40代、50代と人生の折り返し地点に差し掛かり、ふと立ち止まってしまうことがあるかもしれません。
仕事への情熱が薄れてきたり、自分の人生がこれで良かったのかと不安や焦りを感じる。こうした感覚は、多くのビジネスパーソンが中年期に悩む、心理的な現象と言えるでしょう。
中年期に入り、仕事や人生に疑問を抱くことは決して珍しいことではありません。「ミッドライフクライシス」と呼ばれるこの時期は、ネガティブなイメージを持たれがちですが、視点を変えれば自分自身とじっくり向き合い、人生をより豊かにするための貴重なチャンスとも捉えることができます。
この記事では、「ミッドライフクライシス」を穏やかに乗り越えるためのヒントを探っていきます。
「ミッドライフクライシス」とは?
「ミッドライフクライシス」とは、一般的に40代から50代を中心として起こりうる、心理的な変化や転換期のことです。
この時期は、これまで当たり前だと思っていた価値観や人生における優先順位が揺らぎ、自分自身を見つめ直すタイミングと言われています。
キャリア、人間関係、家庭環境など、人生の様々な場面で多くの見直しが始まり、迷いや不安が生じることもありますが、それは必ずしも「危機」的状況ではなく、人生における重要な成長の機会と捉えることもできます。
自分は何者なのか、これからどう生きていきたいのか、といった根源的な問いと向き合うことになるでしょう。この経験は、より成熟した人格を築き、人生をより豊かに彩ることができる可能性を秘めています。
「ミッドライフクライシス」と関わりある症状
「ミッドライフクライシス」と関連する状態に、更年期障害、燃え尽き症候群、空巣症候群などがあります。
更年期障害は、加齢に伴うホルモンバランスの変化によって起こる心身の不調で、のぼせやほてり、発汗、倦怠感、不眠、イライラ、不安、抑うつなどの症状が現れることがあります。
燃え尽き症候群は、過度なストレスや疲労によって、仕事への意欲や情熱が失われてしまう状態です。
空巣症候群は子供が成長し、独立して家を出て行った後に親が感じる喪失感や虚無感で、症状としては情緒不安定、意欲低下、不眠、食欲不振、倦怠感などが見られることがあります。
「ミッドライフクライシス」はこういった状態よりも広範な人生の転換期を指し、身体的・精神的な変化だけでなく、社会的な役割の変化や人生における目標の見直しなども含む、より幅広い転換期です。
しかし更年期障害や燃え尽き症候群、空巣症候群が「ミッドライフクライシス」の一つの側面として現れるケースもあります。
もしかしたら「ミッドライフクライシス」?兆候チェックリスト
「ミッドライフクライシス」は誰にでも起こりうるものですが、その兆候は人それぞれです。もしかしたら気づかないうちに、「ミッドライフクライシス」の入り口に立っているかもしれません。以下のチェックリストで、現在の自分の状態を確認してみましょう。
仕事へのモチベーション低下
今までイキイキと働いていたのに、最近どうも仕事への意欲が湧かない…と感じていませんか。
たとえば昇進への関心が薄れたり、仕事が以前よりつまらなく感じたり、会社の将来が不安になったりするのも、「ミッドライフクライシス」の兆候かもしれません。特に、これまで仕事に打ち込んでいた人ほど、この変化に戸惑いを感じやすいようです。
人間関係の変化
家族との会話が減ったり、友人と会うのが面倒になったりしていませんか。
周囲とのコミュニケーションが億劫になり、孤独を感じやすくなるのも、「ミッドライフクライシス」のサインかもしれません。これまで良好な人間関係を築いていた人でも、この変化に戸惑うことがあるでしょう。
将来への漠然とした不安
老後の生活や健康、自分自身の死についてなど、将来に対する漠然とした不安に駆られることはありませんか。
将来が見えにくく、不安定な世の中だからこそ、将来への不安は誰もが抱えるものです。「ミッドライフクライシス」では、こうした不安がより強く意識されるようになることがあります。
過去への後悔や未練
若い頃に諦めた夢や、過去の選択を後悔する気持ちは、誰にでもあるものです。しかし、「ミッドライフクライシス」に陥ると、こうした後悔の念がより強く、頻繁に意識されるようになることがあります。「あの時、違う選択をしていたら…」と考えてしまうことが増えたなら、注意が必要かもしれません。
アイデンティティの喪失感
「自分は何者なのか」「これから何をしたいのか」といった、アイデンティティに関する疑問が湧き上がってくることはありませんか。
「ミッドライフクライシス」では、これまで当たり前だった自分の価値観や役割に疑問を抱き、自分が分からなくなってしまうことがあります。
趣味や興味関心の変化
以前は夢中だった趣味や興味のあった分野が、最近はどうも楽しめない…。そんな風に感じていませんか。
「ミッドライフクライシス」は、自分の価値観や優先順位が変化する時期です。そのため、趣味や興味関心が変わるのも自然な流れと言えるでしょう。
