過度なストレスの影響によりセロトニンやドパミンの機能が低下することで、うつ状態になるのではないかと言われています。しかし、現在でも発症するメカニズムは完全には解明されていません。
うつの症状はこころと身体に様々な症状を引き起こしますが、憂うつな気分が辛いときはどのように過ごせばよいのでしょうか。
この記事では、うつの症状が辛い時の過ごし方について紹介していきます。
しっかりと休むことが重要
うつの症状が辛い時の過ごし方としては、まずはしっかりと休むことが重要です。休息はこころと身体の回復に必要不可欠な要素です。うつは身体的、感情的、そして認知的な症状を引き起こすことがありますので、休息はこれらの症状を緩和するのに役立つとされているのです。
しかしこの「休むこと」の定義が広範囲なため、しっかりと休むとはどのような状態を言うのだろうかと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
「休む」の定義って?
「休む」という言葉自体は、活動や労働を中断し休息や休憩を取ることを指します。
一般的には、こころと身体の疲れを癒し、リフレッシュを図るために行われるのが「休む」ということです。また長期的な視点で見ても、休むことは健康を維持するために必要な要素と言えます。
日本人は「休む」のが苦手
日本人は仕事や学校に対して勤勉であると言われている一方で、長時間労働などの問題が指摘されています。これには文化的な要素も関係しており、日本の社会では、仕事や学校に対する義務感や集団の一員としての責任感が強く、自己のニーズや休息を優先することが難しいと感じるのも原因のひとつと言えます。
しかし、どれだけこころが辛く重いのかは目で見ることができません。休息が必要な場合は無理をせず、しっかりと休むことが重要なのです。
情報から距離を置く
現代の生活には、いわゆる「何もしない」時間が少なくなっており、隙間時間にニュースやソーシャルメディアを閲覧しているため、私たちは膨大な情報に晒されています。
厚生労働省が2011年に調査した「休日の過ごし方について理想と現実の乖離」では、最も理想と現実の乖離が高い割合が、「ドライブや小旅行」で、理想が45.1%に対し、現実は15.7%でした。ここで注目したいのが、「何もせずにゴロ寝」の割合が、他の項目と比較すると現実と希望の乖離が少ないことで、理想が25.0%に対し、現実は24.7%です。
厚生労働 | 2011年版厚生労働白書を元に作成
では、実際に過ごす休日について、もう少し詳細に見ていきましょう。
同調査の「実際の休日の過ごし方」では、インターネットを見て過ごすと回答した割合が41.5%と最も高く、次いでテレビを見たり、ラジオを聴いたりして過ごすが31.4%になっています。
厚生労働 | 2011年版厚生労働白書を元に作成
興味の有無に関わらず、一日中あらゆる情報を見聞きしていると「頭が休まらない」状態が続きます。また、時には気分が沈むようなトピックを目にしてしまうこともあるでしょう。うつの症状が辛い時は、情報から少し離れてみるのも有効な手段と言えます。
情報を遮断する時間を設ける
「定期的に情報へアクセスする時間を制限する」、「ソーシャルメディアやニュースへのアクセスを制限する」など、情報を一時的に遮断する時間を設けることが有効です。
情報のフィルタリング
デジタル時代においては信頼性の高い情報源を選び、情報の質を向上させるためのフィルタリング手法やツールを利用することが重要です。目的を明確にし、得たい情報から逸れていると感じたら自身で情報バランスの考慮をしてみるのも有効です。
デジタルデトックス
デジタルデバイスから距離を置き、自然に触れたり、趣味に時間を割くなど、情報以外の活動に集中する時間を設けることも効果的です。デジタルデバイスを触るのは就寝2時間前まで、などのように習慣化してみるのもよいでしょう。
情報から距離を置くメリット
メンタルヘルスの向上
情報過多の社会では、偶然目にした情報がストレスとなり、不安を引き起こす可能性があります。情報のフィルタリングや情報オーバーロードの状態から距離を置くことで、心の余裕を持つことができます。しっかりと「休む」には、情報に適度な距離を置くことが重要です。
集中力と生産性の向上
情報過多の状態では注意散漫に陥り、集中力を保つことが難しくなります。情報から距離を置くことで、休むことに集中しやすくなるでしょう。
自分自身と向き合う
情報過多が続くと、他人の意見や情報に依存し、自分自身の考えを独自に発展させることが難しくなる場合があります。情報から距離を置くことで、自分自身の思考や思考を促進するための余裕が生まれます。
日光を浴びる
うつの症状が辛い時は、日光を浴びるのも大変効果的です。
