向いている仕事について知りたいと思っている、発達障害の特性を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、向いている仕事や活躍できる働き方を発達障害の特性別に紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
宮田 俊男 (Toshio MIYATA)
医師、博士(医学)、産業医
大阪大学医学部医学科卒業
早稲田大学理工学術院先端生命医科学センター(TWIns)教授
医療法人社団DEN みいクリニック代々木、みいクリニックみのお理事長
厚生労働省参与として国に助言するとともに、地域医療を推進するため、医療法人を経営し、企業の健康経営や多くの社員、役員のカウンセリング、社員の生活習慣病の重症化予防、病児保育、オンライン診療、医療DXにも取り組んでいる。出演番組の実績も多数。
発達障害とは
発達障害(はったつしょうがい)は、言語、認知、社会的なスキルなどの領域で特性が見られる状態を指します。
また、一般的に特性は生涯に渡って持続されるといわれており、代表的な発達障害には、ASD(自閉スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、AD(学習障害)などがあります。
しかし、発達障害の特性は完全に分けられているものではなく、たとえば同じADHDの中でも全く同じ特性であるということは一般的ではなく、個人によって複数の特性が重なり合っているケースがある点にも留意しておく必要があります。
発達障害の特性については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
発達障害の主な特性
発達障害は、特性や症状に基づいていくつかの主要なタイプに分けられています。
ASD(自閉スペクトラム障害)
ASDは自閉症やアスペルガー症候群の総称で、コミュニケーションにおける困難、繊細な感覚処理、繰り返し行動などの特性を持ちます。
仕事や職場のASDでは、相手の意図を汲むのが苦手なため、一方的なコミュニケーションを取ってしまうことがあります。
また、こだわりが強いため、イレギュラーが発生して一定のパターンが崩れると、パニックに陥るケースがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
ADHDは、注意力の欠如、多動性、衝動性などの特性があります。
タスク管理をすることが難しいため、細かいケアレスミスが多発する傾向がありますが、多動や衝動性が優勢である場合と、不注意が優勢、もしくは混合型である場合があります。
LD(学習障害)
LDは、読み書きや計算などの学習に困難を抱える状態を指します。特定の学習分野で情報処理の速度が遅い傾向があります。
また、読み書きや計算など、特定の能力に困難が生じるため、例えば会話などのコミュニケーションが円滑でも、文字などを読む場合に周囲よりも時間がかかるケースがあります。
以上のように、同じ発達障害の分類の中でも多様な特性があるため、向いている仕事や職場環境にも違いが出てきます。
特性別にみる発達障害の方に向いている仕事
特性に合った適切な仕事や職場環境を見つけることが、発達障害のある人々が持つ能力を最大限に活かすために重要です。また、職場や仕事環境が適応可能であることも重要です。
この章では、発達障害の方に向いている仕事を、主な3つの特性別にみていきましょう。
ASD(自閉スペクトラム障害)の方に向いている仕事
- データ分析
- プログラミング
- 設計やデザイン
- 検査
- 研究
- 翻訳
- 文字起こし
- データ入力
コミュニケーションや社会性の困難、興味や関心の偏り、こだわりが強い、論理的思考力、パターン認識能力というASDの特性では、規則性のあるルーティンやルールのある仕事が向いているといえます。
ひとりで行える作業とも相性がよく、他の従業員などの業務や気分に左右されにくい環境で作業をすることで、持っているスキルを発揮し活躍することが期待できます。
なお、社会的な相互作用やコミュニケーションには一定の挑戦が必要ですが、ASDは細部への注意や優れた記憶力を持っていることがあるため、決められたトークスクリプトを用いた業務に適性を感じる場合もあるでしょう。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の方に向いている仕事
- 起業
- 営業
- クリエイティブな仕事
- スポーツ
- エンターテイメント
- イベント企画
ADHDの特性である多動性や衝動性の特性では、タスク管理や一定のルーティンなどをあまり必要としない仕事が向いているといえます。
日々同じことを繰り返すよりも、新しい刺激や挑戦がある環境のほうがスキルを発揮しやすいため、起業やイベント企画のような仕事にやりがいを見出すことができるでしょう。
クリエイティブな仕事やエンターテイメント業界では、柔軟な発想が求められますので、ADHDの特性である多動性や衝動性を活かして独創的なアイデアを生み出すことも可能です。
また、営業職に挑戦してみたいという場合は、企業によっては営業に係る事務作業までを担うこともありますので、業務範囲をしっかりと把握しておくことが重要です。
LD(学習障害)の方に向いている仕事
- 手先の器用さを活かした仕事
- コミュニケーション能力を活かした仕事
LDはASDとADHDとは異なり、特性がはっきりしています。特定の職種が向いているというよりは、持っている特性がマイナスに作用しない仕事を見つけるということがポイントになります。
もしも書くことが苦手であれば音に関する仕事、読むのが苦手であれば文字ベースでなく対面でのコミュニケーションを中心とした仕事というように、特性に合わせた仕事を選択することが可能です。
