「過重労働」とは、長時間労働や休日出勤が続き、労働者の身体や精神に大きな負荷がかかる状態を指します。
日本では、2019年の「働き方改革関連法」の施行以降、「過重労働」の防止が重要視されています。本記事では「過重労働」の定義と、「過重労働」がメンタルヘルスに及ぼす影響を解説します。
「過重労働」とは
「過重労働」は長時間勤務や残業、不規則な勤務などにより、心身ともに過度な負担がかかる労働を指します。
また「過重労働」は、過労死や過労自殺といった深刻な事態を引き起こすリスクがあり、日本では「過重労働」を防ぐためのさまざまな対策が講じられていますが、労働環境に関する課題は依然として多く残されています。
「過重労働」と長時間労働の違い
長時間労働とは、その名の通り、長時間にわたって働き続けている状態を指します。長時間労働に具体的な基準はありませんが、一般的には法定労働時間を大きく超える労働時間が該当します。
一方で、「過重労働」は、長時間労働を含む場合もありますが、労働者の身体や精神に大きな負担をかけ、過労死や健康障害のリスクがある働き方を指します。
このように、長時間労働が単に「労働時間の長さ」を表すのに対し、「過重労働」は「心身への負荷」も含む点が異なるポイントです。
項目 | 過重労働 | 長時間労働 |
定義 | 長時間の残業や休日出勤、不規則な勤務などによって身体や精神にダメージを受けるような働き方 | 法定労働時間を超過して働いている状態 |
基準 | 時間外・休日労働が「月100時間を超える」 もしくは「2~6か月平均で月80時間を超える」 |
法定労働時間を基準に、労働時間が1日8時間・1週間40時間を超える場合 |
リスク | 脳・心臓疾患やメンタル不調などの健康障害を発症するリスクが高まる | 長時間労働によって心身的な負荷がかかり、「過重労働」が生じやすくなる |
長時間労働については、こちらの記事で詳しく解説しています。
数字で見る「過重労働」
厚生労働省がまとめた、『諸外国における「週労働時間が 49 時間以上の者」の割合』をみてみると、日本は男性が21.8%、女性が7.2%となっています。
週5日勤務とすると、一日9.8時間以上の労働時間となり、平均すると一日1.8時間の残業をしている計算になります。
厚生労働省 2024年版過労死等防止対策白書 第 1-1-1-24図を参考に作成
次の章からは、「過重労働」がメンタルヘルスにあたえる影響について、詳しくみていきましょう。
「過重労働」によるメンタル不調と睡眠時間の関係
長時間の残業や休日出勤、不規則な勤務などが続き過重性が認められた場合、身体的には脳疾患や心臓疾患の発症リスクが高まり、精神的には抑うつ状態などが見られるケースがあります。
労働時間が長ければ、削らなくてはならない時間が発生しますが、中でも睡眠時間の確保が難しいことが特に問題視されており、大きな課題となっています。
疲労の持ちこしが「うつ」につながる
厚生労働省がまとめた「疲労の持ちこし頻度別うつ傾向・不安(就業者調査)」によると、翌日に前日の疲労を持ちこす頻度が増加すると、「うつ傾向・不安あり」、「うつ病・不安障害の疑い」、「重度のうつ病・不安障害の疑い」の割合が高い傾向にあることがわかります。
特に、「翌朝に前日の疲労をいつも持ちこしている」では、「うつ傾向・不安なし」を除く割合が81.7%となっており、中でも「重度のうつ病・不安障害の疑い」は38.9%と非常に高くなっています。
厚生労働省 2023年版過労死等防止対策白書 第3-2-1-8図を参考に作成
睡眠不足が続くとどうなる?
