家族関係の悩み

発達障害を持つ妻や夫 生きづらさを理解するためのポイントとは

大人になって発達障害と診断された場合、家族のサポートが重要な役割を果たします。

現在では多様な価値観により、様々なパートナーの在り方や呼び方がありますが、本記事では男性を夫、女性を妻と表記して、パートナーの発達障害を焦点に、特性への理解を深めるためのポイントを解説します。

大人の発達障害が多いワケ

軽度の発達障害の場合は知的障害を持たないことが多く、学生時代の成績が優秀であったり、就職先では問題なく就業できているケースもあります。

育ってきた環境の中でも「少し変わっている子」、「苦手なことは多いけれど得意なこともある」、「寝坊が多いけど、起こせば起きるし問題ない」など、周囲が発達障害の特性を個性と捉えてサポートしていたという背景があるでしょう。

35歳から54歳までの精神障害者数は増加傾向に

内閣府が発表した「年齢階層別障害者数の推移(精神障害・外来)」では、35歳から44歳は2002年が34.2万人なのに対し、2017年には58.2万人と増加傾向にあります。


内閣府 | 2019年版 障害者白書参考資料図4を加工して作成

「特性」と「個性」の違い

人はそれぞれ個性を持っています。発達障害の特性を個性として捉えるという動きもありますが、個性と特性の違いを知っておくことで、発達障害をより深く知るヒントが見えてくるかもしれません。

個性 その人がもつ特有の性質
特性 物質などが持つ特有の性質

発達障害は脳の持つ特有の性質を指しますので、個性ではなく特性であると捉えることでサポートがしやすくなるでしょう。

発達障害の特性とどう付き合うか

発達障害は生まれつきの特性であり、完治するものではないといえるため、発達障害の特性を知り、適切に対処をしていくことが最も重要とされています。

本人に「発達障害」だと伝えてよいか

発達障害の特性を理解し生活をしていく上では、家族やパートナーだけではなく、本人が発達障害だと知ることがスタートだと言ってよいでしょう。本人に自覚がないまま家族が懸命にサポートをしても、その行動が逆効果になるケースがあるからです。

本人が発達障害と知ることができれば、家族や周囲は適切なサポートをすることができます。

パートナーの発達障害

パートナーが大人の発達障害である、またはグレーゾーンである場合、サポートする側の負担は非常に大きいと言えます。

共に生活する中で、話し合って解決したいと思っていても、発達障害の特性を持つ本人は「悪いことをしていないのに毎回責められる」と感じることが多くなります。

また、注意をする側も「いつもわかってもらえない」というストレスを抱えることになるでしょう。

では次の章からは、一般的に夫や妻に多いとされる発達障害の特性を見ていきましょう。

夫の発達障害

知り合ってから、何度か会ううちに「あれ?」と思う場面にいくつか遭遇していても、個性的だな、面白い人だなと思いながら付き合ってきたということもあるでしょう。

そのような男性がパートナーとなり、本格的に一緒に生活するようになって、初めて妻が夫の言動や行動に悩むというケースが増加しています。

夫が発達障害を持つ場合、一般的に多いとされているのは以下の3つの特性です。

  • 話が通じない
  • 興味の偏り
  • 言葉通りに受け取る

順番に見ていきましょう

話が通じない

話が通じないことは非常に辛いことです。大きな決断をしなければならない時でも話し合いができず、生活自体が安定しないケースや、話し合いの最中に突然夫が感情的になるなどのケースもあります。

さらに、
「男なんて皆そんなもんだよ」
「結婚する前におかしいと思わなかったの」
「あなたが怒られるようなことをしてるのかもよ?」

など、周囲から理解を得られず苦しむことも少なくないでしょう。夫に話が通じないことを周囲に理解してもらえず、誰とも辛い気持ちを分かち合ず孤独を抱えるケースも少なくありません。