また、完全に苦手な分野を回避するということが難しい場合でも、職場の人間関係を円滑にしておくことで、カバーできる部分が広がります。
発達障害の特性に合わせた仕事選びは個々人の特性によって異なりますが、自分の強みを理解し、仕事環境を見つけていくことが重要です。
また、職場のサポートや理解も必要ですので、適切なサポートが得られる職場環境も考慮すると良いでしょう。
特性別にみる発達障害の方に向いていない仕事
前の章では向いている仕事である「強み」について紹介しましたが、この章では向いていない仕事を紹介していきます。
「弱み」を知ることは、「強み」に対して理解を深めることに繋がります。
ASD(自閉スペクトラム障害)の方に向いていない仕事
ASDの特性を考慮すると、以下のような仕事は向いていない可能性があります
顧客対応や販売業務
ASDの特性として、コミュニケーションに関して困難が生じる場合があるため、顧客との直接的な対話や、交渉が多い職種は適していないと考えられています。
高度なストレス耐性が必要とする仕事
医師や航空管制官などの、高度なストレス耐性が求められる仕事は適切ではない場合があります。
これらの仕事は、ASDの特性によって適応が難しいものとされます。ただし、個々人の症状や能力によって異なるため、一概に全ての人に当てはまるわけではありません。
ASDの特性や自身の強みや弱みを理解することで、活躍できる職業を見つけていくことが重要です。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の方に向いていない仕事
ADHDの特性を考慮すると、以下のような仕事は向いていない可能性があります
細かい作業や繰り返し作業が主体の仕事
ADHDの特性として、細かい作業や正確性が求められる業務は向かない傾向にあるため、しっかりとスケジュールを組んで行う業務や、細かい作業などは難しく感じる場合があります。
マルチタスクが求められる仕事
金融関係、看護や介護などのマルチタスクで動くことが求められる仕事には向かない傾向があります。
同時進行で業務を進めていくと、単体で出来ていた作業にミスが生じるケースがあります。
ただし、特性は一人ひとり異なるため、一概に全ての人に当てはまるわけではありません。ADHDの特性を理解していくことが重要であるとされています。
LD(学習障害)の方に向いていない仕事
LDの特性を考慮すると、以下のような仕事は向いていない可能性があります。
高度な読み書きや計算能力が求められる仕事
LDの主な症状は読み書きや計算における困難です。そのため、これらのスキルが高度に求められる仕事には向かない傾向があります。
マニュアルや資料作成が多い仕事
多くのマニュアルが存在する、資料作成などの業務がメインであるという仕事には向かない場合があります。
しかし、LDの特性は一人ひとりの状況や能力によって異なるため、一概に全ての人に当てはまるわけではありませんが、特性をしっかりと理解することで、適した仕事を選択できるでしょう。
個人差や特性によって向いている仕事は異なる
特性を理解し強みと弱みを知ることで、向いている仕事がみえてきます。
しかし、向いているとされる仕事でも、特性の組み合わせによっては続けることが難しいと感じたり、強いストレスや不安を感じる場合もあるでしょう。
自分の適性について悩んでいる場合は、ひとりで考えるよりも、他者のサポートを受けることで気づきを得ることができるかもしれません。
カウンセリングが心強いサポートになる
働いてみてはじめて、この仕事に向いている、向いていないという部分がみえてくるという側面もあります。
同じような作業でも、時期によってはイレギュラーな対応があってパニックになってしまう、配置転換によって集中できていた環境が大きく変化してしまったなど、自分では対処できない事に遭遇すると、自信を失ってしまう場合もあるでしょう。
そのような悩みで不安を感じた場合には、カウンセラーと話すことが有用であるといえます。
利用しやすいオンラインカウンセリング
誰かに話したい、相談したいと思ってもカウンセリングの予約が取れない、時間が取れないと感じているビジネスパーソンも多いでしょう。
そんな時は、オンラインカウンセリングを週に一度、継続的に利用することを検討してみてもよいかもしれません。
オンラインカウンセリングはスマートフォンがあれば簡単に予約ができ、すぐにカウンセリングを受けることが可能です。
カウンセリングを受ける前の会員登録も、すぐにできるサービスが多いので、話したいと思ったその日に気軽に利用することができます。
まとめ
この記事では発達障害の特性別に、向いている仕事と向いていない仕事について紹介してきました。
自分の強みや弱みを知ることは仕事を選ぶ際にも非常に重要です。また、客観的な視点やサポートが欲しい、仕事に関する不安を誰かに話したいと思ったら、オンラインカウンセリングを利用してみるのもよいでしょう。
mezzanineのカウンセラー
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メザニン登録カウンセラー
冬木 更紗 Sarasa FUYUKI
臨床心理士、公認心理師
心理学学位および臨床心理学専攻修士取得。臨床心理士および公認心理師取得後、精神科・心療内科にてカウンセリングを行なっています。また、心理検査の実施経験が豊富です。
【メッセージ】
精神科・心療内科でうつ病、適応障害、パニック障害、発達障害など様々な診断を受けた方々とのカウンセリングを行ってきました。
これまでに得た専門知識を活かしながら、あなたの悩みについて考えるお手伝いをさせていただけると幸いです。