仕事の悩み

【医師監修】部下が「うつ」かもしれない時の接し方と上司としての対応を詳しく紹介

部下のメンタルヘルス不調を見逃さないためには、上司としてどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

この記事では、上司の立場から部下が「うつ」かも知れないと悩むあなたに向けて、対応や接し方のポイントを紹介していきます。

監修医師


宮田 俊男 (Toshio MIYATA)

医師、博士(医学)、産業医
大阪大学医学部医学科卒業
早稲田大学理工学術院先端生命医科学センター(TWIns)教授
医療法人社団DEN みいクリニック代々木、みいクリニックみのお理事長

厚生労働省参与として国に助言するとともに、地域医療を推進するため、医療法人を経営し、企業の健康経営や多くの社員、役員のカウンセリング、社員の生活習慣病の重症化予防、病児保育、オンライン診療、医療DXにも取り組んでいる。出演番組の実績も多数。

メンタルヘルス不調で現れる職場での変化とは

メンタル面における不調は、部下本人でも気づきにくいケースもあります。

部下のメンタルヘルス不調の兆候を見逃さないためにも、まずは現れる変化を知っておきましょう。

仕事に対する変化

業務の進め方が変わった

今までは細かい箇所まで念入りにチェックをしながら業務を進めていた部下が、大雑把な確認だけで報告を上げるようになった。

仕事は質より量といったスタンスだった部下が、以前の数倍以上時間をかけて業務をするようになった。

通常の進め方であればミスが起こらないような箇所で何度もつまずくなど、日を追うごとにミスが目立つようになる。

このように、今までの仕事の仕方と明らかに違うと感じるようであれば、注意が必要です。

勤務に対する変化

身だしなみの変化

髪の毛に寝ぐせがついたまま出社をし、退社まで気にする様子がなかった。

スーツやシャツにシワがあり、以前よりも清潔感が失われたように感じる。

このように、部下の身だしなみに乱れが生じていたり、清潔感に欠けている場合は、メンタルヘルス不調の兆候かもしれません。

部下が自己管理や日常生活のおいても問題を抱えている可能性が高いため、サポートや理解が必要です。

人間関係の変化

確認できる範囲でも、部下の職場における人間関係が変化したことが分かる。

極端に他従業員との接触を避けたがる傾向があり、周囲に人がいると落ち着かない様子を見せることがある。

以前よりも就業時間中のコミュニケーションが減り、離席している時間が長くなった。座席の移動もしくは他部署への異動を強く希望するようになった。

職場での人間関係で悩むビジネスパーソンは非常に多く、上司が部下一人ひとりの人間関係の変化に気づくことは、難しいケースも多いようです。

もしも、業務自体に大きな問題がないにも関わらず、特定の従業員などを避けている傾向があれば、部下を注意深く観察しましょう。

感情の変化

感情の波が激しく一日で何度も気分に変化が生じている。

以前よりも怒りっぽく、小さなことでもイライラしているように見える。

部下が以前よりも無気力で、業務への情熱ややる気が感じられない。

朝は気分が乗らないような表情だったが、昼になると突然ハイテンションになるなど、客観的に見ても一日の中で大きく感情の変化がある場合は、部下がメンタルヘルスの問題を抱えている可能性が高いと考えられます。

では、このように部下の行動や様子がいつもと違うと感じたら、上司の立場からはどのようなサポートをしていけばよいのでしょうか。

整備したい職場環境

部下が「うつ」状態などのメンタルヘルス不調に陥っている場合、企業全体で職場環境の整備に取り組むことが重要です。

その中でも、マネジメントする立場である上司ができるサポートを見ていきましょう。

開かれたコミュニケーション

まず、部下が上司に相談しやすい環境や雰囲気を整えましょう。

「困ったことや何かあれば連絡を」ではなく「いつでも話を聴く」というスタンスを示しておくとよいでしょう。

開かれたコミュニケーションは、従業員が意見や問題を自由に発言できる環境づくりにつながります。

オープンドアポリシー

オープンドアポリシーとは、部下が相談しやすい環境を意味します。

また、直接の会話だけではなく、メール、電話、チャット、ビデオ通話など、部下が使いやすい方法で連絡を取れるようにしておくことも効果的です。

なお、比較的レスポンスが早いチャットなどでは、やりとりがエスカレートすることも考えられますので、ハラスメントにつながるケースに留意し、送信する前に一呼吸置いて内容を確認することが大切です。

