発達障害の可能性がある部下 疲れた時に試したい対処法や接し方を特性別に紹介


「何度も同じミスをするけど、新入社員だから仕方ないのかな」
「それにしても遅刻が多いし、報連相も足りない気がする」
一緒に働く部下や従業員に対して、こんな風に感じたことはないでしょうか。

もし、部下やチームメンバーに、このような傾向が繰り返し見られるなら、それは彼らの「やる気がない」からではなく、もしかしたら発達障害の特性が関係している可能性があります。

発達障害という言葉を耳にしたことがあっても、身近にその特性を持つ人物がいない環境に勤務していれば、知識を身につける機会は少ないともいえます。

発達障害という言葉は知っていても、実際に身近にその特性を持つ人がいないと、どう接したらいいか戸惑ってしまうのは当然です。不適切な対応は、部下本人のストレスになるだけでなく、上司や教育係の先輩の負担を増やすことにもつながります。。

この記事では、発達障害の特性を持つ部下のマネジメントに悩む上司や教育係の方に向けて、具体的な接し方や対応のヒントを、特性別にわかりやすく解説します。

発達障害とは?まず知っておきたい基礎知識

発達障害は、生まれつきの脳機能の特性によって、行動や情緒のコントロール、コミュニケーションに困難が生じるものです。成長とともに特性に気づく人もいれば、社会に出てから仕事の困難に直面し、初めて診断を受ける人も少なくありません。

特に仕事で影響が出やすいとされるのは、主に以下の2つです。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDは、注意力や集中力の欠如、衝動性、多動性などの特性を持つ発達障害です。

業務の優先順位付けやタスク管理が苦手なため、「仕事がなかなか進まない」「締め切りに間に合わない」といった、仕事や日常生活においての問題が浮き彫りになることがあります。

また、仕事でのタスク管理や、集中力の維持などが困難になり、パフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。

AD(学習障害)

AD(学習障害)は、「読む」「書く」「計算する」といった特定の能力の習得が苦手な特性です。例えば、読み間違いや書き間違いが多い、メール作成に極端に時間がかかるなど、学習において困難を抱える障害です。

そのため仕事での新しい知識やスキルの習得、情報の処理や理解、読み書きなどに困難を感じることがあります。

【特性別】発達障害の部下への具体的な接し方とマネジメント術

ADHDとADに共通していることは、最初から発達障害の特性だと判断することは難しく、ある程度一緒に仕事をしていくうちに、周囲が特性に気づいていくという点です。

実際、発達障害が疑われる部下自身が無自覚なことも多く、同じミスを何度もしてしまう部下に対して、周囲は「やる気がないのではないか」「覚える気がない」という印象を抱くかもしれません。

一方で、注意を受けた部下は「自分なりに一生懸命やっているけれど、いつも怒られてしまう」と感じることで、互いの印象に食い違いが発生する可能性があるのです。

ここでは、発達障害を持つ部下や従業員に多いとされる4つの特性に対して、職場での有効な接し方やマネジメント方法を紹介していきます。

  1. ケアレスミスが多い
  2. 遅刻が多い
  3. 計算や読み書きが苦手
  4. タスク管理が苦手

順番に見ていきましょう。

1.ケアレスミスが多い・報告を忘れる部下への対処法


「言われたことをすぐに忘れてしまう」「マニュアルがあるのにミスを繰り返す」といったケースは、注意力の特性が関係しているかもしれません。

【対応のポイント】作業の見える化が有効

サポートをする側は、マニュアルにもあるし口頭でも伝えたができていない。という気持ちになりがちですが、同じミスが続くということは、そこに何かしらのつまずきがあるということですので、改めて手順を振り返れるように、チェックリストなども併用して「作業の見える化」をしてみましょう。

インターネット上で備品を発注する業務を例にあげてみます。社内のマニュアルには以下のように記されています。

備品の発注業務マニュアル

①商品と数量を選んでカートに入れる
➁納品日を確認
③住所など必要な項目を入力して確定

上記の流れをより具体的なリストにしていきます。

発注業務のマニュアルを作業リストに落とし込んだ例

業務手順 確認すること
①商品を選ぶ 型番0001
➁個数 3個
③納品日 12:00までの注文で夕方納品。12:01以降は翌日が最短納品。
④住所入力 住所の階数は管理室のある3Fを指定する
⑤入力が終わったらマネージャーにダブルチェックをしてもらう マネージャー不在の場合は〇〇さんにチェックをお願いする。〇〇さんも不在の場合は☆☆さんにお願いをする。
⑥確定ボタンを押す時は2人で行う ダブルチェック後すぐに行う。

このように、作業の見える化をしていきます。ここで重要なのは、曖昧な指示ではなく具体的な指示をしっかりと伝えるということです。

また、ToDoリストの活用も効果的で、その日の業務を朝の時点で共有しながら確認していくのもよいでしょう。

2.遅刻が多い・時間にルーズな部下への対処法


「朝の時間に間に合わない」「会議に遅れてくる」といった課題は、時間を逆算して行動するのが苦手な特性が関係している場合があります。

就業時間前までの行動に対しては、職場でサポートできる部分は少ないと思いますので、ここでは会議やミーティングなどの大事な時間に遅れないためのサポート方法を紹介します。

