【サービス業のストレス】メンタル不調になる前に知っておきたいこと

サービス業は形のない「サービス」を通じて、暮らしやビジネスを多方面から支え、より豊かにする役割を担っています。

しかし従業員として働く場合は、他の業種ではあまり見られない特有のストレス要因が潜んでいる場合があります。お客様の笑顔のために日々奮闘する中で、知らず知らずのうちに心身の負担になっているかもしれません。

この記事では、サービス業で働く人々が直面しやすいストレス要因を事例で紹介し、心の健康を保つための効果的なヒントも合わせて紹介します。

【事例で見る】サービス業社員に起こりうるメンタル不調のサイン

サービス業に従事していて「ストレスを受け続けると、具体的にどうなるんだろう?」そんな疑問を感じている方もいるかもしれません。ここでは、サービス業で実際に起こりうる、メンタル不調のリアルなサインをいくつかの事例で紹介します。

事例1:飲食店店長Aさんの「朝起きられない」と「無気力感」

40代、男性。店長歴10年のAさん。 以前はどんなに忙しくても、翌日には気持ちを切り替えて仕事に臨み、リーダーシップを発揮していました。部下からの信頼も厚く、店舗の売上も常に目標をクリアしていました。

しかし、長く勤務していたアルバイトのHさんが、夫の転勤で急に辞めることになり、Aさんがシフトをカバーすることになりました。加えて売上が下がっている他店舗も管理することになり、残業時間が大幅に増加。

ここ半年ほど、朝目覚ましが鳴っても身体が鉛のように重く、どうしても起き上がれない日が増えてきました。無理に起き上がっても、職場に行くのが億劫で、重い足取りで出勤する日々。以前は楽しかった友人との飲み会といった休日の外出も減り、愛着のあった店舗の装飾やメニュー開発にも全く興味が持てなくなっています。

スムーズにできていた発注ミスやレジの締め忘れなど、些細なミスが頻発するようになりました。アルバイトやパートスタッフへの指示も曖昧になることが増え、スタッフの相談にも心ここにあらずの状態。「自分はもうダメな店長なのか…」「昔のようにはできない」と自己嫌悪に陥り、職場でも自宅でも笑顔を見せることが少なくなりました。夜も寝つきが悪く、何度も目が覚めてしまい、常に疲労感が抜けません。

Aさんの心境

「こんなこと、誰にも相談できない。弱音を吐いたら、頼りない店長だと思われる」「気合いが足りないだけなのかもしれない。もっと頑張らなきゃ、この店は潰れてしまうんだから、やり続けないと」

事例2:アパレル販売員Bさんの「食欲不振」と「不安感」

20代、女性。入社3年目のBさん。 明るい笑顔と丁寧な接客で活躍していました。しかし先日、お客様からの理不尽なクレームに長時間対応した際に、感情的な言葉を浴びせられ、上司からも「社員ならしっかり対応しろ」と叱責されたことが引き金となりました。

その夜から、食事をするたびに胃のあたりがムカムカし、吐き気を感じるようになりました。大好きな食べ物も喉を通らず、食欲もなくなり、体重も徐々に減少。仕事中も胃に痛みがあり、常に「またクレームが来たらどうしよう」「上司に怒られたらどうしよう」という漠然とした不安に襲われています。

夜中に仕事のことが頭から離れず、慢性的な睡眠不足に陥っています。日中も眠気が強く、サイズ間違いやレジ打ちミスが増えてしまいました。同僚との会話も減り、一人でいる時間が増えています。

Bさんの心境

「この吐き気は、もしかして病気なの?」「胃の不調はストレスのせいだとわかっているけど、どうにもならない。早くこの状況から逃げ出したい」

事例3:アミューズメント施設スタッフCさんの「イライラ」と「過剰な責任感」

30代、男性。ベテランのCさん。 常に周囲に気を配り、新しいスタッフへの指導も率先して行っていました。しかし、職場全体の人手不足が慢性化し、自身の業務負担が著しく増加。開園準備からアトラクションの運営、清掃、閉園作業まで、ほとんど一人で回しているような状況が続いています。

忙しさから、周りのアルバイトスタッフの些細なミスも以前よりも気になり、厳しく注意してしまうことが増えました。特に新人の覚えの悪さや、段取りの悪さにイライラが募り、つい強い口調で接してしまい、後で自己嫌悪に陥ることも。

常に神経が張り詰めているような感覚で、家でも些細な言動にイライラをぶつけてしまい、家族関係もギスギスするようになりました。休日も「施設の点検は大丈夫か」「明日のシフトの調整をしなければ」と、心からリラックスできる時間がありません。

Cさんの心境

「なんで俺ばかりこんなに大変なんだ」「みんなもっとしっかりやってくれれば、こんなに苦しまなくてもいいのに」「俺が頑張らないと、この施設の安全もクオリティも落ちる」

上記の事例のように、ストレスは様々な形で心身に影響を与えます。これらの症状は、一時的なものだと見過ごされがちですが、放置するとうつ病や適応障害、不安障害といったメンタルヘルス不調に繋がる可能性があるのです。