心理的負荷に対する配慮

ストレスや心理的な負荷を抱える部下に対して、注意深く声をかけましょう。

また、従業員一人ひとりが適切な仕事量で作業できるように、業務負担を公平に管理することも重要になってきます。

その上で、定期的な休憩や休息時間の確保を奨励し、業務中に適切なリフレッシュを行えるようサポートしていきます。

声掛けのタイミングは「就業時間内」

部下へ声掛けを行う場合は、就業時間中に行うのがポイントです。

出社直後や休憩中、退社前などはできるだけ避け、業務の合間などに声掛けを行ってみましょう。

また、就業時間外となる退社後に、飲み会などに部下を誘い話を聞こうと声掛けを行う場合は、酒の席では思わぬハラスメントにつながる可能性があるこに留意しておきましょう。

部下の話を「聴く」

部下の話を聴くことは非常に重要です。

話に注意を払い、理解し、共感することで、部下はより集中して話すことができます。上司が真剣に聞いてくれていると感じると、信頼関係が構築されます。

また、話をしている段階で部下が感情的である場合は冷静に対応し、中断をせずに話を最後まで聴くことが最大のポイントです。

決断は避ける

話を聴いている段階では極力決めつけることは避け、部下の感情や意見を尊重し相手の視点を理解する姿勢を取ることが重要です。

また、話を聴いた後も適切な部下とのコミュニケーションを継続していき、部下が話せる場を再度設定するとよいでしょう。

接する際に気をつけたい5つのポイント

この章では、メンタルヘルス不調の部下に接する際に気を付けたいポイントを紹介していきます。

  1. 部下と他者との比較を避ける
  2. 部下の価値観を尊重する
  3. 柔軟性のある対応を心がける
  4. 組織目標との調和
  5. 部下のプライバシーを尊重する

1つずつ順番に見ていきましょう。

1.自分や他者との比較を避ける

部下の状況や経験を、過去の自分の経験や時代と比較せずに理解していきましょう。

例えば、部下が社内ルールに適応できず苦戦している場合、自分の時代はこうだった、今までの従業員もこうしてきたなどの比較は避けましょう。

気を付けたいポイントとしては、部下が持っている課題感に焦点を当てて、サポートをしていくことです。

過去との比較ではなく、現在置かれている状況にフォーカスすることは、部下が何に対して悩んでいるのかを知る上で重要です。

2.部下の価値観を尊重する

異なる価値観とのすりあわせを行うことは簡単ではありませんが、部下の価値観や信念を尊重していきましょう。

異なる視点やアイディアを受け入れることで、部下との信頼関係が構築され、部下も上司の価値観を理解することが期待できます。

3.柔軟性のある対応を心がける

部下のメンタルヘルス不調に対応するためには、勤務スケジュールや仕事の割り当てに柔軟な対応ができるかを考慮していきましょう。

部下にイレギュラーな調整が必要な場合でも、柔軟性を発揮してそのニーズにできる限り応えることが大切です。

4.組織目標との調和

メンタルヘルス不調の部下をサポートしていく中で、上司は組織目標や業務の進行も考えていかなければなりません。

部下の意見や感情を尊重しながらも、組織の目標や方針との調和を考慮することはリーダシップスキルの中でも非常に大きな役割を担います。

組織の一員としての目標も達成しつつ部下との信頼を築き、組織の成功に向けて進むためのバランスを取るアプローチを探っていきましょう。

5.部下のプライバシーを尊重する

最後は、プライバシーの尊重です。

部下のメンタルヘルスの問題の話を聞く際は、情報を慎重に取り扱っていきます。また、無理に詳細を聞き出すことはせず、プライバシーを尊重しましょう。

部下が自分のペースで情報を共有することで、信頼関係が築かれることが期待できます。

なお、プライバシーの中でも病気に関する情報は特に、外部や他者などに漏洩した際には大きなトラブルに発展するケースも考えられますので、時には人事部や産業医と連携していくことも重要であるといえます。

数字でみる「メンタル不調」の原因

総務省が2021年に行った「地方公務員のメンタル不調による休務者及び対策の状況」の、「休務に至った主な理由」では、職場の人間関係(上司、同僚、部下が)が60.7パーセントと非常に高い割合となっています。

