対人関係の悩み

HSPが取り入れたい「アサーション」上手にコミュニケーションを取るための4ステップ

「自己主張が苦手」と感じるHSP(Highly Sensitive Person)の気質を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、HSPの方が上手に自己主張ができるように、「アサーション」について詳しく解説し、その取り入れ方を4つのステップに分けて紹介していきます。

HSP気質を抱える方の主な悩み

HSP気質を抱える方の主な悩みとして、過剰な刺激に対する敏感さがあります。

  • 音や光、人混みなどの強い刺激に対して過敏に反応し、疲れやストレスを感じやすい
  • 他者の感情に敏感で、他人の問題やストレスを自身のことのように感じてしまう
  • 周囲からの批判や否定的な意見に強く反応し、自己評価が下がりやすい
  • 気を遣いすぎたり、摩擦を避けようとしてストレスを感じることが多い

HSPの気質については、医師監修のこちらの記事で詳しく解説しています。

HSPの方は、敏感な気質を持つ上で多くの悩みを抱えやすい傾向にありますが、その中でも自身の意見を思うように伝えることが難しい、衝突を避けるために無難な対応に回りストレスを感じるなど、コミュニケーションにおいての悩みである場合が多いとされています。

そこで取り入れたいのが「アサーション」です。

「アサーション」とは

「アサーション」とは、日本語で「自己主張」を意味しますが、ビジネスシーンでは、自身の意見を主張しつつ、相手の意見も尊重するコミュニケーションスキルを指します。

「アサーション」は、自身の意見を通したら相手が傷つくのではないか、関係性が悪化してしまうのではないかという不安を抱えるHSP気質を持つ方こそ、身に着けておきたいスキルであるといえます。

例えば、ビジネスパーソンとして組織で働く中では、言いにくいことも発言しなければならない場面に遭遇することも少なくありません。このような状況でも大いに役立つのが「アサーション」です。

「アサーション」を取り入れるための4ステップ

【ステップ1】自身の感情とニーズを認識する

HSPの方は他者の感情に敏感で、自身の感情を後回しにしてしまう傾向がありますので、まずは自分自身の感情とニーズを認識することが重要です。

例えば、最近イライラしているという自身の感情に気づいたら、何が理由であるかを把握していきましょう。「最近、仕事が忙しく食事が偏っている」など理由が明確になったら「休息や食生活の見直しが必要」であることを認識することができるでしょう。

また、自己認識を深めるための具体的な方法として、日記をつけることや、定期的に振り返りの時間を持つことも有効です。日記に感情や出来事を書き留めることで、自身のパターンやトリガーを把握しやすくなります。

【ステップ2】 Iメッセージを使って表現する

次に、自身の感情とニーズを相手に伝える際には、「Iメッセージ(あいめっせーじ)」を活用します。Iメッセージは、明確に自身の気持ちを伝えるための有効な手法です。

Iメッセージの4つの要素

Iメッセージは4つの要素で構成されています。

  1. 感情
  2. 状況
  3. 理由
  4. 相手に求める行動

1つずつ順番にみていきましょう。

1.感情 (I feel ~)

Iメッセージの最初のステップは、自身の感情を伝えることです。ここでは感じている具体的な感情を「I feel~」という形で表現します。感情を表現することで、内面的な状態を相手に伝えることができます。

  • 「私は少し悲しいです」
  • 「私はちょっと困っています」
  • 「私は安心しています」

感情を表現する際には、できるだけ具体的な言葉を使用することを心がけてみましょう。

2.状況 (when I ~)

次に、感情の背景にある具体的な状況を伝えます。この部分では、感情がどのような状況や出来事によって引き起こされたのかを説明します。「when I ~」という形式で伝えることで、感情と状況を結びつけることができます。

  • 「最近、業務量が多い状況で」
  • 「あなたが私との約束を忘れてしまったので」
  • 「会議で私の意見が聞かれなかったとき」

このように状況を具体的に説明することで、相手がその状況を理解しやすくなります。

3.理由 (because ~)

感情と状況を説明した後は、その感情がなぜ起こったのか、理由を伝えます。この部分では、「because〜」という形式で、感情の原因を具体的に説明します。

  • 「連日の残業で少し疲れているからです」
  • 「あなたとの約束が私にとって大切だからです」
  • 「私も意見を聞いてほしかったからです」

理由を明確にすることで、相手からの共感や理解を得られやすくなるため、建設的な会話を進めることができるでしょう。

4.相手に求める行動 (I would like ~)

最後に、相手に具体的にどのような行動を取ってほしいのかを伝えます。この部分では、「I would like〜」という形式で、具体的な要求を明確にします。

  • 「できれば明日は定時に退勤できると助かります」
  • 「次回からは、約束を忘れないようにしてもらえると嬉しいです」
  • 「次の会議では私の意見も聞いてもらえるとありがたいです」

具体的な行動を提示することで、相手に対して明確に自身のニーズを伝えることができます。

HSPが取り入れたいIメッセージの実践例

では、Iメッセージを用いた実践例をみてみましょう。

職場での実践例
  • 感情: 「私は少し疲れています」
  • 状況: 「最近、業務量が多い」
  • 理由: 「連日残業が続いているので」
  • 相手に求める行動: 「明日は定時に退勤できれば助かります」

