「他者の言動の裏を疑ってしまう」「誰にも本音を打ち明けられない」 あなたは今、そんな風に感じていませんか。
人間不信は、決して特別なものではありません。 過去の経験や環境によって、誰の心にも起こりうるものです。
しかし、人間不信が強くなると、うつ状態に陥ってしまうケースも少なくありません。今回は、うつの原因にもなりうる「人間不信」の特徴を紐解きながら、克服するための具体的なステップを紹介していきます。
人間不信からうつ状態になる
人間不信の状態が続くと、他者を信じることができなくなり、その結果として、人とのコミュニケーションに抵抗を感じるようになる場合があります。また、その傾向が強くなると、周囲の目が気になったり、自分を責めたりするようになり、うつ状態になってしまう場合があります。
人間不信は「孤独感」にも大きく関係している
人間不信を抱くと、他者と距離を取りがちになるため、他者との深い関係を築くことが難しくなり、結果として孤立感を感じることがあります。
内閣府が2023年に調査した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」によりますと、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の 割合は、20歳代から50歳代で高くなっています。
内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」図1‐3を参考に作成
孤独感が強まると、自分が周囲から切り離されていると感じ、それが「自分が他者から理解されていない」という考えに繋がることがあります。この認識はさらなる人間不信を生み、他者と関わることへの抵抗感を増幅させる恐れがあります。
人間不信のきっかけになりやすい出来事
人間不信は、ある日突然始まるというよりも、 特定の出来事をきっかけにうつ状態になることで、徐々に進行していく ことが多いと言われています。
ここでは、人間不信のきっかけとして特に起こりやすい出来事を、人間関係別に詳しく解説していきます。
1. 親しい間柄で人間不信になりやすい出来事
信頼していた相手からの裏切り
信頼していた友人から陰口を言われていた、パートナーに浮気をされたなど、信頼していた相手に裏切られる経験は人間不信に直結しやすい出来事と言えます。
嘘
長年、親友だと思っていた相手から、実は嫌われていたと知ったり、パートナーに大きな嘘をつかれていたと発覚するなど、真実を知った時のショックは計り知れません。トラウマになるほどの嘘は、人間不信に大きく影響する可能性があります。
金銭トラブル
親族や親しい友人が抱える借金の保証人となり、借金の肩代わりをすることになったりなど、金銭の貸し借りを伴うトラブルは深刻な問題に発展しやすく、人間関係の破綻に繋がるケースも少なくありません。
秘密の暴露
信頼して話した秘密を第三者がいつの間にか知っていた、思い切って打ち明けた重要な事をないがしろにされたなどの経験は、その後の対人関係に大きな影を落とす可能性があります。
2. 学校や職場などの社会生活で人間不信になりやすい出来事
いじめ
学校や職場など、閉鎖的な空間で起こるいじめは、深刻な心の傷となり、人間不信に陥りやすい出来事と言えるでしょう。
ハラスメント
上司や先輩からの理不尽な叱責や嫌がらせ、同僚からの無視や仲間外れなど、立場を利用した攻撃は、その後の人間関係に大きな影響を与えかねません。
また、不快な性的言動を受けた経験は、相手に対する不信感だけでなく、異性全体に対する恐怖心や嫌悪感に繋がりかねません。
仲間外れ
集団の中で、自分だけ仲間外れにされたり、無視されたりする経験は、孤独感や孤立感を深め、人間不信を助長する可能性があります。
また、信頼していた同僚に裏切られたり、陰口を言われていると知ったりする経験も、人間不信に繋がりやすい出来事の一つです。
3. その他の要因
SNSでの炎上
インターネット上での誹謗中傷や、SNSでの炎上経験は、不特定多数の人からの攻撃という点で、大きな心の傷となりかねません。
詐欺被害
詐欺や悪徳商法などの被害に遭うと、人に対する不信感が強まり、社会全体に 対する不安や恐怖を感じるようになることがあります。
これらの出来事はあくまでも一例であり、人によって、人間不信のきっかけとなる出来事は異なります。
また、同じ出来事を経験しても、受け止め方や感じ方は人それぞれであり、人間不信に陥るかどうかは、その人の性格や過去の経験、周囲のサポート体制などによっても大きく左右されます。
人間不信になっている時の特徴
人間不信は、心の奥底に潜んでいる場合もあり、自分自身でも気づきにくいことがあります。ここでは、人間不信に陥っている時に現れやすい特徴をいくつか紹介します。
1.他者の言葉を信じられない
他者の発言を「本当かなぁ?」と直ぐに疑ってしまったり、相手からの褒め言葉を素直に受け取ることができない場合は、人間不信に陥ってる可能性があります。
過去に受けた裏切りや、嘘をつかれた経験から、他者の言葉を素直に受け止められなくなってしまう場合があります。
2.感情を表に出したがらない
相手に深入りすることを恐れ、あまり自分の気持ちが悟られないようにするために、感情を表に出さなかったり、表情が乏しくなってしまう場合があります。
笑顔が少なくなると、周囲から「面白くない」と思われたり「不機嫌」と勘違いされ敬遠されてしまい、さらに孤立してしまう可能性もあります。
3.相手を試すような言動をする