身体的な変化
疲れやすくなった、眠りが浅くなった、急に汗をかいたり、のぼせたりするといった身体の変化を感じていませんか。
こういった症状は、ホルモンバランスの変化や加齢によるものだけでなく、「ミッドライフクライシス」によるストレスが影響している可能性もあります。
上記はあくまでも一般的な「ミッドライフクライシス」の兆候ですので、過度に心配する必要はありません。むしろ、自分自身と向き合う良い機会と捉えてみてはいかがでしょうか。

なぜ?「ミッドライフクライシス」が起こる要因
「ミッドライフクライシス」は単一の原因ではなく、様々な要因によって起こるとされています。では、いくつかの視点から掘り下げて考えてみましょう。
加齢による身体的変化
体力やホルモンバランスの変化、更年期障害など、加齢に伴う身体の変化は、心にも大きな影響を与えます。「若い頃のようにいかない…」と感じる場面が増え、自信を失ってしまうこともあるでしょう。
ライフステージの変化
子育ての終了、親の介護、配偶者との関係の変化など、人生における役割の変化も「ミッドライフクライシス」の一因となります。これまで当たり前だった環境が変化することで、喪失感や不安を感じやすくなります。
キャリアにおける転換期
昇進の壁、責任の重さ、職場環境の変化、管理職としてのプレッシャー、部下育成の難しさなどは、「ミッドライフクライシス」を引き起こすことがあります。
またキャリアの天井が見えてくることで、閉塞感を抱くケースもあります。特にこれまでのキャリアプランが崩れたり、仕事への情熱を失ったりすると、大きなストレスを感じるでしょう。
社会環境の変化
経済の不安定化、技術革新の加速、社会構造の変化など、現代社会を取り巻く環境は常に変化しています。変化に適応することに苦しむことや、社会における自分の役割の変化に戸惑うことも、「ミッドライフクライシス」につながる可能性があります。
自分自身の内面との葛藤
過去の選択への後悔や将来への不安、理想と現実のギャップ、そして自分自身の内面との葛藤も、「ミッドライフクライシス」を引き起こす大きな要因です。「自分の人生はこのままで良いのだろうか?」と自問自答を繰り返すうちに、迷いや不安が深まっていくのです。
もちろん一人ひとりの状況によって原因や症状は異なります。だからこそ、自分自身の状態を丁寧に分析し、何が心に引っかかっているのかを理解することが大切です。
「ミッドライフクライシス」とどう向き合うか
「ミッドライフクライシス」は、人生における大きな転換期です。焦らず、自分自身と向き合う時間を持ち、具体的な行動を起こしていくことが大切です。
では、具体的にどんな行動を取れば良いのでしょうか。この章では、向き合うためのいくつかのヒントを紹介します。
1.自分史を振り返り、棚卸しをしてみる
これまでの人生で何を大切にしてきたのか、どんな時に喜びを感じてきたのか。ノートに書き出したり、写真を見返したりしながら、自分史を振り返ってみましょう。過去の経験を棚卸しをして再定義をすることで、本当に大切な価値観や、これからの人生で優先したいことが見えてくるはずです。
2.「新しいこと」にチャレンジしてみる
今までやりたくても時間が取れなかった新しい趣味に挑戦したり、今後の人生を考えて新しい学びをスタートする、ボランティア活動への参加、資格取得、副業の開始など、「新しいこと」にチャレンジしてみましょう。
視野が広がり新たな目標が見つかるかもしれません。ワクワクする気持ちを大切に、まずは一歩踏み出してみましょう。
3.周りの人と積極的にコミュニケーションをとる
家族や友人、職場の同僚など、周りの人たちと積極的にコミュニケーションをとるように心がけましょう。夫婦でじっくり話し合う時間を作る、親友と旅行に行く、地域の集まりに参加するなど、何気ない会話や共有する時間を通して、良好な人間関係を築き、心の支えを得ることができるはずです。
4.生活習慣の見直し
食生活、運動、睡眠など、基本的な生活習慣を見直してみましょう。バランスの取れた食事を摂り、適度な運動をし、十分な睡眠時間を確保することで、心身の健康を維持し、「ミッドライフクライシス」を乗り越えるためのエネルギーを蓄えることができます。
「ミッドライフクライシス」を乗り越えた先にある未来
「ミッドライフクライシス」は、自分自身と深く向き合う機会として捉えることができます。。これまでの人生経験を振り返り、自分の価値観や優先順位、強み弱みを改めて見つめ直す中で、本当の自分、そして本当に求めている生き方に気づくことができるでしょう。
新たな可能性の発見
今まで仕事一筋で自分の本当の気持ちに蓋をしてきた人も、この機会に自分の内面と向き合うことで、新たな可能性を発見できるかもしれません。例えば、「本当はクリエイティブな仕事がしたかった」「もっと自然の中で暮らしたい」といった、心の奥底に眠っていた願望に気づくかもしれません。