これを一つのIメッセージにまとめると

「私は最近業務量が多く、連日残業が続いているため少し疲れています。なので、できれば明日は定時に退勤できれば助かります」

家族や友人との実践例

  • 感情: 「私は少し悲しかった」
  • 状況: 「あなたが約束を忘れてしまった」
  • 理由: 「あなたとの約束が私にとって大切だからです」
  • 相手に求める行動: 「次回からは、約束を忘れないようにしてもらえると嬉しいです」

これを一つのIメッセージにまとめると

「あなたが約束を忘れてしまったので、私は悲しかったです。なぜなら、あなたとの約束が私にとって大切だからです。次回からは、約束を忘れないようにしてもらえると嬉しいです」

という形になります。4つの要素を満たしていれば、順番が前後していても構いません。

最初は感情を伝えるだけで精一杯など、なかなかうまくいかないかもしれませんが、できる範囲で「感情」と「状況」を伝えるようにしてみましょう。

理由や相手に求める行動は、次のアクションで伝えることもできますので、まずは焦らず実践してみることが重要です。

このようにIメッセージを効果的に活用することで、相手とのコミュニケーションが円滑になり、感情やニーズを適切に伝えることができます。

HSPの方もこの手法を取り入れることで、自身の感情を明確にし、健全なコミュニケーションを築くことができます。

【ステップ3】相手の意見や感情を尊重する

「アサーション」の目的は自己主張だけでなく、相手との良好なコミュニケーションを築くことも目的のひとつです。

このステップではHSPの方は相手の感情に敏感であり、相手の意見や感情を尊重することが得意であるという長所を、十分に活かしていきましょう。

  • 相手の意見を聞く際は、積極的に傾聴する
  • 「あなたがそう感じるのも理解できます」などの、相手の感情を認める表現を使用する
  • 自己主張をしながら、相手の立場や視点を尊重する

傾聴とは、相手が話している内容に対して全身で注意を向け、理解しようとする姿勢を示すことです。

例えば、「あなたがそのように感じるのも理解できます」と相手の感情を認めることで、相手は自身の話がしっかりと受け止められていると感じます。

また、相手の意見や感情を尊重するためには、「私の意見はこうですが、あなたはどう思いますか」と相手の意見を求めることで双方の意見が尊重され、円滑なコミュニケーションを築くことができるでしょう。

【ステップ4】プロフェッショナルのサポートを受ける

ステップ1から3までを自分なりに取り入れてみたけれど、なかなか思うようにいかないという場合は、必要に応じてプロフェッショナルのサポートを受けることも検討しましょう。

カウンセリングやコーチング、仕事に係る悩みであればキャリアコンサルティングを通じて、「アサーション」のスキルを磨くことができます。

また、専門家のサポートを受けることで、自身の感情やニーズをより深く理解し、効果的なコミュニケーション方法を学ぶことができます。

HSPの悩みを相談できるカウンセリング

カウンセリングというと、大きな問題や深刻な悩みを抱えたメンタルヘルス不調者が受けるものというイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかしカウンセリングは、日常的な不安や悩みを解消するためにも非常に有効です。特にHSPの気質を持つ方にとっては、日々の小さなストレスや感情の起伏を相談する場として大いに役立ちます。

週に一度のカウンセリングで感情を整理する

日常的な不安や悩みを誰かに話すだけでも、心が軽くなることがあります。週に一度、継続的なカウンセリングを通じて、自身の感情と向き合い、整理することができます。

HSPの方こそ活用したいオンラインカウンセリング

近年、インターネットやスマートフォンの普及により、カウンセリングルームに直接出向かなくてもカウンセリングが受けられる、オンラインカウンセリングが広く利用されるようになっています。

オンラインカウンセリングは、自分自身がリラックスできる場所でカウンセリングを受けられるため、対面カウンセリングよりも話しやすいと感じる方が多い傾向がありますので、HSPの方にとっては特に、便利で有効な手段であるといえるでしょう。

まとめ

この記事では、HSPの気質を持つ方が取り入れたい「アサーション」について紹介しました。

「アサーション」を取り入れることで、自身の感情や意見を健全に表現し、ストレスを軽減することが期待できます。

自身の感情とニーズを認識し、Iメッセージを使って伝えること、相手の意見や感情を尊重すること、具体的な行動計画を立てることが、上手にコミュニケーションを取るための4ステップです。

また、カウンセリングは、HSPの気質を持つ方が日常的な不安や悩みを解消するための有効な手段です。週に一度のカウンセリングを通じて、継続的に自分の感情と向き合い、整理することで、自己理解を深め、ストレスを軽減することができますので、ぜひ日常に取り入れてみましょう。

HSPの悩みを相談できる
mezzanineのカウンセラー

 
メザニンコラムを発信している「mezzanine」では、オンラインカウンセリングを提供しています。

ご自宅から、専門性の高いカウンセラーからのカウンセリングを受けられます。

メザニン登録カウンセラー
幸村 奈未子 Namiko YUKIMURA
公認心理師

公認心理師として、メザニンのオンラインカウンセリング以外でも、心理学講座講師、対面カウンセリング、電話相談、SNS相談等に従事し、感受性が強く敏感な気質(HSP)の方へ向けて、心のケアのためのセミナーや、気持ちを分かち合う場を提供しています。

【メッセージ】
心は見えない分、ケアが後回しになりがちですが、もし心が痛むことに気づいたら、少し立ち止まり、いたわる時間をとってみませんか?お話がまとまっていなくても大丈夫です。ちょっとした心のひっかかりも聴かせてください。