現代のビジネスパーソンは様々なストレスに晒されています。
例えば転勤や異動、昇格昇進などの環境の変化や、対人関係によってストレスを感じ、休職や退職を選択するケースも少なくありません。
そこで今回の記事では、メンタルヘルス不調の中でも「適応障害(適応反応症)」で会社に行くのが怖い時の対処法について紹介していきます。
「適応障害(適応反応症)」の症状や、なりやすい人の特徴にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
「適応障害(適応反応症)」とは
厚生労働省では「適応障害(適応反応症)」を以下のように説明しています。
日常生活の中で、何かのストレスが原因となって心身のバランスが崩れて社会生活に支障が生じたもの。原因が明確でそれに対して過剰な反応が起こった状態をいう。
引用:厚生労働省 e-ヘルスネット 適応障害(適応反応症)(てきおうしょうがい)
「適応障害(適応反応症)」は、環境の変化やストレスに対して適応することが難しくなり、身体や心の健康に悪影響を与える状態を指しますが、ある特定のストレスによって症状が現れるというのも特徴のひとつとして挙げられます。
仕事のストレスが「適応障害(適応反応症)」につながるケース
厚生労働省が2022年に発表した労働安全衛生調査の中の「仕事や職業生活に関する強いストレスの有無及び内容別労働者の割合」では、強いストレスが最も高い割合は仕事の量が43.2%、次いで仕事の失敗・責任の発生が33.7%となっています。
厚生労働省 2022年労働安全衛生調査(実態調査)第13表を加工して作成
「会社に行くのが怖い」と感じる場合は、仕事や職場に関連するストレスが影響している可能性があります。ここでは、一般的に多いとされるケースをみていきましょう。
1.仕事の量の多さによる残業や過重労働
慢性的な残業や過重労働により、労働者の疲労やストレスが蓄積され、その結果として健康被害や生産性の低下が生じています。
長時間働く状況が続くと休息が取りにくく、「適応障害(適応反応症)」の症状が現れるケースも見受けられます。
特に正社員の場合、仕事の量に起因するストレスが38.1%で最も高く、次いで仕事の失敗・責任の発生が37.5%となっています。(厚生労働省 2022年労働安全衛生調査)
厚生労働省 2022年労働安全衛生調査(実態調査)第13表を加工して作成
2.対人関係の問題
職場での対人関係の悪化は、円滑なコミュニケーションを難しくし、対立やストレスを引き起こす可能性があります。
対人関係の切り離しなどのハラスメント行為や、上司や従業員間で起こり得るパワハラも、「適応障害(適応反応症)」の原因となり得ます。
パートタイム労働者の場合、仕事の失敗・責任の発生が35.6%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)が34.2%となっており、職場の対人関係が彼らにとっての大きな悩みの一因となっています。
厚生労働省 2022年労働安全衛生調査(実態調査)第13表を加工して作成
3.雇用の安定性への不安
就業形態別にみた強い不安、悩み、ストレスの内容別労働者割合の派遣社員をみてみると、雇用の安定性が70.7%と非常に高い割合となっています。
厚生労働省 2022年労働安全衛生調査(実態調査)第13表を加工して作成
新型コロナウイルスの影響により、柔軟な働き方が取り入れられるようになった一方で、メンタルヘルス不調で休職後に派遣社員として復帰をしたというケースも少なくありません。
しかし、復帰をしても環境に馴染めない、仕事に行くのが怖いけれど、行かなければ生活が成り立たないなどの状況により、「適応障害(適応反応症)」の症状が出ていてもがまんをしてしまうこともあります。
新しい環境や業務に対する適応力が低下すると、変化に対処することが難しくなります。これにより、新しい要求に対するストレスが蓄積し、「適応障害(適応反応症)」が発症しやすくなります。
「適応障害(適応反応症)」の症状
「適応障害(適応反応症)」になるのは特定のストレスが原因とされていますが、症状は1か月以内に発症するといわれています。
この章では、一般的に多いとされる「適応障害(適応反応症)」のうち5つの症状を紹介していきます。
- 不安や焦燥感
- 不眠または過眠
- 身体の変化
- 問題行動が続く
- 食欲の変化
順番にみていきましょう。
1.不安や焦燥感
通常よりも感情の波が大きくなることが多く、日常の小さなストレスに対しても不安感や焦燥感が現れるようになります
自分でも思いもよらないような言葉遣いや発言をしてしまったり、イライラが我慢できず、些細なことで周囲に当たってしまうなどの行動もみられます。
2.不眠または過眠
疲れていても眠れない、深夜や早朝に何度も目が覚めてしまうなど、以前と比べると眠れないことが増えたと感じることがあります。
細切れに覚醒してしまい疲労回復ができず、日中に耐え難い眠気に襲われるケースも少なくありません。
また、過度な睡眠に陥り生活面に重大な影響を及ぼすこともあります。何をしていても集中できないなどの状態が続き、生活リズムが乱れることも考えられます。
3.身体の変化
出勤しようとすると腹痛や吐き気が起こる、通勤電車の中で激しい動悸に襲われるなどの症状が現れることがあります。
また、慢性的な頭痛や身体の緊張なども起こるため、「会社に行くのが怖い」と感じ、体調不良に悩まされることが増えてきます。
