社会人になると仕事の責任に追われる一方で、家族との人間関係に新たな悩みを抱えるケースも多くなります。
特に親や兄弟姉妹、配偶者といった家族との関係は、環境の変化によって、より複雑でデリケートになることがありでしょう。
そこで今回の記事では家族との人間関係の悩みについて、どのように向き合い解決策を見つけるかを実践的なヒントとともに紹介します。
大人になってからの家族関係
家族との関係は、大人になってからも人生において重要な要素であり続けます。しかし、幼少期とは異なり、その関係性は多面的で複雑なものへと変化します。
例えば、親が高齢になり支援が必要になることや、兄弟姉妹間で役割や責任の違いが生じること、配偶者との新たな生活における摩擦など、大人特有の課題が生まれます。
一般的に人間関係でストレスを感じる場合には、距離を置くことが有効とされています。しかし家族関係においては、その選択肢を取るのが難しいことが多く、解決がより複雑になるケースも少なくありません。
家族との人間関係によるストレス要因と対処法
家族との人間関係をストレスに感じるのは、いくつかの要因が重なるためです。ここでは一般的に多い要因と、その対処法をケース別にまとめました。
- 親との関係が引き起こすストレスの原因
- 兄弟姉妹との関係におけるストレスの背景
- 配偶者との関係で感じるストレスの理由
順番にみていきましょう。
1.親との関係が引き起こすストレスの原因
人生で最も影響を与える存在である親との人間関係は、環境やお互いの年齢によっても変化するケースが多く、親との関係がストレスの原因となることも少なくありません。
ここでは、親との関係が引き起こすストレスの原因と、その対処法について考えてみましょう。
過剰な期待
親が持つ理想や価値観に沿うことを求められると、自己表現が制限されると感じ、ストレスを感じやすくなります。
例えば親が望むキャリアなどの人生設計に無意識のうちに合わせることで、自己を犠牲にする感覚に陥ることがあります。
親の過干渉
親が過度に干渉し、自分の意見や行動に影響を与えようとすると、自由が奪われたように感じます。特に成人後も親から干渉される頻度が高い場合では、独立性を尊重してほしいという気持ちと対立します。
しかし親との人間関係にストレスを感じても、親にイライラしてしまう自分に対し罪悪感を抱くことで、さらに強いストレスがかかるケースもあります。
では、どのような対処法があるのでしょうか。
【対処のヒント】境界線を明確にする
自分と親は異なる人間であるという認識を持ち、境界線をしっかりと意識してみましょう。
境界線を明確にすることは感情的に巻き込まれることを防ぎ、関係を健全に保つ助けとなります。例えば、重要な決定に関しては親の意見を参考にしつつ、最終的な判断は自分で行うように心がけるとよいでしょう。
親との関係は、それぞれの家庭環境や背景によって大きく異なり、効果的な対処法も一律ではありません。しかし境界線を意識することは、親との関係を改善するだけでなく、自分の人生における新しいステップへと進む準備にもつながります。
2.兄弟姉妹との関係におけるストレスの背景と対策
兄弟姉妹との関係は、私たちの成長過程において重要な役割を果たします。長い時間を共に過ごし強い絆を持つ一方で、時にはストレスの原因にもなり得ます。特に成人後は、それぞれの家庭環境や人生の選択が影響し合い、摩擦が生じることがあります。
比較されることのストレス
例えば、兄弟姉妹のうち片方が特に可愛がられていると感じることが続くと、不満や嫉妬、さらには自分の存在価値に対する疑念が深まります。こうした感情は、成人後の兄弟姉妹との関係にも影響を与えることがあります。
異なる価値観やライフスタイル
兄弟姉妹同士でも、成長過程で異なる価値観やライフスタイルを形成することがあります。特に結婚や独立を経て、それぞれの生活環境や家庭観が異なる場合、意見の食い違いや理解不足から衝突が起こる場合もあるでしょう。
家族間での責任の偏り
兄弟姉妹間で負担の偏りが生じると、不公平感がストレスの原因となります。
例えば親のサポートや金銭面での負担などがある状況では、責任が偏るケースが多く、どのように調整するかが大きな課題となるでしょう。
【対処のヒント】役割分担を柔軟に話し合う
家庭内での役割に偏りが生じている場合は、感情的に対立するのではなく、実際に話し合いを通じて解決策を見つけることが重要です。
定期的に家族会議を開くなどして、家族間での負担を均等にするための具体的な方法を話し合うことがストレス軽減につながります。
3.配偶者との関係で感じるストレスの理由
生まれ育った家族とは異なり、自分自身が構築していく家族関係の中で密接に関わるのが配偶者の存在です。
この章では夫婦間で生じるストレスの主な理由と、それに対する対策をみていきましょう。
コミュニケーションの不足
忙しい日常の中で、気持ちや考えを十分に伝え合わない時間が増えると、不満や誤解が生じやすくなります。「言わなくても相手には伝わっているだろう」と互いに思っていても、少しずつのすれ違いが重なり、喧嘩に発展することも少なくありません。
価値観や生活の違い
違う環境で育ち、違う価値観を持った者同士が一緒に生活をするのですから、結婚前には気づかなかった価値観や生活習慣について異なった部分が明らかになり、ストレスにつながることも想定されます。
役割分担の不公平
家事や育児、仕事の負担が一方に偏ると不満が蓄積します。また相手がその負担に気づいていない場合、さらなる疲労感や孤独感につながるでしょう。
特に生活をする中で、取り決めなどを厳格に守ることは難しく、できる人がやればいいという状況になるケースもあります。
【対処のヒント】オープンな会話を心がける
夫婦間のコミュニケーションを大切にするためには、週末に近況や感じていることを話す時間を設けるなど、「定期的に話し合う時間を作る」ことがおすすめです。
また具体的な家事分担を話し合う際には、「一緒に楽しむ」視点を持つことも役立ちます。共同で行うことで負担感が軽減されるだけでなく、良い思い出になることもあります。さらに、専門家の助けを借りることも前向きな選択肢の一つです。
この章では、一般的に多いとされる家族との人間関係の悩みについて紹介しましたが、家族関係は一人ひとりの個性や、置かれている状況によって大きく異なります。
核家族やシングルペアレント家庭、二世帯同居や共働き世帯など、家族の形はさまざまです。また家族のあり方も、時代や文化によって変化します。家族の多様性を認め、それぞれの家族が幸せになるための道を模索することが大切であるといえるでしょう。
次の章では大人になった今、家族との人間関係に悩んだら試したい、心を軽くするステップをくわしくみていきましょう。
家族との人間関係に悩んだら?
家族との関係は人生の大部分を占めますが、その中で悩みや葛藤を感じることも少なくありません。そんな時は、少しでも心が軽くなる方法を取り入れてみましょう。
短時間の休憩を積極的に取る
家族との人間関係に悩み、ストレスを感じた時は、定期的に休憩を取ることを心がけましょう。仕事と違い、家族との関係にはオン・オフの切り替えが難しいことが多いため、意識的に休息を取ることが特に大切です。
1時間に1回、5分程度の休憩を取るだけでも、心と体をリフレッシュさせる効果があります。例えばコーヒー休憩や、軽いストレッチをするなどの時間を持つことで、次に進む準備が整います。家族との関係も、リフレッシュ後の冷静な視点から見直すことができ、感情に流されることなく対応しやすくなります。
感情の整理をする時間を持つ
家族との関係で感情的な摩擦を感じた時は、自分の感情を整理する時間を持つことが効果的です。
同居している家族との人間関係で悩んでいる場合は、物理的に距離を置ける時間を確保してみましょう。長時間が難しい場合は、帰宅時に一駅手前で降りて散歩をしてみるなど、心を落ち着ける時間を意識してみるとよいですね。
自分の感情をしっかりと認識し、何が引っかかっているのかを冷静に見つめ直せば、今後の対話もより建設的に進めることができるでしょう。
ポジティブな自己対話を心がける
家族との問題で悩み、気分が落ち込んでしまう場合は、自分を責めすぎないようにすることが大切です。
「私はよくやっている」「今は調整中だが、良い方向に進んでいる」など、自己肯定感を高める言葉を自分にかけることで、心の余裕を持ちやすくなります。
悩みを相談する
家族との人間関係の悩みは、周囲に相談しづらいことが多いものです。しかし、誰かに話すことは心の整理に大いに役立ちます。友人や信頼できる人に話すのも良いですが、専門的な視点を持つカウンセラーに相談するのも一つの有効な方法です。
専門的な知識を持つカウンセラーは、問題解決に向けてサポートをする心強い存在です。また一度きりではなくカウンセリングを継続的に行うことで、進行中の問題を定期的に振り返り、より深い理解を得られます。
継続的にカウンセリングを受けることで、自分自身の感情の整理が進み、家族との関係をより健全に保つためのスキルや対処法を得られるでしょう。問題に直面したときに適切な方法で対処できるようになると、心の安定が保たれ、良好な家族との関係につながることが期待できます。

