出にくかったりすることがあります。
◆言葉を繰り返す:言葉の一部分を何度も繰り返してしまうことがあります。
◆身体の緊張:言葉を発するときに身体が緊張してしまう。

3. 語音障害 / 語音症

語音障害は「特異的会話構音障害」とも呼ばれ、身体や神経に障害が無いにもかかわらず、声を出して言葉を正確に組み立てることが難しい状態です。以下のような特徴が見られます。

◆発音が不明瞭:言葉がはっきりしないため、相手にうまく伝わらないことがあります。
◆特定の音を発音できない:特定の音や言葉を正確に発音することが難しいことがあります。

語音症は、基本的には12歳ごろまでにはすべての語音を獲得できるようになります。また、適切な治療を受けることで症状は改善し、会話の困難は減少すると減っていくと言われています。

4. 社会的(語用論的)コミュニケーション障害

社会的コミュニケーション障害は、言葉の意味は理解できていても、話し相手や状況に応じたコミュニケーションが難しい症状です。具体的には、以下のような特徴があります。

◆察することができない:周囲の状況や相手の状況を考えることが難しい。
◆非言語的なサインが読めない:相手の表情やジェスチャーを読み取ることが難しい。
◆ユーモアや比喩が分からない:相手のユーモアや慣用句を字義通りに受け取ってしまう。
◆会話のタイミングがつかめない:話すタイミングや会話の進め方がわからないことがある。

コミュニケーションに悩みが生じてしまうその他の疾患

人とコミュニケーションを取るのが難しい場合、他の疾患や別の症状が起因している可能性もあります。

ASD(自閉症スペクトラム症)

社会的なコミュニケーションや相互作用に難しさを抱える特徴があり、非言語的なコミュニケーション(目線やジェスチャー)を理解するのが難しく、他者の感情や意図を読み取るのに苦労することがあります。

また、特定の興味や活動に強いこだわりを持つことがあり、それが人とのコミュニケーションを築く上での障壁となることもあります。

ADHD(注意欠陥多動症)

注意力の持続が難しいことが多く、多動性や衝動性の特徴を持つ症状です。これにより、一方的に話を続けてしまったり、他人の話を最後まで聞くことが難しかったりします。

同じ場所や空間に同じ姿勢で居続けることがことが難しい場合もあり、これらの症状が、人とのコミュニケーションに困難を感じさせる可能性があります。

LD・SLD(学習障害)

LD(学習障害)やSLD(限局性学習症)は、特定の学習領域において困難を抱える症状です。例えば、読み書きや計算において著しい困難を経験することがあります。学生の頃は症状が目立たず、社会人になってから学習障害に気付くケースもあります。

学習障害を持つ方は、仕事のマニュアルを読むことが困難だったり、メール等の文面でのコミュニケ―ションが難しかったり、メモを取るのに時間がかかってしまったりする場合があります。

知的障害

知的障害は、知的機能と適応行動における制限を特徴とする障害です。これにより、コミュニケーションスキルが制限され、自己表現や相手の理解が難しい場合があります。

不安障害

不安障害は、過度な不安や恐怖感を特徴とする精神的な症状です。過剰な不安や心配が日常生活や仕事にまで広がる症状です。このため、落ち着かなくなったり、頭痛や疲労感を感じることが増え、生活に支障をきたすことがあります。

また、人前で話す際には特に強い不安と緊張を感じ、混乱することもあります。こういった症状が人とのコミュニケーションに困難を感じさせる可能性があります。

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、長い時間かけて形成された特定の行動や考え方のパターンがあって、それが自分や他人との関係に影響を与える症状です。

たとえば、境界性パーソナリティ障害では、感情が不安定になりやすく、他人に強く依存することがあります。このため、他人との関係がとても複雑で困難になります。自分に自信が持てず、そのために他人に対して攻撃的になってしまうこともあり、これらが人とのコミュニケーションにおいて大きな問題を抱える場合があります。

対人恐怖症

対人恐怖症は、人前に出ることや他人と接することに対して強い恐怖を感じる症状です。これにより、人前で話すことや、新しい人と出会うことが極度に苦手で、日常生活や人とのコミュニケーションに支障をきたすことがあります。

コミュニケーション障害の原因

コミュニケーション障害の原因は、まだはっきりとは解明されていません。しかし、言語症や吃音症の場合は、遺伝的要素が大きいと言われています。

また、社会的コミュニケーション症の人は、家族の中に発達障害の人やコミュニケーション障害の人が居る家庭に多く認められていると言われており、原因は人によって異なります。

コミュニケーション障害の治療法

コミュニケーション障害の診断は専門の医師や心理士によって行われ、治療法は症状や原因によって異なってきます。この章では基本的な治療法をご紹介します。

言語療法

専門の言語聴覚士により、舌や唇の使い方、発声や呼吸の仕方を訓練し、文章の音読等を通じて言葉の使い方や発音の改善を目指します。定期的なセッションを通じて、コミュニケーションスキルやQOLを向上させます。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)