4.問題行動が続く
「適応障害(適応反応症)」によって通常の行動パターンに変化が生じ、自分自身でもコントロールが難しい問題行動が続くようになります。
スケジュール管理をすることが困難だと感じたり、遅刻が増加するなど、今までの自分では考えられないような勤務態度に陥ることも考えられます。
中には、電話やメールなどで上司に連絡することも怖いと感じ、無断欠勤につながってしまうケースもあります。
5.食欲の変化
「 適応障害(適応反応症)」の症状には食欲不振や過食などもあり、これは感情の不安定さやストレスへの反応として起こると考えられています。
特に仕事のストレスによる「適応障害(適応反応症)」では、食欲不振と過食が同時に起こることもあります。
例えば、勤務中に飲食をすることは困難だと感じていても、帰宅後は過食によって正常な範囲を越える量の食事をしてしまうケースもあります。
適応障害(適応反応症)になりやすい人の特徴については、こちらの記事で詳しく紹介をしています。
会社に行くのが怖い時の対処法とは
会社に行くのが怖いと感じる時の対処法には、どのようなものがあるのでしょうか。
- まずは自分の状態を確認する
- ストレスの原因を考えてみる
- 十分な休息を得る
- 専門性の高いカウンセリングを受ける
1つずつみていきましょう。
1.まずは自分の状態を確認する
以前と何かが違うと感じたら、一度何が違うのかを確認する時間を設けてみましょう。
例えば、眠れなくなった時期や、眠れないときはどのような状態であることが多いかなどを、振り返りも兼ねて書き出してみましょう。
会社に行くのが怖いと感じている場合には、自分自身の状態に何かしらの変化が起こっていると考えられますので、確認作業をすることは大切です。
2.会社に行くのが怖いストレスの原因を考えてみる
「適応障害(適応反応症)」は特定のストレスが原因となって症状が現れますので、自分自身が何に対してストレスを感じているかを考えていきましょう。
- 仕事で重大なミスをした
- 異動先での対人関係がうまくいかない
- 新しいプロジェクトに係ることで常に緊張をしている
- 業務量が多すぎて所定外勤務が増えてきている
状況は個人によって異なりますが、どの状況でも、辛い気持ちや状態をがまんせずに対処していくことが非常に重要であるといえます。
3.十分な休息を得る
十分な休息は心身の健康を保つためには必要不可欠であるといえます。「会社に行くのが怖い」と感じたら仕事のストレスから距離を置いて、リラックスする時間を確保しましょう。
状況によっては、心の健康を守るために一時的に休職することも検討されるかもしれません。自分の健康を最優先に考え、必要なサポートを受けることが大切です。
4.専門性の高いカウンセリングを受ける
職場においては、人事部や上司に相談することも一つの手段ですが、仕事のストレスが原因である場合は、労働環境や職場の対人関係について話すことはなかなか難しいケースもあります。
ひとりで問題を解決するのが難しく、状況が深刻である場合は、カウンセリングを受けることを検討しましょう。
「適応障害(適応反応症)」に有効なカウンセリング
「適応障害(適応反応症)」はストレスの原因と距離を置くことが重要ですが、気分の変化やストレスと向き合い対処していくためには、メンタルヘルスの専門家であるカウンセラーとのカウンセリングが非常に有効であるといえます。
辛い気持ちや状態をカウンセラーと共有することで、今後の課題ストレスに対処できるようになることが期待できます。
カウンセリングを通じて感情やストレスの原因を理解し、適切な対処法を見つけることができるでしょう。
辛いときにすぐに話せるオンラインカウンセリング
- どうしても会社に行くのが怖くて休んでしまった
- 出社はしたものの、涙が止まらず早退をした
- なんとか一日やり切ったけれど、明日も仕事だと思うと身体が動かない
このような場合でも、オンラインカウンセリングなら、スマホから簡単にweb予約が可能です。
休憩中に予約を入れて、帰宅後にリラックスした状態でカウンセリングを受けることもできますので、辛い気持ちの日は、がまんをせずに利用をしてみるのもよいでしょう。
まとめ
今回の記事では、「適応障害(適応反応症)」で会社に行くのが怖い時の対処法を紹介しました。
会社に行くのが怖いと感じる場合は、まずは自分の状態を確認し、ストレスの原因を考えてみましょう。
また、十分な休息を取ることも重要であり、必要であれば専門のカウンセリングを受けることが効果的です。自分自身の健康を最優先に考え、サポートを受けることで、「適応障害(適応反応症)」に対処できる可能性が高まります。
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メザニン登録カウンセラー
平井 綾乃 Ayano HIRAI
臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント
うつ病や適応障害(適応反応症)による休職・復職支援、EAPと連携した高ストレス該当者のフォローアップなどの経験が豊富です。
【メッセージ】
いまのあなたにとっての「無理しないでね」を一緒に考えます。
悩み事が出口の見えないトンネルとするならば、そのトンネルの出口までの道標としてお役に立ちたいと思っています。
普段は心療内科クリニックやスクールでカウンセリング業務を行っています。