「アスペルガー症候群」の上司や部下が職場にいたら?接し方のポイントを解説

職場でのコミュニケーションは、仕事の効率だけではなく、成果にも直結する重要な要素です。概して「場の空気を読む」ことが苦手といわれる、アスペルガー症候群の上司や部下と一緒に働く際には、理解と工夫が必要であるといえます。

そこで今回の記事では、アスペルガー症候群の特性を理解し、コミュニケーションを図るための効果的な接し方を紹介します。アスペルガー症候群の上司や部下との接し方に悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてください。

アスペルガー症候群とは

アスペルガー症候群は知能や言語の発達に遅れがない点が特徴で、社会性やコミュニケーション能力、想像力、共感性に困難を抱えることが多く、特定のこだわりや感覚過敏という特性があります。

アスペルガー症候群の職場での主な特徴

1. コミュニケーションの困難さ

アスペルガー症候群の従業員は、他者の感情や意図を読み取るのが難しい傾向があるため、冗談や皮肉を理解できず、会話がかみ合わない場合があります。

2. 興味の偏り

特定の分野に強い興味を持ち、こだわりが強いのもアスペルガー症候群の大きな特性として挙げられます。

また、ルーティンや秩序を重んじる傾向があり、変化に対しては困難を感じることがあります。

3. 感覚過敏

騒音や強い光、触覚に対して過敏に反応することがあり、オフィスの環境や業務の進め方にストレスを感じることがあります。

しかし、上記の特徴がアスペルガー症候群の方全員に見られるわけではありません。アスペルガー症候群の上司や部下が、どのような特性を持っているかによって、対応や接し方も違ってくるでしょう。

本人がアスペルガー症候群だと気づいていないケースも

職場で一緒に働く上司や部下が、アスペルガー症候群であると自覚していないケースもあります。

自己評価と他者からの評価の違い
  • 自分のコミュニケーションスタイルや対人スキルに問題がないと感じていても、他者との間に摩擦が生じることがある。
行動の特徴に対する認識の欠如
  • 特定のルーティンや手順に強いこだわりがあっても、それをアスペルガー症候群の特性だとは認識せず、「自分がこうやってやりたいだけ」と考えている。
感覚過敏やストレス反応
  • 環境の変化や刺激に対して強いストレスを感じるが、それが感覚過敏だとは気づかず、「単に神経質なだけ」と自己評価している。
興味の集中に対する認識
  • 特定の分野や活動に異常なほどの集中を見せても、それをアスペルガー症候群の特性であると認識せず、「ただの趣味や興味」として捉えている。
社会的スキルの困難さ
  • 社交的な場面での適切な反応や振る舞いに困難を感じても、それが他者との違いではなく「自分の性格の一部」として理解している。


自身の傾向を他者と異なると自覚することは簡単ではありませんが、アスペルガー症候群の特性を持つ場合は、他者のわずかな変化などに気づくことが得意ではないため、周囲と異なっていると自覚することが難しいとされています。

周囲も「固定観念」にとらわれないことが必要

アスペルガー症候群の特性の有無に関わらず、人は誰しも他者との違いを持ち合わせています。

アスペルガーだからこういう特性を持っている、というような固定観念を持つことは避け、会社という組織にはさまざまな年代や背景を持つ、多くの従業員が所属しているという視点で接していくとよいでしょう。

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仕事における対人関係のストレスは増加傾向に

厚生労働省がまとめた労働安全衛生調査(実態調査)の「仕事や職業生活に関する強いストレスの有無」の中から「対人関係の割合の推移」をみてみると、2020年から2022年までは減少傾向にありましたが、2023年には再び増加しています。

これは、新型コロナウイルスの影響によって導入されたテレワークや時差出勤などが解除され、通常の出勤形態に戻ったことも影響しているかもしれません。
対人関係(セクハラ・パワハラを含む)の割合の推移
厚生労働省 労働安全衛生調査(実態調査)を参考に作成

では、アスペルガー症候群の上司や部下には、どのように接していけばよいのかを、次の章で詳しくみていきましょう。

アスペルガー症候群の上司への接し方

まず、アスペルガー症候群の上司への接し方について紹介します。

明確で具体的な報告

アスペルガー症候群の上司への接し方 明確で具体的な報告
アスペルガー症候群の上司は、曖昧な表現や感情的な言葉よりも、具体的で明確な情報を好む傾向があります。

報告や相談を行う際は、事実に基づいたデータや数字を使い、できるだけシンプルに伝えるようにしましょう。また、上司に対案をする場合は、枠組みなどを明確に提示することで、トラブルを回避することができるでしょう。