人と関わる際の挨拶や、コミュニケーションの取り方などを認知行動療法の手法を取り入れながら、訓練していきます。これにより、相手の気持ちを理解したり、自分の気持ちを上手く伝えられるようになっていきます。

コミュニケーション障害を持つ方が自分でできる対処法

コミュニケーション障害を持つ方は、仕事の面でも多くの悩みを抱えることが考えられます。ここでは、コミュニケーションをスムーズに行うための工夫や対処法を紹介します。人とのコミュニケーションにお悩みの方は参考にしてみてください。

1.自分の印象を工夫する

コミュニケーションは、言葉に限らず、話し方や姿勢や声のトーンでも相手に与える印象を改善することができます。

例えば、職場での会議中、意見を求められたときに戸惑うことがあります。その際、まず深呼吸をして姿勢を整え、相手の目を見て話すことで、自信があるように見せることができます。これだけで相手に対する印象が良くなり、自分の意見も受け入れやすくなります。

さらに、他の人からのお誘いを断る場合などはただ断るだけではなくだけではではなく、先にお礼を伝えた上で断るようにすることで、相手に対する配慮を示しつつ、自分の状況も伝えることができます。

このように、自分の印象に少し気を配るだけで、コミュニケーションがスムーズになったり、相手との関係も良好になる可能性があります。

2.マナーをリストアップする

挨拶の仕方や、話の聞き方など、人とのコミュニケーションにおけるマナーが分からなくなってしまう場合があります。そうすると、そのことばかり考えてしまい、相手の話に集中できなくなったり、不安で相手の顔を見れなくなってしまう場合があります。

そうならないためにも、マナーについての自分なりの決めごとをリストアップしておくと良いでしょう。例えば、話を聞く時の顔の向きや、相槌のタイミングなど、ある程度決めておくことで、コミュニケーションに迷わなくなり、不安も軽減されるでしょう。

3.無理はしない

コミュニケーションを取ろうとすると、人に気を遣い過ぎて疲れてしまい、その結果余計にコミュニケーションが苦手になってしまう場合があります。

そんな時は無理をしないことが大切です。例えば聞き役に回ってみるのも有効です。人とのコミュニケーションは、自分から話すことがすべてではありません。相手の話に耳を傾けるだけでも、十分なコミュニケーションになる場合もあります。

むしろ、自分の話をしっかり聞いてくれる相手に対しては、印象も良くなり、信頼関係も築きやすくなりますので、話すことが見つからない場合には、聞き役に回ってみるのも良いかもしれません。

また、人付き合いが辛いと感じたら、距離を取ったり、時間を置いたりして、自分のペースで無理なく付き合うようにしましょう。

カウンセラーなどの専門家に相談してみる

自分一人の力では対処が難しかったり、不安が解消されない場合には、カウンセラーなどの専門家に相談してみるのも大変有効な手段と言えます。

カウンセリングでは、専門のカウンセラーがじっくりと話を聞き、コミュニケーション障害について理解を深める手助けをします。また、カウンセリングを通じて、コミュニケーションの不安や恐怖を軽減する方法を学ぶことができます。

また、継続的にカウンセリングを受けることで、いつでも話を聴いてくれる人がいるという安心感を持つことができます。カウンセラーとのコミュニケーションであるカウンセリングを、週に1回など継続的に続けていくことは、自信にもつながるでしょう。

オンラインカウンセリング

オンラインカウンセリングはインターネットに繋がる環境があれば、全国どこからでも利用することができます。対人恐怖症かもと感じたら、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーに不安や悩みを相談してみるのも非常に有効です。

オンラインカウンセリングサービスは、比較的遅い時間帯でも対応している場合が多いので、自宅から辛い気持ちを相談することができますので、自分の気持ちを整理したい時は利用してみましょう。

まとめ

コミュニケーション障害は、日常生活や仕事での人間関係に大きな影響を与えることがあります。とは言え、一朝一夕で改善するようなものでもありません。

自分や家族がコミュニケーションに困難を感じている場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。まずは無理をせず、自分に合ったペースで改善を目指していきましょう。

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メザニン登録カウンセラー
佐々木 隆嘉 Takayoshi SASAKI
臨床心理士、公認心理師

会計事務所での勤務など、様々な社会人経験を経たのち大学院に入学。修了後、医療・教育領域をメインに業務にあたっています。

【メッセージ】
話をしても何も解決しないかもしれない、話すこと自体がつらい、カウンセラーと合わないかもしれないなど、不安に感じることもあるかもしれませんが、一歩踏み出してご相談いただければと思っています。

あまり堅苦しくならず、ただ愚痴を話してまったりする時間にしていただいても大丈夫です。