【医師監修】部下が「うつ」かもしれない時の接し方と上司としての対応を詳しく紹介

【本記事の監修】

    宮田 俊男先生(医師、博士(医学)、産業医)
  • 早稲田大学理工学術院先端生命医科学センター(TWIns)教授 医療法人社団DEN みいクリニック代々木、みいクリニックみのお理事長
  • 企業の健康経営や多くの社員、役員のカウンセリング、社員の生活習慣病の重症化予防、病児保育、オンライン診療、医療DXにも取り組んでいる。出演番組の実績も多数。

部下の様子がいつもと違う、もしかして「うつ」かもしれない……。

そう感じたとき、どのように接すればよいのかと悩む管理職は少なくありません。対応を一歩間違えると、部下の状態をさらに悪化させたり、ハラスメントだと受け取られたりするリスクもあります。

この記事では、部下のメンタルヘルス不調を見逃さないための前兆や、現場でそのまま使える「具体対応・OK/NG声かけフレーズ」、産業医や人事との正しい連携フロー、さらには復職支援のポイントや、管理者自身がメンタル不調にならないためのセルフケアまでを詳しく解説します。

1.【チェックリスト】部下の「うつ・メンタル不調」を見逃さない4つのSOSシグナル

メンタルヘルス不調は、部下本人も無自覚なケースが非常に多く存在します。「最近なんだかおかしいな」と感じたら、日頃の観察で以下の行動や状態の変化が出ていないかチェックしてみましょう。

変化のカテゴリ 具体的に現れる兆候・行動の例 背景にある心理・身体状態 危険度
1. 仕事の質・量・プロセスの変化 ・簡単な業務でケアレスミスや書類作成の誤字脱字が急増した
・確認が大雑把になった、あるいは1つの作業に過剰な時間をかけるようになった
・優先順位がつけられず、判断力や決断力が著しく低下している
・報告・連絡・相談の「報連相」頻度が急激に減った
思考力・集中力の低下、脳疲労、キャパシティオーバー 中〜高
2. 勤怠・勤務態勢・身だしなみの変化 ・遅刻、早退、特に月曜日や連休明けの欠勤が増えた
・服装のシワや乱れ、髪の寝ぐせ、髭の剃り残しなど清潔感が失われた
・以前に比べて体臭や口臭の変化が気になり始めた
・顔色が悪い、急激な体重の減少または増加
睡眠障害(不眠・過眠)、生活リズムの乱れ
3. 人間関係・行動パターンの変化 ・周囲との会話や雑談を避けるようになり、自分の殻に閉じこもる
・離席している時間が長くなった、トイレに行く回数が異常に増えた
・座席の移動や他部署への異動、リモートワークの継続を強く希望する
・挨拶をしても反応が薄い、目を合わせようとしない
心理的対人恐怖、周囲の刺激に対する回避行動、孤立感 中〜高
4. 感情・表情・発言の変化 ・イライラしやすく怒りっぽい、小さな指摘で極端に落ち込む
・表情が乏しく常にぼんやりしている、あるいは涙ぐむことがある
・「自分なんて」「もう無理です」といったネガティブな発言が増えた
・朝は無気力だが夕方から元気など、気分の波が激しい
感情コントロール機能の低下、抑うつ気分、自己肯定感の低下

2.現場で今すぐ使える 面談の進め方と「OK・NG声かけフレーズ集」

部下の異変に気づいたとき、上司はどのようにアプローチすればよいのでしょうか。ここでは、面談の設定から実際の声かけのフレーズ、やってはいけないNG対応までを具体的に解説します。

ステップ1:声かけと面談環境の準備

声かけを行う際は、配慮とタイミングが非常に重要です。以下のルールを守って場を設定しましょう。

  • タイミングは「就業時間内」:出社直後や退社間際ではなく、業務時間の合間や部下の業務予定が落ち着いた時間に「少し話せるかな」と個別に声をかけます。
  • 退社後の飲みに誘うのは絶対NG:「酒の席で本音を聞こう」とするのは、アルハラ・セクハラなどのハラスメントリスクを高めることや、相手にさらなる負担を与えるため厳禁です。
  • プライバシーが確保できる個室を用意:周囲の目が届かない会議室や、オンライン面談(1対1)を利用します。

ステップ2:場面別「OK・NG声かけフレーズ集」

実際に面談で使える会話の例をまとめました。上司の主観や感情を挟まず、相手の事実と感情に寄り添うアプローチがポイントです。

場面・状況 ❌やってはいけないNG例(原因とリスク) ⭕ 望ましいOK例(相手の安心感を生むアプローチ)
1. 面談への打診(切り出し) 「最近たるんでるけど何かあった?今から飲みに行って話すか?」
※非難されていると感じ、警戒心を高める
「最近少し疲れているように見えたので、心配になって声をかけたよ。もし差し支えなければ、体調について10分ほど静かな会議室で話せるかな」
※心配しているという事実(iメッセージ)を伝える
2. 悩みの傾聴(共感) 「私の若い頃はもっと大変だったよ。誰でも通る道だから甘えないで頑張ろう。」
※相手の苦しみを否定し、孤立させる
「そう感じていたんだね。今まで辛かったね。話してくれてありがとう。今のあなたの状況を一緒に整理していこう。」
※否定せず感謝を伝え、共感する
3. ミスや遅刻への指摘 「なんでこんな凡ミスばかりするの?やる気がないなら困るんだけど。」
※問い詰めても脳疲労状態では回答できない
「最近ミスや遅刻が増えているけれど、体調や業務量で何か負担になっていることはないかな?」
※人を責めるのではなく「状況・環境」に焦点を当てる
4. 今後の対応の検討 「来週からすぐ休職しよう!仕事を半分にするからもう来なくていいよ。」
※上司が勝手に決断・強制する
「今は焦って重大な決断(退職など)をする必要はないよ。まずは業務の調整をしつつ、専門医や人事への相談を一緒に考えよう。」
※安全網を提示し、選択肢を与える

