準備をしっかりしたはずなのに、大事なプレゼンテーションや会議、商談の場面で手や声が震えてしまった、頭が真っ白になってうまく発言できなかった、という経験をしたことがあるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
この記事では、緊張を感じやすいビジネスパーソンに向けて、今すぐ試せる「緊張しないための方法」を5つご紹介します。少しずつ実践して、自信を持って人前に立てるようになりましょう。
Fight or Flight(戦うか逃げるか)の反応
人前で緊張しない方法に入る前に、まずは「緊張」がどうして起こるのか、そのメカニズムを簡単に紹介します。
私たちは現在、安全な屋内で快適に暮らせる環境を持っていますが、人間もまた動物として本能的に「命を守る仕組み」を持っています。そのひとつが、危険を感じた時に発動する「Fight or Flight(戦うか逃げるか)」のメカニズムです。
本能が生み出す緊張状態
「Fight or Flight(戦うか逃げるか)」のメカニズムは、動物が捕食者に出くわした時など、命の危機を感じた場面で働きます。
たとえば、野生の動物が天敵に遭遇した場合、戦うべきか、それとも逃げるべきかを瞬時に判断する必要がありますが、その判断を支えるのが、脳と身体の連携による本能的な反応です。
現代社会では直接的な命の危機に遭遇することは少なくなりましたが、この仕組みは今でも私たちの中に残っています。その結果、プレゼンテーションや会議といった心理的なプレッシャーを感じる場面でも、同じメカニズムが働き、身体が緊張状態に入るのです。
そう考えると、人前で緊張するのは自然な反応なのだと、少し気が楽になりますよね。
緊張が起きるメカニズム
では、「Fight or Flight(戦うか逃げるか)」の反応が起こると、心と身体にはどのような変化が起きるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
脳が「危険」を察知する
人前で話すこと自体は命の危険があるわけではありませんが、たとえば「失敗したらどうしよう」「みんなに注目されている」と感じると、脳が「これは大変な状況だ!」と判断します。
この反応を引き起こすのが、緊張のスタート地点となる、脳の中にある扁桃体という部分です。
自律神経がスイッチオン
脳が「危険だ」と判断すると、身体は即座に「準備モード」に切り替わります。この時に働くのが交感神経という仕組みで、身体を緊急事態に備えるための指示を出します。
では、体内では何が起こっているのでしょうか。
1.アドレナリンが分泌される
アドレナリンが体中に送り込まれると、心拍数が上がり、呼吸が浅く速くなります。そして筋肉にたくさんの酸素を送って「すぐに動ける身体」を作ります。
2.血流が変わる
筋肉を優先するため手足の血液が一時的に減少し、手足の震えや冷たさにつながることがあります。
3.目や耳が過敏になる
脳が「重要な情報を逃すな」と命じるため、周囲の音や光に敏感になります。緊張で「何となく周りが気になる」と感じるのは、この自律神経の変化によるものなのです。
「準備モード」は狩猟採集時代のなごり
「準備モード」は、狩猟採集時代に動物が捕食者に遭遇した時にはとても役立ちました。すぐに走り出す、隠れるなど、命を守る行動が取れたからです。
しかし、現代のプレゼンテーションや会議では、実際に命の危機があるわけではありません。それでも、脳と身体は本能的にこの仕組みを発動させてしまうのです。この「準備モード」が、私たちにとっては「緊張」として感じられるわけです。
それでは、緊張の仕組みが分かったところで、今すぐできる「人前で緊張しない方法」について次の章で詳しくみていきましょう。
今すぐできる 人前で緊張しない方法
1.深呼吸をして心を落ち着ける
緊張すると呼吸が浅くなり、さらに不安が増してしまいます。ここで役立つのが「腹式呼吸」です。以下の手順で実践してみましょう。
- 4秒かけて、鼻からゆっくり息を吸い込む
- お腹を膨らませながら吸うことを意識する
- 次に、8秒かけて口からゆっくり息を吐き出す
腹式呼吸を意識しすぎてうまくいかない、8秒はちょっと長いという場合は、あまりこだわらずに「深い呼吸をする」とシンプルに考えましょう。