まとめ
この記事では、親、兄弟姉妹、配偶者との関係におけるストレス要因とその対処法をいくつか紹介しました。
日々の実践的な方法として、短時間の休憩を取ることや感情の整理をする時間を持つこと、自己肯定感を高めるポジティブな自己対話を心がけることが有効であると紹介しました。家族との関係に悩んでいるとき、少しでも心が軽くなる方法を取り入れることは、ストレスの軽減に役立ちます。
また、メンタルヘルスの専門家であるカウンセラーに相談することも非常に効果的です。カウンセリングを通じて自分の感情を整理し、家族との関係を見つめ直すことで、問題解決につながるかもしれません。
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宮園 さとみ Satomi MIYAZONO
公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント
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プログラマ等の社会人経験を経て、職場のメンタルヘルス問題のニーズを感じ、対人支援職に転向しました。今まで目を向けてこなかった自分の可能性や、これからの選択肢、自分への理解を深めるお手伝い等、そんなカウンセリングの時間を提供できればと思っています。

佐藤 汐 Shiori SATO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
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現在も子育て支援を行っており、主に未就学児の養育者の方々の相談を受けております。また企業で休職者の相談に乗った経験もありますので、幅広い対応が可能です。心揺らぐことなどがありましたらお話を聞かせてください。

芹野 まり Mari SERINO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
一緒にこころの悩みを整理していきましょう
同じ経験をしていても一人ひとり思いや感情は違うものです。そして、生きていれば辛いことも決断しなければならないこともたくさんあります。一緒にこころの悩みを整理しながら、自分らしく生きていけるよう少しでも支援ができればと思います。
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