2018年から2022年までの幸福度ランキングで連続1位を獲得したフィンランドは、うつをはじめとしたメンタル不調が社会問題となっている側面もあります。このことを背景に、国民のメンタルヘルス対策として、国はビタミンDの摂取を義務付けています。
ビタミンDとセロトニン
日光を浴びることで、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが生成されるほか、神経伝達物質のセロトニンを増やす働きがあります。日光は人間の健康にとって重要な役割を果たしているのです。
また、日光に含まれる紫外線B波は免疫細胞の活性化を促進し、炎症を軽減する効果があるため、免疫システムの強化にもつながります。
適度に浴びることが重要
日光を浴びる時間は15分から30分程度で朝が最適とされています。年々紫外線量は増加しており、特に夏は屋外で過ごすことにおいて注意が必要です。うつの症状が辛い時は、自宅のベランダなどで足に日光浴をさせるだけでも効果的です。
また、日光に過度に当たると熱中症のリスクがあるため、日差しの強い日は外出時に日焼け止めや帽子、日傘などを活用して外出を心がけましょう。
食生活の改善
食事は身体だけでなく、こころの健康にも影響を及ぼすため、食生活の改善は非常に重要と言えます。
ビタミンBとタンパク質
神経系の正常な機能を維持するために必要な栄養素であるビタミンB群や、細胞の成長と修復に不可欠であり、新しい組織や細胞を作り出す役割を果たすタンパク質などを積極的に摂取することも、非常に効果的と言えるでしょう。
カフェインとアルコール
カフェインは神経系に刺激を与え興奮状態を引き起こすことがあり、摂取量が過剰な場合は不安や神経過敏の原因になることもあります。カフェインの制限は、神経系のバランスを保つのにも効果的です。
また、うつ状態が辛いと感じている時期はよく眠れないなど、睡眠の問題を抱えていることが多く、アルコールの摂取が睡眠の質をさらに悪化させることがあります。アルコールを制限することで、睡眠の質の向上が期待されます。
自分の気持ちを優先する
うつの症状がよくなっているという実感がないまま、時間だけが過ぎてゆく。皆はちゃんと仕事をしているのに自分はどうしてこうなのだろうとあせることもあるかと思います。
また、休めと言われても、何もしないでいたら、かえってネガティブなことばかり考えてしまうという日もあるでしょう。うつの症状が辛いときは、生活や喜怒哀楽の感情も他人と比べないことが重要です。
一日が過ぎるのが早く感じることは多くの人が経験する感覚です。その不安を軽減するために、以下のアプローチを試してみることもよいでしょう。
他人と比較しない
例えば、「こんな美味しいものが食べれないなんて人生損してるよ!」などと言われた経験はないでしょうか。しかしこれはあくまでその人の主観であり、苦手な場合やアレルギーで食べられないという人も存在します。例えそれが食べられなくても人生を損はしていませんし、むしろ食べないほうがよい場合もあります。
もし、過去に言われたことがこころに引っ掛かっていたら、「そういう考えもあるんだな」という感じで受け流してみましょう。
周囲の目が気になるときは
休むときに周囲の目が気になることは、他の人々からの評価や批判への不安を示している可能性があります。
このような状況に対処するためには、信頼できるサポートやサービスを活用しましょう。オンラインカウンセリングなどのサービスでは、カウンセラーと話すことで自分の感情や不安を共有でき、より強い支えを得ることが期待できます。
カウンセリングを取り入れてみる
不安が続く場合は、プロのカウンセラーに相談してみることが大変効果的です。カウンセリングを受けることで、カウンセラーから具体的なアドバイスやサポートを得ることができます。
うつの症状が辛いと、自身の問題や課題に取り組むことが難しいと感じてしまいますが、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーは、カウンセリングを通じて悩みに寄り添いサポートをします。休み方が分からない、どう過ごしたらよいのか不安などで悩む時は、しっかりと「休む」ためのロードマップをカウンセラーとともに作成するのもよいでしょう。
まとめ
この記事では、うつの症状が辛い時の過ごし方を紹介しました。まずはしっかりと休むことを前提に、情報から距離を置くことや食生活の改善など、できるところから取り入れてみましょう。また、症状が辛く一人で抱えきれないときは、オンラインカウンセリングで相談することが有効です。
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