2.本番前に軽い運動を取り入れる
簡単なストレッチやエクササイズを取り入れるのも効果的です。
- 首や肩を回して筋肉の緊張をほぐす
- その場で軽くジャンプをして身体を温める
- 手をグーとパーで交互に動かし、手のひらの緊張を解く。
こうした運動は、身体の緊張を和らげるだけでなく、気分転換にもつながります。
3.身近な人を真似てトレーニングする
イギリスの有名な歌手が、吃音を克服するためにヒップホップのラップを繰り返し練習した話は有名です。このように、「誰かを真似る」ことは楽しく継続できるトレーニング方法です。
話すことが苦手なら、まずは話し方を研究してみましょう。「この人の話し方、いいな」と思う人を見つけて、少しずつ真似するだけでも十分です。
実は、日々のトレーニングは「人前で緊張しない方法」として最も効果的であり、繰り返し行うことで苦手意識の克服にも役立ちます。
4.話す内容を事前にシミュレーションする
緊張する要因のひとつに「次に何を話せばいいのかわからない」という不安が挙げられます。そのため、事前にシミュレーションすることは、人前で緊張しない土台作りとして必要な工程であるといえます。
伝えたいポイントを明確にする
まずは、伝えるべきポイントを3つ程度に絞り込み、話の流れを整理します。このシンプルな整理が、緊張を軽減する第一歩です。
簡単なメモを作る
詳細な台本ではなく、キーワードだけを書いたメモを用意することで、自然な話し方ができます。事前に何を話すべきかが明確になれば、不安要素の軽減に役立ちます。
実際に声に出して練習する
鏡の前や録音機能を使って練習すると、どこでつまずきやすいかを把握できます。声に出して練習することで、話し方がよりスムーズになり、自信がつきます。
5.緊張を味方に
緊張をネガティブなものとしてではなく、自分を助けるエネルギーとして捉えると、不安な気持ちが和らぎます。
緊張する自分を否定せず、ありのままを受け入れることで、心に余裕が生まれます。緊張によるエネルギーを声に力を込める、表情を豊かにする、といった良い方向に活用すれば、周囲に与える印象にも違いが出てくるでしょう。
緊張に向き合いながら、自信を積み重ねる
どんなプロフェッショナルでも、緊張を感じたことがない人はいません。大事なのは、それを乗り越える経験を重ね、自分の力を信じることです。
継続することの大切さ
小さな成功体験を積むことで、次第に「自分なら大丈夫」という気持ちが芽生えます。プレゼンテーションや会議の後は、自分を褒めることを忘れずに。「よくがんばった」と自分に声をかけてみましょう。
悩みを相談したい時はカウンセリングを視野に
「人前で緊張してしまう」という悩みを解決したい場合、カウンセリングを検討するのもひとつの方法です。
特に、オンラインカウンセリングを継続的に利用することで、自分の不安や問題点を明確にし、それらをどう解決していくかを一緒に考えるサポートを受けることができます。自分にぴったりな方法を見つけて、少しずつ自信を持てるようになるかもしれません。
オンラインカウンセリングは、自宅などリラックスできる場所から利用でき、全国どこからでもアクセス可能です。予約からカウンセリングまでスマホで簡単に行えるので、継続的に利用しやすい点も大きな魅力です。
まとめ
緊張は自然な感情であり、完全になくすことは難しいですが、少しの工夫で和らげることは可能です。
今回紹介した5つの方法を試して、次回の大事な場面では、緊張を味方につけて自分らしいパフォーマンスを発揮してください。
mezzanineのカウンセラー
メザニン登録カウンセラー
佐々木 隆嘉 Takayoshi SASAKI
臨床心理士、公認心理師
会計事務所での勤務など、様々な社会人経験を経たのち大学院に入学。修了後、医療・教育領域をメインに業務にあたっています。
【メッセージ】
話をしても何も解決しないかもしれない、話すこと自体がつらい、カウンセラーと合わないかもしれないなど、不安に感じることもあるかもしれませんが、一歩踏み出してご相談いただければと思っています。
あまり堅苦しくならず、ただ愚痴を話してまったりする時間にしていただいても大丈夫です。