ではなぜ、話が通じないと感じるのでしょうか。発達障害に代表される、相手の感情や意図を読み取ることが困難であるという特性により、コミュニケーションが円滑に行えない場合がよくあるからだと言えます。

また、抽象的な表現や比喩などを汲み取ることも難しいため、いわゆる会話の中の行間や空気を読むということができないのです。

興味の偏り

興味のあることについては、とことん突き詰めたり情熱をもって取り組むことができますが、興味のないことには、全く興味を示さないため、生活や金銭面などに影響が出る場合があります。

たとえば、やって欲しいことをやってくれない夫に対して、我慢を重ねた末に限界を迎えて怒鳴ってしまった。きょとんとする夫を前にした妻は、自分の無力さで涙が出た。などという事も。

しかし夫にしてみたら、なぜ興味のないことを自発的にするのだろう、という疑問があるのです。

言葉通りに受け取る

たとえば夫婦間に一歳の子どもがおり、妻が夫に「いま手が離せないから子どもを見ていて」と声をかけたとします。

夫は妻に言われた通り子どもを見ますが、それは本当に言葉のまま「見ている」だけで、突然子どもが泣き出したり、危険な態勢になっていても、何かしらのアクションを起こすということはできません。

発達障害を持つ夫の場合、妻が「子どもを見ていて」に込めた、子どもが危なくないように注意を払って見ていて欲しいという感情を読み取ることが難しいのです。

「ちゃんと見ていてって言ったでしょ!」と妻に怒られても、夫は言われた通りちゃんと「見ていた」ので、なぜ妻がそんなに怒るのかが理解できず、困ってしまうのです。

妻の発達障害

おっとりしている、またはさっぱりしている性格だと思っていたが、一緒に暮らすようになってから、妻の行動や言動に度が過ぎていると感じる夫も増えています。

妻が発達障害を持つ場合、一般的に多いとされているのは以下の3つの特性です。

  • 片付けが苦手
  • 時間管理が苦手
  • 思ったことを口にする

順番に見ていきましょう。

片付けが苦手

夜に洗濯物を取り込まない妻。夫が取り込んでおくねと声をかけると妻からは「そこに置いておいて。あとで畳むから」という返事が返ってきたので、妻はあとで畳むのだろうなと思いそのままにしておいた。

しかし、翌日もまったく同じ状態で洗濯物が放置されていたため、夫はたまらず、「これいつ畳むの? せっかく洗濯したのにシワシワだよ。昨日はあとで畳むって言ってたよね?」と怒りながら洗濯ものを畳んだが、妻はそれをボーっと見ていた。

この場合、あとで畳むの「あとで」は妻と夫では大きな違いがあります。夫は、妻がいまやっている用事が済んだらやるのだろうなと思っていますが、妻の中での「あとで」は非常にザックリした時間軸であることが多いのです。

妻は本当にあとで畳むつもりでいたので、夫がなぜこんなに腹を立てるのだろうという気持ちと、あとでやるという言葉を信用してもらえなかったことで自信を失います。

妻は、やらなかったのではなく、夫の時間軸で考える「あとで」では、洗濯物を畳むことができなかったという事です。

時間管理が苦手

妻は、電車やバスの時間、映画上映開始時間、美容院の予約時間など、思い返せばギリギリか遅刻、酷いときは日時を間違えて覚えていることがある。

おっとりした性格だし、少し抜けているところがあるからと見過ごしていたが、どうやら時間に間に合うことのほうが珍しいということに最近気づいた。という場合、妻はだらしない、ちゃんとしていないと感じることもあるでしょう。

発達障害を持つ方の特性として、時間の管理が苦手というものがあります。14時に予約をしていたはずなのに、いつの間にか頭の中で15時の予約だと書き換わってしまう場合もあります。

