事例から考える「製造業の見えないストレス」と心の守り方

日本の経済を支える基盤として、多くの人々が製造業の現場で日々、ものづくりに真摯に向き合っています。しかし成果の裏には、目に見えにくい精神的な負担が潜んでいることをご存知でしょうか。

この記事では、具体的な事例を通して製造業のストレスを紹介し、ストレスから心を守る方法や、カウンセリングの効果についても解説します。

数字で見る製造業のストレス

まず、日本の製造業が抱えるストレスの現状を、データで見てみましょう。

「メンタルヘルス不調による連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた割合」のグラフを見ると、製造業は18.6%と、17の産業別割合の中では7位となっています。

2024年度「「メンタルヘルス不調による連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた割合」

厚生労働省 2024年度労働安全衛生調査(実態調査)第1表を参考に作成

しかし、「2024年度過労死等の労災補償状況 業種別支給決定件数一覧(精神障害)」のグラフを見ると、製造業は精神障害による労災支給決定件数が161件と、医療・福祉に次いで2番目に多い件数となっています。

2024年度過労死等の労災補償状況 業種別支給決定件数一覧(精神障害)

厚生労働省 2024年度「過労死等の労災補償状況」表2-2を参考に作成

製造業は過労死まで至るケースが11の業種の中でも多く、深刻な状況に陥る場合があることは見逃せません。

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事例で見る製造業の「見えないストレス」

製造業のストレスは、さまざまな形で現れます。

  1. 環境的ストレス
  2. プレッシャー
  3. 身体的・時間的負担

この章では具体的な3つの事例を通して、その実態を見ていきましょう。

例1:【環境的ストレス】絶え間ない騒音と振動による心身の疲弊

20代男性のAさんは、鉄骨加工工場で働き始めて一年が経ちました。工場内は常に金属を叩く甲高い音や機械の轟音が響き、足元には絶えず振動が伝わってきます。

少し体調を崩した際に、無理をして出勤した後から、プライベートでも「音がうるさくて集中できない」と思うことが増えていきました。

休暇中の違和感と止まらない耳鳴り

連休で実家に帰省した際、久しぶりに静かで穏やかな時間を過ごしていましたが、ふと気づくと、耳の奥で「キーン」という高い耳鳴りが鳴りやみません。

初めは「疲れているからだろう」と気にしませんでしたが、休暇が明けて自宅に戻ってからも、その音は日に日に大きくなりました。夜になっても耳鳴りは収まらず、なかなか寝つけません。無理に眠ろうとすればするほど、目が冴えてしまうのです。睡眠不足になると、日中も頭がぼんやりして集中できず、身体がだるい状態が続くようになりました。

日常生活での明らかな変化

「おかしい」とAさんが気づいたのは、友人とのカフェでの出来事でした。 遠くの工事の音や、近くのテーブルの話し声が気になってしまい、会話に集中できない自分に気づいたのです。

自宅にいても、近所の車の音や上の階の足音にイライラし、怒りの感情がこみ上げてくるようになりました。以前は穏やかだった性格が、音に対して過敏になり、常に神経が張り詰めているような状態に。

Aさんは「また明日もあの場所に行かなければいけないのか」と思うと、胸が苦しくなり、心身ともに限界を感じ始めました。

例2:【プレッシャー】危険物取扱への重圧と恐怖

40代男性のBさんは、化学薬品工場で危険物取扱を担当するベテランです。化学薬品の配合や、特定の温度で反応させるための監視・操作。長年の経験から、マニュアル通りの作業は問題なくこなしていました。

仕事のプレッシャーが生活に影響

ある日、新しい薬品の製造が始まることになり、彼は極度の緊張状態に陥ります。勤務時間中に何度もマニュアルを読み返し、少しでも手順に間違いがないか、異常な反応が起きていないかを、神経を研ぎ澄ませてチェックしました。

しかし、マニュアルは厳重な社外秘のため、持ち出しは厳禁。責任感が強いBさんにとって、終業後にマニュアルを読み込んで復習できないことが大きなストレスとなっていました。

逃れられない不安と孤独感

Bさんの緊張と不安がピークに達したのは、自宅でテレビを見ていた時のことでした。ニュースで化学工場の火災事故が報道されると、自分も同じようなミスを犯すのではないかという強い不安に襲われ、それからというもの、頭から事故の映像が離れなくなりました。