過去の経験から、また相手に裏切られるかも知れないと不安になり、噓をついてしまったり、逆の反応をしてしまうなど、相手を試す言動をしてしまう場合があります。
特に、人に裏切られ深く傷ついた経験がある場合、また裏切られるのではないか?と相手が自分を傷つけて来る相手なのか試すような行動をとってしまいます。
4.他者に対して優位に立ちたがる
いじめなどで辛い経験をした人は、他者から見下されることを非常に恐れる傾向にあるため、自分が優位な立場にいることを好む場合が多いです。
例えば、自分の弱みを他者に知られないように隠したり、自己の強さを示す手段としてわざと高圧的な態度を取ることがあります。
5.一人を好むようになる
人間不信の人は、知人や友人からの誘いを多くの場合断りがちで、新しい人間関係を築くことが苦手な傾向があります。人とのコミュニケーションを避けるような行動が見られる場合、それは人間不信の症状である可能性があります。
他者からの誘いを断ったり、人間関係を築くのが難しかったりする理由として、「相手が自分を理解しようとしない」「自分が相手の嫌な面ばかりに目が行く」といった不満や不安を抱えた経験がトラウマとなり、他者よ行動すること自体がストレスになっているのかもしれません。
その結果、一人でいることを好み、誰とも関わりたくないと感じるようになるケースもあります。 また、新しい出会いや交友関係を築くことに抵抗を感じ、コミュニケーションを図ることに消極的になります。
人間不信を克服するための4ステップ
人間不信の克服は、容易ではありません。 しかし、諦めずに、ご自身のペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。ここでは、人間不信を克服するための5つのステップをご紹介します。
1.自己理解を深める
人間不信になったのは、あなたのせいではありません。まずは、ご自分を責めることなく、今の状態を受け入れることが大切です。
そして、過去の出来事を振り返り、「どんな時に、どんな人に、不信感を抱くのか」を思い出してみましょう。そして、具体的な状況や感情をノートに書き出してみましょう。
さらに、人間関係で傷つきやすい部分、逆に、持ち合わせていながらも、活かしきれていない長所など、自分自身を客観的に見つめ直してみることで自己理解が深まります。
2.ポジティブ思考を育む
他者の短所ではなく、長所を見つけるように意識してみましょう。「ありがとう」「すごいね」など、ポジティブな言葉を積極的に使うことも効果的です。
また、家族や友人など、周りの人への感謝の気持ちを言葉や態度で表すことも大切です。感謝の気持ちを表すことで、人間関係が円滑になっていきます。
まずは小さなところからで結構です「今日は笑顔であいさつができた」「新しいお店に挑戦できた」など、小さな達成感を味わえるように意識することで自己肯定感の向上が期待できます。
3.他者との距離感を調整する
周囲の目を気にしすぎる人は、周囲に合わせすぎる傾向がありますので、相手に合わせすぎず、自分の意見や気持ちを伝える練習をしてみましょう。最初は、親しい人や信頼できる人から始めてみると良いでしょう。
4.専門家のサポートを受ける
例えば、同じ悩みを持つ人と交流することで共感を得たり、情報交換をしたりすることができます。
また、誰にも相談できずに、一人で抱え込んでしまっている場合には、カウンセラーなどの専門家に相談するのも大変有効です。専門家の客観的なアドバイスは、新たな視点を与えてくれます。
オンラインカウンセリングなら、専門のカウンセラーがあなたの感じているストレスや悩みに寄り添ってくれますので、些細なことでも安心して相談することができます。
オンラインカウンセリングは予約も簡単
オンラインカウンセリングは、インターネットにつながる環境であれば、24時間スマートフォンからでも簡単に予約が取れます。また、オンラインカウンセリングは自宅で相談できるのもメリットです。
相談をするために移動する時間を省くことはもちろん、何よりリラックスできる状態で自宅などから専門のカウンセラーに相談することができるのが、オンラインカウンセリング最大のメリットです。
週に1回など、信頼できるカウンセラーに話を聴いてもらうことで、こころが安定し、状況が変化していくことも期待できます。
まとめ
今回は、うつ症状にもなりうる「人間不信」の原因や特徴と、人間不信を克服するための具体的なステップを紹介していきました。
人間不信を克服することは、簡単な道のりではありません。まずは、自分を大切にすることを忘れずに、そして相手も尊重し、思いやりの心を持って接することを心がけましょう。
困ったり不安な場合には一人で抱え込まず、周囲の助けや、場合によってはカウンセラーなどのサポートも受けつつ、焦らずゆっくりと信頼関係を築いていきましょう。
mezzanineのカウンセラー
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メザニン登録カウンセラー
冬木 更紗 Sarasa FUYUKI
臨床心理士、公認心理師
心理学学位および臨床心理学専攻修士取得。臨床心理士および公認心理師取得後、精神科・心療内科にてカウンセリングを行なっています。また、心理検査の実施経験が豊富です。
【メッセージ】
精神科・心療内科でうつ病、適応障害、パニック障害、発達障害など様々な診断を受けた方々とのカウンセリングを行ってきました。
これまでに得た専門知識を活かしながら、あなたの悩みについて考えるお手伝いをさせていただけると幸いです。