【サービス業のストレス】メンタル不調になる前に知っておきたいこと

代表的なメンタル不調の症状

まずは、メンタル不調の影響によって身体的に出る症状について見ていきましょう。

  • 慢性的な頭痛、偏頭痛
  • 胃痛、吐き気、下痢、便秘
  • 身体がだるいなどの慢性的な疲労感
  • 身体の緊張からくる肩や腰の痛み
  • ふわふわするようなめまいや立ちくらみ
  • 心臓がドキドキする、息苦しさを感じる
  • 特に顔や手などに突然、大量の汗をかく
  • 急激な体重増加または減少
  • 口の渇きや喉の違和感

次に、メンタルに出る症状です。

  • 気分の落ち込み・憂鬱感
  • 不安感・焦燥感: 漠然とした不安
  • イライラ・怒りっぽさ
  • 集中力の低下・思考力の減退
  • 無気力・意欲の低下
  • 興味の喪失・喜びを感じない
  • 自己否定・罪悪感
  • 涙もろくなる
  • 眠れない、眠りすぎるなどの睡眠障害
  • 普段ならしないような衝動的な行動
  • 人と会うのが億劫。外出を避ける

これらの症状にいくつか当てはまり、それが2週間以上続いているようであれば、専門家への相談を検討する時期かもしれません。

メンタル不調になる前にできること

長時間労働、不規則なシフト、人手不足のプレッシャーの中で、「自分のために時間を使う」こと自体が贅沢に思えたり、罪悪感を抱いたりすることもあるでしょう。しかし「ゆっくり休む」とは、まとまった時間や特別なことだけを指すのではありません。ここでは5分〜10分でできる、メンタルを整えるために効果的なヒントを紹介します。

「~すべき」を減らす

「疲れているのに、まだあれもこれもやらなきゃ」「もっと頑張るべきだ」と考えていませんか? こういった「〜すべき」という思考は、知らず知らずのうちに自分自身を追い詰めてしまいます。完璧を求めすぎず、できる範囲で大丈夫だと自分に言い聞かせましょう。例えば、

  • 「今日はここまででOK」と区切りをつける。
  • 「完璧じゃなくても、まずはやってみよう」とハードルを下げる。

というように、ひとつの行動に少しの「区切り」を設けることで、心が軽くなります。

「何もしない時間」を計画する

なかなか仕事中は心が休まる暇がないという時は、作業をしている空間から少し離れて歩いてみる、可能であれば飲み物を買いに数分外出する、など5分間のインターバルを設けることも効果的です。

また、休日でもやらなくてはならない事がある時でも、 「20分間は何もしない」と決めて、ベッドやソファでゴロゴロするだけでも良いのです。罪悪感を抱かず、ただ休むことに専念しましょう。

一人で抱え込まない

頭で理解していても実行することが難しい、どうしても仕事のことを考えてしまうという時は、一人で抱え込まず、誰かに頼ることも視野に入れてみましょう。

そのしんどさを「誰」に話す?

誰にも言えない辛さを感じているなら、その気持ちを話せる相手を見つけることが、ストレス軽減の第一歩になります。

信頼できる人に「しんどい」と伝える

上司や同僚、友人や家族など、「この人なら話を聞いてくれそう」と感じる人に、具体的な内容でなくても「最近、なんだかしんどいんだ」とシンプルに伝えるだけで、気持ちが軽くなることがあります。しかし、辛さを話したことで、相談相手の負担になるのではないかと考えてしまうこともあるため、なかなか相談しにくいと感じるケースもあります。

メンタルヘルスの専門家に相談する

気分の落ち込みなどの精神的な症状が強い場合は、カウンセリングの利用も検討してみましょう。メンタルヘルスの専門家が相談者の状況を理解し、適切なアドバイスや治療法を提案します。誰かに話したい、でも誰にも話せないと悩んでいる場合は、カウンセリングを受けることが効果的であるといえるでしょう。

カウンセリングで根本的な問題の改善へ

カウンセリングで自分自身の気持ちや状態を話すことで、漠然とした不安や混乱していた感情が整理され、見つめ直すきっかけになります。また、カウンセラーの客観的な視点を取り入れることで、問題の根本的な改善や解決が目指せます。

周囲に相談してもなかなか問題解決には至らないと感じている場合は、メンタルヘルスのプロに相談することで、仕事の悩みだけでにとどまらず、自分自身の思考の癖を知ることができるでしょう。

手軽に利用できるオンラインカウンセリング

近年はスマホやPCから手軽に利用できるオンラインカウンセリングも充実しています。オンラインカウンセリングはインターネット環境があれば、自宅や、職場の休憩時間など、どこからでもアクセス可能です。移動時間や交通費の心配もいりません。

誰にも言えずに抱え込んでいる悩みやストレスも、専門家に話すことで心が軽くなり、状況をより良い方向へ進めるきっかけになるでしょう。

【サービス業のストレス】メンタル不調になる前に知っておきたいこと

まとめ

サービス業の仕事は、お客様の笑顔を直接見ることができ、人々に喜びを提供する充実感など、他の仕事では味わえない大きなやりがいがあります。しかし、その一方で心身に負担がかかることも少なくありません。もしあなたがストレスを感じているなら、そのサインを見逃さず、自分を大切にする一歩を踏み出すことが何よりも重要です。

オンラインカウンセリングは、あなたの心の健康を守るための有効な選択肢の一つです。もし少しでも「しんどいな」と感じたら、一人で抱え込まず、専門家に話してみませんか。

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