睡眠時間が十分に確保できていない場合は、疲労が蓄積されていくため、まず運動機能に影響が出はじめ、集中力が急速に低下していきます。
「過重労働」による疲労や睡眠不足によって、同じような業務やスケジュールをこなしていても、以前のようなパフォーマンスが出せなくなり、さらに多くの時間を費やすという悪循環が始まるのです。
しかし、当事者はその変化に気づきにくいという点が指摘されており、実感がないまま負荷のかかる労働を続けてしまう傾向があります。
次の章で、「過重労働」によって起こる身体とメンタル不調の兆候についてみていきましょう。
「過重労働」によって身体とメンタルに起こる変化
「過重労働」が原因となるメンタルヘルス不調の兆候は多岐にわたり、個人差がありますが、一般的に多いとされる兆候は以下の通りです。
身体的症状
食欲低下や体重の急激な増減、慢性的な疲労感。特に不眠や過眠といった睡眠の問題が多く挙げられます。
また、慢性的な頭痛や胃痛や血圧の上昇、手足のしびれが起こる場合もあります。
精神的症状
無気力感、集中力の低下、意欲の喪失。感情的な不安定さや、ちょっとしたことに対するイライラが増加するケースも。
また、睡眠不足によって判断力が低下していますが、身体は常に緊張しているという状態が続くことで、メンタルのバランスが崩れる場合があります。
「過重労働」によるメンタル不調を見逃さないために
ここまで、「過重労働」の定義や、「過重労働」が身体とメンタルに及ぼす影響について解説をしてきましたが、個人で日常的に心がけておきたいポイントや対策についてもみていきましょう。
- 睡眠時間の確保
- 客観的視点を取り入れる
- 辛いと感じたら相談をする
1つずつ順番に紹介します。
1.睡眠時間の確保
メンタル不調の予防には、睡眠時間の確保が非常に重要な役割を担います。
たとえば時間外・休日労働時間が、月100時間または2〜6か月平均で80時間を超えると、健康障害のリスクが高まるとされています。
仕事が忙しいと感じる場合、自分の業務内容を振り返ることが重要です。以下の点を意識してみましょう。
自分の労働時間を把握する
まず1週間の労働時間を洗い出し、「過重労働」の兆候がないかどうかの確認をします。この時に家族や同僚と話し合いながら、客観的な視点で自分の働き方を評価するのも有効です。
長時間労働については、こちらの記事で詳しく解説しています。
スケジュールの洗い出しが終わったら、「確保したい睡眠時間」を基準に他のスケジュールを調整しましょう。就寝前1時間は仕事関係の作業は行わないなど、質の良い睡眠を取る工夫を取り入れましょう。
2.客観的視点を取り入れる
「過重労働」の兆候は、当事者にとって気づきにくいケースがありますが、自分の状況を冷静に見つめるために、第三者の視点やデータを利用することで、客観的に自分の働き方や健康状態を見直すことができます。
同僚や家族の声に耳を傾ける
職場の同僚や家族から、「疲れている」「休んだほうが良い」といった指摘があった場合は素直に受け止めることも大切です。
周囲の声や意見に耳を傾けることで、自分では気づけない変化やサインに気づけるかもしれません。
3.辛いと感じたら相談をする
「過重労働」やメンタル不調の兆候が現れた時は、「自分でなんとかしなければ」と抱え込まず、辛いと感じたら相談をしましょう。ひとりで抱え込まず相談をすることで、適切な対処が可能になります。
また家族や友人に相談しにくい場合は、メンタルヘルスのプロであるカウンセラーのカウンセリングを受けることで、深刻な状態を回避できるかもしれません。
専門的なサポートの重要性
メンタルヘルスに関しては、専門家のアドバイスが非常に重要です。カウンセラーに相談することで、新たな視点が得られるだけでなく、根本的な問題解決につながるでしょう。
相談のタイミングは、疲れやストレスが溜まっている、仕事が終わっても気分が晴れない、無力感や孤独感を感じるといったサインに気づいた時点で、迷わず相談することが大切です。サインを見逃さず、早期に行動を起こすことが予防につながります。
疲れやストレスが溜まっている、仕事が終わっても気分が晴れない、無力感や孤独感を感じるといったサインに気づいた時点で、迷わず相談するなど、早期に行動を起こすことが予防につながります。
カウンセリングを受けに行く気力や時間がないという場合は、オンラインカウンセリングの利用がおすすめです。
まとめ
「過重労働」は、長時間労働や不規則な勤務によって身体的・精神的な負担が蓄積され、過労死やメンタル不調の原因となり得ます。
心身ともに健康でいられるためには、「過重労働」の防止はもちろん、メンタルヘルスへの配慮が不可欠です。自己管理と周囲との連携を大切にし、無理をせず適切なサポートを受けながら、健全な働き方を実現していきましょう。
information
mezzanine(メザニン)で人気のカウンセラーのご紹介
メザニンコラムを発信しているオンラインカウンセリングサービス「mezzanine(メザニン)」の人気カウンセラーをご紹介します。
宮園 さとみ Satomi MIYAZONO
公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント
あなたに寄り添い伴走しながら応援します
プログラマ等の社会人経験を経て、職場のメンタルヘルス問題のニーズを感じ、対人支援職に転向しました。今まで目を向けてこなかった自分の可能性や、これからの選択肢、自分への理解を深めるお手伝い等、そんなカウンセリングの時間を提供できればと思っています。
佐藤 汐 Shiori SATO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
どんな些細なことでも、ぜひお話を聞かせてください
現在も子育て支援を行っており、主に未就学児の養育者の方々の相談を受けております。また企業で休職者の相談に乗った経験もありますので、幅広い対応が可能です。心揺らぐことなどがありましたらお話を聞かせてください。
芹野 まり Mari SERINO
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)、キャリアコンサルタント
一緒にこころの悩みを整理していきましょう
同じ経験をしていても一人ひとり思いや感情は違うものです。そして、生きていれば辛いことも決断しなければならないこともたくさんあります。一緒にこころの悩みを整理しながら、自分らしく生きていけるよう少しでも支援ができればと思います。
mezzanine(メザニン)の新規会員登録はこちらから
今なら会員登録でカウンセリングに使える3000円相当のポイントを進呈しています。