実際にかかった時間を把握する

まずは、なぜ遅刻につながるのかを理解していきましょう。ここでは、何にどのくらいの工数がかかるかの把握が難しい、ということが焦点になります。

発達障害を持つ部下や従業員の特性として、だいたいこのくらいかかるだろう、というザックリな見立てで動いていることが考えられるため、時間に間に合わないという結果を招きます。

時間の把握をするためにまず、だいたい10分でできそうだと思う作業を書き出してもらい、実際に行ってもらいましょう。この時、作業開始から終了までの時間を計測してみることで、予想時間と実際にかかっている時間の差を認識することができます。これは、特性を持つ側とサポートする側両方が知ることが非常に重要です。

例)10分でできそうだと思う作業
封筒印刷、書類封入、封緘、重さの計測まで

実際にかかった時間 17分
差分 7分

「この作業は10分で終わりそう」という部下の見積もりと、実際にかかった時間を一緒に計測し、時間感覚のズレを本人に自覚してもらいます。しかし、あくまでも予想と実際の差分を認識するためのものですので、上記のように17分かかるのであれば、時間を考慮した業務タスクにすることも可能になってきます。

また、重要な会議など時間に遅れると悪影響を及ぼす場合は、リマインドの回数を増やす、会議前後の業務内容にあらかじめ余裕を持たせておく、または開始予定時刻よりも15から20分早めに告知しておくことも有効です。

3.読み書きや計算が苦手な部下への対処法


「誤字脱字が多い」「書類作成に極端に時間がかかる」といった場合は、LD(学習障害)の特性が影響している可能性があります。業務の中で、このような事が続くと、覚える気がないのではないかと思うこともあります。特に、発達障害の中でもLD(学習障害)の場合は、社会人として様々な業務をしていく中で、他者よりも読み書きに時間がかかることで、初めて気付くケースが多いとされています。

苦手より得意を意識

発達障害の特性を持つ人は、やりたくないからやっていないのではなく、やっているけどできない、なぜかうまくいかないという状態を多く経験しています。

たとえば、読み書きが苦手でも話すことに長けていれば、現在では音声認識の技術も進んでいるため、会話を中心にした業務を提案してみることも効果的です。苦手な部分を克服させようとするのではなく、得意な方法に業務をシフトすることを考えましょう。

また、読み書きに問題がなくとも、ヒアリングを苦手とするケースもあります。聞いている内容と手元にある資料の内容が一致しないと、そのことばかりに気を取られてしまうため、話を聞いていないように見えるという結果になります。

話を聞くことが苦手であれば、メールやチャット機能を用いて、何度でも読み返して確認できるようにしてみましょう。

4.タスク管理や整理整頓が苦手な部下への対処法


最後に、「仕事の優先順位がつけられない」「デスクがいつも散らかっている」といった特性は、複数のタスクを同時にこなすのが苦手なADHDの特性が関係しているかもしれません。

業務タスクの共有化が有効

発達障害を持つ部下や従業員の特性として、一度に複数の作業を行うことが得意ではないため、途中で違う業務を振られた場合は対応が難しくミスにつながります。

タスク管理が苦手な部下や従業員に対しては、予想時刻をあらかじめチーム内で共有することが最も効果的です。

時間がかかるから違う人にやってもらおうとするのではなく、その都度サポートをしていきましょう。

おおよその時間をチーム全体が把握していることで、それぞれのスケジューリングもしやすくなります。

次の業務を振りたいけど、現状だともう少しかかりそうと把握できれば、サポートする側も動きやすくなるだけではなく、互いへの安心感や信頼感にもつながります。

また、明文化されていない社内ルールなどがあれば、こちらもしっかりと共有しておきましょう。

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「一人で抱え込まない」組織全体で取り組む重要性

人はそれぞれ豊かな個性を持っているため、「この人ちょっと苦手かも」という気持ちは当然起こり得ます。それは発達障害の有無に関わらず、一度苦手だなと思ってしまうと、「できるだけ関わらないようにしよう」という意識に偏りがちです。

このような感情面が優位に出てしまう場面でこそ、重要なのは、「発達障害の部下」だけを特別視するのではなく、「すべての従業員が働きやすい環境」を目指すことです。

ひとりではなく全員で取り組む

会社の基準をひとりの従業員に合わせることは非常に難しく、サポートや配慮をどこまで行えばいいかの線引きもまた、容易ではありません。

発達障害を持つ部下をサポートしていた上司が、ストレスによって適応障害になったというケースもあるでしょう。そうならないためにも、サポートする側の従業員の属人化を防ぐ必要があります。

発達障害を持つ従業員に対する配慮にのみ焦点を当てた状態ではなく、従業員それぞれに合った配慮という視点でみることが必要であり、「職場で働くすべての従業員」をサポートする体制が重要です。

また、サポートする側への「サポート体制」などの社内全体の取り組みがあればこそ、従業員それぞれが安心でき、互いを信頼し合える環境が構築されるといえます。

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まとめ

この記事では、発達障害を持つ部下や従業員への接し方や対処法、マネジメントに役立つヒントなどを紹介しました。

発達障害の特性を持つ部下とサポートをする従業員の両方が、安心して働ける職場作りをしていくことが、これからの職場環境を考える上での課題となっていくでしょう。

またサポート側の従業員が、様々な負担によってメンタル不調にならない対策も重要です。

部下や後輩がもしかしたら発達障害かもしれないと悩んでいたら、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーに相談してみるのもよいでしょう。
 

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