思ったことを口にする

妻は竹を割ったような性格だが、最近そのストレートな物言いによって夫婦喧嘩になったことがある。

夫はその日は微熱があり、食事があまり進まなかったが、それを見た妻が、こんなに美味しそうなのにもったいないから食べてよいかと聞いた。

心配の言葉ひとつかけずに、食べてよいかと聞いてきた妻に気分を害して、夫は妻にしばらく腹を立てた。

この場合、妻の意識は美味しそうな食べ物にフォーカスしているため、全体的な物事はぼんやりと、食べ物はより鮮明に映っています。発達障害を持つ方の特性として、その時に興味を持ったことに対して注目してしまうというものがあります。

では、発達障害を持つ妻や夫は果たして本当に「普通とは違う」のでしょうか。

妻にも夫にもロールモデルは存在しない

多様性の時代と言っても、まだまだジェンダーバイアスは根深く存在します。

そして、病める時も健やかなる時もと誓いを立てたパートナーは、自分を理解してくれて当たり前、意見のやりとりができて当たり前という考えも、少なからず根底にあるでしょう。

ジェンダーバイアスは旧態依然としたものばかりではなく、いわゆる「イクメン」や「バリキャリ」という現代のバイアスによって、パートナーを定型化していることも考えられます。

仕事はもちろん家事育児にも参加し、妻の要求にしっかりと応える夫

早朝に起きて朝食を作り、仕事を終えて帰宅後に家事育児にも全力で、深夜までフル回転の妻

これらは理想的ではありますが、妻や夫の役割にロールモデルは存在しないのです。

常に100パーセントの理想で生きていくことは不可能であり、生活をしていれば生ごみも出ますし、喧嘩もします。

「比較」をしない生活

「他の家庭はちゃんとやっている。どうしてうちはできないの?」

疲れているとイライラすることも増え、不満が爆発することがあるかもしれません。

育った環境や個性が異なる個人と個人であることに加えて、発達障害を持つ妻や夫である場合は、その特性も理解しながら生活をしていくことになります。

パートナーを思う気持ちが大きいからこそ、言葉や感情、そして行動にすれ違いが生じると気持ちが折れそうになりますが、発達障害の特性を理解することでヒントを得ることができます。

発達障害は生まれもった特性です。だとするならば、発達障害の妻や夫は、生まれたときから特性を持って生きています。なんでやらないの? と言われても、持っている特性の基準では「それはできないしどう理解してよいかわからない」未知のものであると言えます。

発達障害の特性を理解するということ

こうあるべきということをしないのではなく、できない状態での生活には「生きづらさ」が潜んでいます。

発達障害には多くの特性があり、個人によっても症状の強さが異なりますが、じつはやらないのではなくできないと知れば、また違った見方をする事ができます。

発達障害の特性もまた、理解すると言葉にするのは容易ですが、実際に理解し共に生活をしていくには大きなエネルギーが必要です。

悩んだらカウンセリングを視野に入れてみよう

大人の発達障害は、個人や家族にとってさまざまな困難をもたらす場合があります。

家族間の悩みはなかなか周囲には相談しにくい背景があります。毎日の生活をともにする最も近しい存在だからこそ、何度話し合っても解決できず悩むことが多いでしょう。

そんな時はメンタルヘルスのプロであるカウンセラーに相談をしてみましょう。カウンセリングを受けることで、メンタル面でのサポートを受けることが可能です。

また、オンラインカウンセリングであれば、自宅からでも相談をすることができますので、辛いと感じたらオンラインカウンセリングを視野に入れてみるのもよいでしょう。

まとめ

この記事ではパートナーの発達障害を焦点に、特性への理解を深めるためのポイントを紹介しました。パートナーの発達障害について悩んでいる、誰かに相談したいと思ったら、オンラインカウンセリングを利用してみましょう。

 

information

オンラインカウンセリング mezzanine(メザニン)のご紹介

メザニンコラムを発信しているオンラインカウンセリングサービス「mezzanine(メザニン)」。臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士、EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)などの専門資格をもつカウンセラーから「オンライン」でカウンセリングを受けられます。

mezzanineのサイトへ

1分でわかる mezzanine(メザニン)

 

mezzanineのサイトへ