3.接する際に必ず守るべき「5つの基本原則」

メンタル不調の部下と接する際、上司が心に留めておくべき5つの原則があります。

  1. 自分や他者との「過去・現状」の比較を避ける:「昔はこうだった」「同期の〇〇さんはできている」といった比較は、部下の自己否定感を強めるだけです。部下が直面している「現在の課題」のみに焦点を当てます。
  2. 部下の価値観や信念を尊重する:「仕事はこうあるべき」という自分の価値観を押し付けず、相手の感じ方や苦しさをありのまま受け入れます。
  3. 柔軟性のある対応を心がける:急な業務内容の変更、一時的なタスク軽減、勤務スケジュールの調整など、柔軟に対応できる余地を残しておきます。
  4. 組織目標とのバランスを取る:部下に配慮するあまり、他のチームメンバーに過度な負担が偏らないよう、上司自身が全体管理を行い、必要に応じて人事へ相談します。
  5. プライバシーを徹底的に保護する:部下の健康状態やメンタルの悩みは極めて機密性の高い個人情報です。本人の同意なく他部署の社員や周囲に漏洩することは絶対に避けましょう。

4.1人で抱え込まない!「社内・外部専門家」との正しい連携手順

部下のメンタルヘルス対応において上司の役割は「「気づき・繋ぎ・環境調整」です。この章では、社内と外部との連携についてみていきましょう。

連携の3ステップフロー

ステップ1.本人の意思を確認しつつ、産業医・人事へつなぐ準備をする

面談で状況を確認したら、「一人で抱え込まず、専門知識のある産業医や人事部に相談してみないか?」と本人に提案し、了解を得ます。
※なお、本人が躊躇する場合や急を要する場合でも、管理職の「安全配慮義務」に基づき、部下の状況について産業医や保健師に事前に相談・報告することは可能です。

ステップ2.社内のサポート窓口へ相談(人事・産業医)


人事部や産業医、保健師へ状況を報告します。医療機関への受診勧奨や、休職・勤務緩和の手続きは専門部署に主導してもらいましょう。

ステップ3.職場環境の再構築


産業医の意見書や診断書に基づき、上司は業務量の削減や配置転換などの現場環境の調整を行います。

5.【新設】休職から復職までのロードマップと「復帰後の正しい接し方」

部下が休職に入った場合、または医療機関を受診しながら勤務を継続する場合、復職・定着に向けたサポートも上司の大切な役割です。

休職中・復職プロセスの配慮

  • 休職中の連絡は「人事窓口」に一本化する:上司が頻繁に「体調はどう?いつ戻れそう?」と連絡すると、プレッシャーを与えて復帰が遅れます。連絡窓口は人事部に一任し、上司からの連絡は原則控えましょう。
  • 復職直後は「ならし勤務」を徹底する:復職初期は、以前と同じパフォーマンスを期待してはいけません。業務量を30〜50%程度に抑え、残業や出張、責任の重いタスクは避けます。
  • 「特別扱い」ではなく「必要な配慮」を行う:周囲のメンバーにも復職後の配慮事項(残業制限など)を適切に共有し、職場全体で温かく迎える雰囲気を整えます。

6.上司自身がメンタル不調にならないために~セルフケアの重要性

部下のメンタルヘルス不調に対応する上司自身も、通常業務に加えて精神的なプレッシャーや責任を背負い込むことになります。上司の立場であるあなたがメンタル不調にならないためにセルフケアをみていきましょう。

上司が活用すべきセルフケア&相談窓口

「自分がしっかりしなければ」「部下を追い詰めてしまったのではないか」と自分を責める必要はありません。上司自身も以下のような相談先を積極的に活用してください。

  • 社内の産業医・衛生管理者への相談:マネジメント上の悩みやメンタル面の負担についてアドバイスを受ける。
  • 外部のオンラインカウンセリングサービス:社内や家族には話しにくい「管理職特有のストレスや孤独」を、第三者のプロ(臨床心理士や公認心理師)に匿名で相談し、心の整理を行う。
  • EAP(従業員支援プログラム)の利用:会社が導入している外部相談機関を活用する。

定期的にカウンセリングなどを利用して自身のストレス状態を客観視することは、持続可能なマネジメントと強いチームづくりにおいて非常に有効な選択肢です。

まとめ

部下の「うつ」やメンタルヘルス不調の兆候に気づいたら、焦らず・責めず・決めつけず、安全な環境で相手の不調と感情に「傾聴」することが第一歩です。

そして最も重要なのは、上司が1人で抱え込まず、人事・産業医・外部のカウンセリングサービスなどの専門家と連携することです。部下の健康を守ると同時に、自分自身のメンタルヘルスケアにも気を配りながら、適切な職場環境を整えていきましょう。

監修医師

宮田 俊男 Toshio MIYATA

医師、博士(医学)、産業医

大阪大学医学部医学科卒業 早稲田大学理工学術院先端生命医科学センター(TWIns)教授 医療法人社団DEN みいクリニック代々木、みいクリニックみのお理事長 厚生労働省参与として国に助言するとともに、地域医療を推進するため、医療法人を経営し、企業の健康経営や多くの社員、役員のカウンセリング、社員の生活習慣病の重症化予防、病児保育、オンライン診療、医療DXにも取り組んでいる。出演番組の実績も多数。

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