しかし、メンタルヘルス不調はひとつの原因だけではなく、複合的な要因が重なることで起こるとされています。

総務省 2021年「地方公務員のメンタル不調による休務者及び対策の状況」5ページ目のグラフを加工して作成

では、職場の人間関係を良好に保つために必要なのは、どのような事なのでしょうか。

信頼関係の築き方

日頃コミュニケーションを取っていない上司からいきなり、「大丈夫か?」と言われても、ほとんどの部下は「大丈夫です」と返事をするでしょう。

職場での人間関係において、上司と部下の間で築かれる「信頼関係」は非常に大きな意味を持っています。

認める力を活かす

部下に対して、「自分はあなたの味方であり、認めている」ということをしっかりと伝えることが重要です。

上司から以前よりも成長しているところなどを評価されることで、自分の仕事をしっかりと見てくれていると、部下は安心して仕事をすることができます。

部下との関係性は「信頼の積み重ね」

人がサボる時の心理として「今日頑張っても、頑張らなくても同じ」というものがあります。

誰かが見ていなくても次につながるように仕事を頑張れるのは、社内の同僚や先輩、そして上司にしっかりと評価されているからに他なりません。

給与をもらって仕事をしているのだから、会社に還元できるように頑張って当然、と思う方も中にはいるでしょう。しかし、全てにおいて「当たり前」ということはないのです。

仕事はできて当然、そんなのはやって当たり前と切り捨てず、部下ができていることに対して認める姿勢を取っていきましょう。

「信頼関係」の構築は職場の基盤

「信頼関係」は、職場の基盤を築く重要な要素です。

部下が上司に信頼を寄せ、お互いにサポートし合う雰囲気がある職場では、生産性が向上し、メンタルヘルス不調の予防にもつながっています。

頑張る上司こそ利用したいオンラインカウンセリング

メンタルヘルス不調の部下をサポートする上司も人間であり、職場でのプレッシャーや責任を抱えています。

役職が上がればそのぶん責任や業務量も増えるだけでなく、様々な面でストレスを感じる場面が増えていくでしょう。

部下をサポートする立場である上司のストレスが適切に管理されない場合、組織全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、メンタルヘルスケアは非常に重要です。

カウンセリングを受ける事でストレスの軽減につながる

カウンセリングはストレスや不安を軽減するのに役立ちます。

また、部下をサポートする立場である上司がオンラインカウンセリングを受けることで、ストレスの軽減に役立ち心が安定するので、効果的なリーダーシップを発揮できる可能性も高まります。

自己認識とコミュニケーションスキルが向上することで、チームメンバーや部下との関係も良好になることが期待できるでしょう。

上司として頑張るあなたのメンタルヘルスケアとして

ストレスでメンタルヘルス不調に陥る前にカウンセリングを受けることで、より深刻な問題を予防することができ、定期的なカウンセリングは、長期的なストレス管理にもつながります。

上司という立場上、社内や家族には相談しにくいことも

業務だけではなく、部下のメンタルヘルスにも配慮をしながらマネジメントをする立場上、社内で相談できることもなく、家族にも話す事ができないのではないでしょうか。

オンラインカウンセリングは、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーに話をすることができます。

部下や仕事の悩みで自分自身が参ってしまいそうだと感じていたら、オンラインカウンセリングを利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

この記事では、部下が「うつ」かもしれない時の対応や接し方のポイントを紹介しました。

部下のメンタルヘルス不調に対処する際、上司は注意深く接し、信頼関係を築くことが不可欠です。

また、部下をサポートする立場の上司自身のメンタルヘルスをケアするために、オンラインカウンセリングを利用することを検討してみましょう。

うつの症状の悩みを相談できる
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ご自宅から、専門性の高いカウンセラーからのカウンセリングを受けられます。

メザニン登録カウンセラー
平井 綾乃 Ayano HIRAI
臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント

うつ病や適応障害による休職・復職支援、EAPと連携した高ストレス該当者のフォローアップなどの経験が豊富です。

【メッセージ】
いまのあなたにとっての「無理しないでね」を一緒に考えます。
悩み事が出口の見えないトンネルとするならば、そのトンネルの出口までの道標としてお役に立ちたいと思っています。

普段は心療内科クリニックやスクールでカウンセリング業務を行っています。