本当の自分に出会うことで、自信を取り戻し、より自分らしく生きられるようになるでしょう。
人生の新たな目標を見つける
「ミッドライフクライシス」をきっかけに、これまでとは異なる、新たな目標や夢が見つかる可能性があります。
仕事で新たなチャレンジをしたい、趣味で何かを極めたい、地域社会に貢献したい…など、様々な目標が考えられます。
もしかしたら、若い頃に諦めた夢を、もう一度追いかけてみたくなるかもしれません。新たな目標を持つことで、日々の生活にハリが出て、人生がより充実したものになるはずです。周りの目を気にせず、自分の心に素直に従って、新たな目標に挑戦してみましょう。
より深い人間関係を築く
「ミッドライフクライシス」は、人間関係を見つめ直す良い機会でもあります。これまで築いてきた人間関係を振り返り、本当に大切な人との絆を改めて確認することで、より深い人間関係を築くことができるはずです。
家族との時間を大切にしたり、友人との交流を深めたり、職場の同僚と本音で語り合ったり…。周りの人たちと心で繋がり、支え合う関係性を築くことで、人生の喜びや充実感が増すでしょう。
また、新たなコミュニティに参加することで、刺激的な出会いがあり、人生がさらに豊かになるかもしれません。
困難を乗り越える力を身につける
「ミッドライフクライシス」という困難な時期を乗り越える経験は、精神的な成長に大きく貢献します。困難に直面した際に、冷静に状況を判断し、柔軟に対応できる力(レジリエンス)を身につけることができるでしょう。
「ミッドライフクライシス」を乗り越えた先に待っているのは、困難を乗り越えたあなただからこそ見える、輝く未来です。恐れずに自分自身を信じて、一歩ずつ進んでいきましょう。
それでも辛い時は…専門家への相談という選択肢
ここまでは、「ミッドライフクライシス」と向き合うための様々な方法を紹介してきました。新しいことに挑戦したり、生活習慣を見直したり、周りの人とコミュニケーションをとったりすることで、少しずつ前向きな気持ちを取り戻せるはずです。
しかし中には「どうしても気持ちが晴れない」、「何をやっても虚しい」、「一人で抱えきれない」と感じる場合もあるかもしれません。そんな時は無理に頑張ろうとせず、専門家の力を借りることを考えてみましょう。
心のモヤモヤが晴れない時は?
一人で抱え込んでいると気持ちが落ち込み、行き詰まりを感じてしまうこともあります。
精神的な不調が深刻な場合、気分の落ち込みが激しく日常生活に支障が出ていたり、強い不安感や焦燥感に悩まされていたりする場合は、精神科医の診察を受けることをお勧めします。「ミッドライフクライシス」に伴う抑うつ状態や不安障害など、専門的な治療が必要となるケースもあります。
キャリアプランを見直したい、仕事とプライベートのバランスの取り方について悩んでいるといった場合は、キャリアコンサルタントやコーチに相談してみるのも良いでしょう。キャリアに関する専門的なアドバイスを受けることができます。
自分の気持ちを整理したい、誰かに話を聞いてほしい、具体的なアドバイスが欲しい、対人関係の悩みを相談したいなど、漠然とした不安や悩みを抱えている場合は、カウンセラーへの相談が適しています。じっくりと話を聞いてくれ、心のモヤモヤを整理するサポートをしてくれます。
また近年では、オンラインで相談が可能なカウンセリングサービスも増えてきていますので、忙しい日常の中でも気軽に相談できる環境が整っています。
オンラインカウンセリングは予約も簡単
オンラインカウンセリングはインターネットにつながる環境であれば24時間、スマートフォンからでも簡単に予約が取れます。また、オンラインカウンセリングは自宅で相談できるのもメリットです。
相談をするために移動する時間を省くことはもちろん、なによりリラックスできる状態で自宅などから専門のカウンセラーに相談することができるのが、オンラインカウンセリング最大のメリットです。
一人で悩まず、専門家の力を借りることで、「ミッドライフクライシス」をスムーズに乗り越えることができるでしょう。勇気を出して一歩踏み出してみませんか。

まとめ
この記事では「ミッドライフクライシス」とは何か、その兆候や原因、そしてどのように向き合っていくのが良いか、具体的なヒントと共に紹介してきました。
「ミッドライフクライシス」は、決してネガティブな時期ではありません。むしろ自分自身と深く向き合い、本当に大切なものを見つめ直し、人生をより豊かにするための貴重な機会と言えるでしょう。
焦らず自分自身を信じて、一歩ずつ進んでいきましょう。自分史を振り返り、新たな挑戦をしてみたり、周りの人と心で繋がり、支え合う関係を築いてみたり…。そして辛い時は一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも考えてみてください。
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