夜中にふと目が覚めると、「あのバルブは本当に閉まっていたか?」「薬品の量は間違えていなかったか?」という疑念が頭の中を駆け巡り、再び眠ることができませんでした。この恐怖を同僚に話しても、「考えすぎだよ」「ベテランなんだから大丈夫だ」と軽く流されてしまい、誰にも理解してもらえないと感じ、精神的に追い詰められていきました。

例3:【身体的・時間的負担】不規則な夜勤・交代制勤務

50代男性のDさんは、化学工場で3交代制のシフト勤務をしています。勤続20年以上のベテランですが、定年が近づくにつれて、肉体的・精神的な負担が大きくなっていることを自覚し始めました。

心と身体の疲弊

Dさん自身、体力や身体の丈夫さには自信がありましたが、今日は異常に疲れるなと感じる日がありました、それは、3日、一週間、一か月と続き、休日でも回復しないことにイライラするようになっていきます。

日勤、準夜勤、夜勤とシフトが変わるたびに、睡眠時間や食事時間もバラバラになり、身体のリズムが完全に狂ってしまいました。

突然訪れた虚無感

Dさんが「もう無理だ」と悟ったのは、夜勤明けの朝でした。 太陽が昇るのを見ながら一人で帰宅していると、突如として強い孤独感と不安に襲われ、涙が止まらなくなったのです。

昔は当たり前だった、仕事後の爽快感や達成感が全く感じられず、「自分は何のために働いているのだろう」という虚無感に襲われました。心身ともに限界を迎えていると感じた瞬間でした。

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メンタル不調になる前に知ってほしいこと

事例からわかるように、製造業には特有の見えないストレスが存在します。しかし、なぜ多くの人がそれを一人で抱え込んでしまうのでしょうか。

「相談しにくい」職場文化の背景

交代制やチームで作業を行う製造業の現場では、自分が休むことで他のメンバーに負担をかけてしまうという懸念から、不調を抱えていても無理をして出勤し、症状を悪化させてしまうことがあります。

さらに、イライラや不眠といった精神的な不調のサインは、目に見えないため、本人も周囲も「一時的なものだろう」と見過ごしてしまうケースが少なくありません。

製造業の現場では、「これくらいで相談するのは大げさだ」と感じ、助けを求めることへの心理的なハードルが高まるケースもあります。

真面目で責任感が強い人ほど、問題が深刻化するまで自分を追い込んでしまうことがあるのです。そんな時こそ、カウンセリングという選択肢を検討してみてください。

抱え込んでいる気持ちを誰かに話すことで、気持ちが楽になります。

カウンセリングの第一歩は「話す」ということ

カウンセリングは、特別な準備は何もいりません。ただ、あなたの今の気持ちを、そのまま言葉にするだけで大丈夫です。メンタルヘルスのプロであるカウンセラーは、話を否定することなく、じっくりと耳を傾けます。

カウンセリングで話すことで本当の気持ちに気づいたり、心が少し軽くなったりするのを感じられるでしょう。

スマホから簡単予約でカウンセリングが受けられる

「相談したいけれど、どこに行けばいいかわからない」「仕事が忙しくて、カウンセリングに行く時間がない」という場合は、仕事や生活のリズムを崩さずに利用できるオンラインカウンセリングがおすすめです。

スマートフォンやPCがあれば、自宅などのリラックスできる場所から、自分のペースで心の状態を整理できます。まずは「試しに話してみようかな」という、気軽な気持ちで、一歩踏み出してみてはどうでしょうか。

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まとめ

製造業の現場で働く人々が抱えるストレスは、目に見えにくく、一人で抱え込むケースがあります。責任感や「これくらいで」という気持ちから、メンタル不調を放置してしまうこともあるでしょう。

「おかしいな」「なんだか疲れているな」と感じた時、それは心が休息を求めているサインです。一人で抱え込まず、早めに専門家への相談を検討することが大切です。

また、オンラインカウンセリングは、仕事や生活のリズムを崩さずに、安心できる場所から利用できます。製造業の現場では話しにくい、でも誰かに話したいと思ったら、オンラインカウンセリングを検討してみてはいかがでしょうか。

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