期待値の確認

アスペルガー症候群の上司への接し方
上司の指示や期待が不明確な場合は、具体的な質問をして期待値を確認することが重要です。

たとえば、「このプロジェクトのゴールは何ですか?」や「どの部分に最も重点を置いていますか?」といった質問をすることで、意見の食い違いを防ぐことができます。

口頭で確認する際でも、あらかじめ伝える内容をまとめてメールや資料を用意しておくと、よりスムーズでしょう。

フィードバックの受け取り方

アスペルガー症候群の上司への接し方
アスペルガー症候群の上司は、直接的で率直なフィードバックをすることがあるかもしれません。

時にはその言葉が厳しく感じられるかもしれませんが、個人攻撃ではなく、業務の改善を目指したものだと理解することが大切です。

フィードバックが直接的だったとしても、状況や結果などからすり合わせを行うことで、感情的な対立を回避することができるでしょう。

アスペルガー症候群の部下への接し方

次に、アスペルガー症候群の部下への接し方についてみていきます。

アスペルガー症候群の部下と効果的にコミュニケーションを取るためには、以下の点に配慮することが大切です。

明確な指示と期待の伝達

アスペルガー症候群の部下への接し方 明確な指示と期待の伝達
アスペルガー症候群の部下に対しては、指示や期待を具体的かつ明確に伝えることが不可欠です。

「手の空いた時間にこれをやっておいて」といった曖昧な指示ではなく、「このレポートを今週の金曜日17時までに提出してください」と具体的な期限や内容を示すことで、部下は業務を適切に理解し、遂行しやすくなります。

業務報告を確認できるように、業務完了後にメールを送信する工程を取り入れたり、シートやツールを利用するのもよいでしょう。

サポートの明示

アスペルガー症候群の部下への接し方 サポートの明示
業務で困難を感じた場合に誰に相談すればよいか、どのようにサポートを受けられるかを明確にしておくことが重要です。

具体的な手順や支援を提供することで、部下が自信を持って業務に取り組むことができるでしょう。

定期的なフィードバック

アスペルガー症候群の部下への接し方 定期的なフィードバック
アスペルガー症候群の部下は、自分の進捗や成果についてのフィードバックを求めることが少ないかもしれません。

たとえば木曜の17時から17時30分までなど、フィードバックの時間帯や曜日を固定することで規則性が生じます。

定期的に進捗状況を確認し、具体的なフィードバックを提供することで、部下のモチベーションを維持することにもつながります。

アスペルガー症候群の従業員への接し方

最後に、上司や部下に限定せず、アスペルガー症候群の従業員に取りたいコミュニケーション方法を紹介します。

チームワークの調整

アスペルガー症候群の社員への接し方 チームワークの調整
アスペルガー症候群の従業員が、チームでのコミュニケーションに難しさを感じている場合は、役割分担を明確にし、個々の貢献がチームの成功にどのようにつながるかを説明する機会を設けましょう。

特に協力が必要な場面では、具体的な手順やゴールを共有することで、円滑なチームワークの促進が期待できます。

コミュニケーションスタイルの理解

アスペルガー症候群の社員への接し方 コミュニケーションスタイルの理解
アスペルガー症候群の従業員は、感情的なコミュニケーションを避ける傾向があることを理解し、感情よりも事実や論理に基づいた会話を心がけると、良好な関係を築くことができます。

また彼らがコミュニケーションにおいて率直すぎる場合も、個人的な攻撃ではなく、彼らの特性によるものだと理解することが大切です。

「アスペルガーかもしれない」上司や部下にストレスを感じた時は?

「なぜ、あの人の言動はこうなんだろう?」そう感じた時、あなたの心は知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでいるかもしれません。

この章では、そんな職場でのストレスを軽減し、より良い関係を築くための具体的な対処法をご紹介します。

1.自分の感情を整理する

まず、あなたが感じているストレスの正体を探ってみましょう。

「どうしてこの状況はつらいのか?」を冷静に考えてみることで、自分の感情がより明確になります。たとえば、

  • 「上司に何度も同じ説明をしなければならず、疲れてしまう」
  • 「部下の反応が予測できず、不安を感じている」
  • 「相手の無神経な発言に傷ついている」

このように、ストレスの根本にある感情を具体的に把握することで、解決策が見つけやすくなります。

2. 信頼できる人に相談する

一人で抱え込まず、まずは誰かに話してみることが大切です。

社内で信頼できる同僚や先輩、同じような状況にある人に相談してみましょう。人事部や社内外の相談窓口も有効な選択肢です。

相談する際は、

  • 「いつ」「誰と」「どんな状況で」「どんなストレスを感じたのか」

を事前にまとめておくと、より具体的なアドバイスをもらいやすくなります。

3.カウンセリングという選択肢

「社内では話しにくい」「相談しても状況が変わらない」と感じ、限界を迎えているなら、カウンセリングという選択肢を考えてみましょう。

心の専門家であるカウンセラーに相談することで、以下のような効果が期待できます。

  • ストレスへの対処法を学ぶ
  • 客観的な視点を得る
  • 新たな解決策を見つける

オンラインカウンセリングなら、あなたのプライバシーを守りながら、いつでも安心して相談できます。専門家との対話を通じて、何気ない悩みや不安の解消につながるかもしれません。

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まとめ

アスペルガー症候群の上司や部下と円滑な関係を築くためには、理解と共感がポイントです。

もし、職場でのコミュニケーションに悩み、ストレスが蓄積していると感じた場合は、週に一度、継続的にカウンセリングを受けることも検討してみましょう。

カウンセリングは単なる「助けを求める手段」というよりは、心の整理や新しい視点を得るために必要な効果的なプロセスです。自分自身を大切にし、より健やかに働くための第一歩を踏み出してみましょう。あなたの未来に向けた一歩が、思いがけない発見や前進につながるかもしれません。

 

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